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私が占い師になった理由。  作者: 月灯
第七章 過去と未来をつなぐ旅
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124話 繰り返す者 - 導きの問い

✪読んでくださり、ありがとうございます。

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古びた祠の中、静寂がアリアを包み込む。

手を伸ばせば届きそうな、時の流れが止まったような空間。

外からは、柔らかな風が葉を揺らす音だけが聞こえてきた。


イリスが足元でぽよんと跳ねる音に、アリアはふと現実へ引き戻される。

その小さな存在が、彼女にとっての唯一の心の拠り所なのだと改めて感じた。


だが、彼女の心はすぐに再び夢の彼方へと誘われていった。





――霧のように淡く、過去の世界へ。


そこは重々しい石造りの宮廷。

幾重にも重なる緊張と期待の空気が満ちている。


若き宮廷占い師――アリアの前前世の姿。

まっすぐな瞳の奥に、微かな恐れと責任感が光っていた。


「お願いです、どうか私の未来を教えてください」


声の主は、宰相の息子であり婚約者でもあった男。


彼女はその望みに応え、星々の巡りを読み解く。

しかし彼女が導き出した答えは、残酷な真実だった。


【謀反を主導する】


だが、彼女は言えなかった。


恐怖が心を締めつけ、言葉を飲み込む。

もし伝えれば、彼女自身が疑われ、排除されるかもしれない。

愛する人を傷つけることになるかもしれない。


「もし……私が伝えていたら」


無辜の民が、犠牲になることはなかった。


その想いが彼女を蝕み、やがて占いの術すら恐ろしくなった。


夢の中のアリアは、その胸の痛みをじっと見つめていた。


彼女の心は痛みを共鳴させ、失ったものの大きさに圧倒されていた。





――時が流れ、現代の喧騒。


アリアは編集社のデスクに座り、夜の街を見つめる。

週末には小さな占いブースで人々の悩みを聞き、そっと未来の灯火を渡していた。


「未来を予言することは、私の望みではなかった」


静かな声で、彼女は自分自身に言い聞かせる。


「人は未来に怯えるのではなく、今を生き抜く力を欲している」


ひとりひとりの声に耳を傾けながら、彼女は気づいていた。

占いとは「当てる」ことではなく、「灯を渡す」こと。

暗闇の中で手を差し伸べるように。


同時に、自分自身もまた、その灯を必要としていた。


「誰かを照らす光が、自分をも照らしていたんだ」


夢の中の女性は微笑み、アリアの心を優しく包み込んだ。





――目覚めると、手のひらには古びた護符が握られていた。


そこに記された言葉が、静かにアリアの胸に響く。


――繰り返すことには理由がある。問いを持ち続けよ。


問いは、胸の奥で小さな火を灯した。


「なぜ、私は……占い師として、繰り返し生きているのだろう」


その問いは重くもあり、しかしどこか救いでもあった。


繰り返すことに意味があるのなら、答えはまだ遠くても、それを探す価値がある。


イリスがそっと護符に寄り添い、ぽよんと跳ねてその光を受け止める。


瞳がきらきらと輝き、古代の記憶に呼応するようだった。


「イリス、あなたも感じているのね。これはただの紙切れじゃない。私たちに託された祈り」


アリアは護符を胸に抱きしめ、ゆっくりと息を吐いた。


「これからも、問い続けていこう。答えが見えなくても、歩みを止めないで」





遠くの空に、ひとつの星が流れた。

それはまるで、彼女の胸に灯った小さな希望のように光っていた。


「私の道はまだ続く。誰かのためでなく、私自身のために」


イリスがふわりと跳ね、アリアの肩に軽く触れる。

その温もりが、迷いの中の確かな光となった。




未来はまだ見えない。だが、歩み続ける限り、祈りは繋がっていくのだ。




ーーー125話へ続く




※このお話の舞台はヨーロッパ風異世界であり、現実世界の歴史とは一切関わりありません。

作中に出てくる 国・文化・習慣・宗教・風俗・医療・政治等は全てフィクションであり、架空のものです。

あくまで創作上の設定としてお楽しみいただけますと幸いです。

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