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私が占い師になった理由。  作者: 月灯
第七章 過去と未来をつなぐ旅
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120話 旅路の決意 - 過去を読み、未来を繋ぐ者

✪読んでくださり、ありがとうございます。

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──夜明け前。空がまだ群青色をしている時間。


小高い丘の上で、アリアはひとり空を仰いでいた。


白んでいく東の空。その向こうには、まだ見ぬ「東方の地」がある。


(……キク様が消えた場所。その先に、何があるんだろう)


肩のあたりで「ぽよん」と音がして、イリスが跳ねた。静かに寄り添うように、アリアの足元へと移動する。


「うん。私も、不安じゃないって言ったら嘘になるけど……でも、進まなきゃって思うんだ」


ぽよん。


返事のように跳ねたイリスの身体が、朝の光をわずかに反射して虹色に光る。その様子にアリアは小さく笑った。


「なんか、イリスって光のかけらみたいだね。小さいけど、温かくて、消えない」



「消えないのは、君の灯りだろう」


その声に振り返ると、マコトが立っていた。


まだ朝靄が残るなか、彼の影は静かに伸びていた。


「君は、いつも誰かのために灯りをともしてきた。自分の足元がぐらついていても、誰かの心を照らそうとしてきた。だから……俺は、君がどこへ向かっても、大丈夫だと思ってる」


アリアは思わずまばたきをした。


「……そんなふうに思ってくれてたんですね」


マコトは少し目を細めてから、背を向けて歩き出した。


「思ってるよ。けど、これは道だ。歩くのは君自身だ」




その背中を見送るアリアのもとへ、ユリウスがやってきた。風に揺れる髪を払いながら、彼はふっと笑う。


「今日の君は、なんだか少し“占い師の顔”をしているね」


「……え?」


「今までの君は“祈る人”だった。でも今日は、何かを見つめてる。過去を受け入れて、未来を選び取ろうとしてるような──そんな眼をしてる」


ユリウスの言葉に、アリアの胸がかすかに震えた。


「……私ね、どうして占い師になったのか、ずっとわからなかったんです。誰かに頼まれたわけでもないのに、なぜか“見たい”と思ってしまって……未来を。でも、それってきっと、過去を見てきたからなんだって、最近ようやく気づいたんです」


「過去を、見てきた?」


「うん。自分の、だけじゃなくて。祖母の記憶、先祖たちの記憶、失われた誰かの想い。そういうものを知ってしまったから、もう黙っていられない気がして。……今度こそ、誰かの未来を良くしたいって、思うようになったんです」


ユリウスは少しだけ目を見開いて、やがて真っ直ぐにうなずいた。


「……いいな。その選択は、君にしかできない」




そのとき、丘の下から駆けてくる足音が聞こえた。


「アリアー! パン屋さん、朝から開いてたよ! クロワッサン買ってきた!」


エリオットだった。両手いっぱいに紙袋を抱えて、息を切らして笑っている。


「しかも、オマケでジャムもつけてくれた! 今日の出発祝いだって」


アリアは吹き出した。


「ふふ……ありがとう。朝から元気だね、エリオット」


「だって、旅の出発でしょ? なんか、こう……わくわくするじゃない」


「うん。私も、そんな気持ちになってきた」


みんなが揃い、朝の陽が地面に差しはじめた。



アリアは空を見上げ、そっと胸に手を当てる。


(私は、“占い師”になった。 過去を見て、未来を恐れるためじゃない。 繋ぐため──その橋になるために)




「行こう、みんな」


アリアの声に、イリスが「ぽよん!」と跳ねる。 エリオットが笑い、ユリウスが頷き、マコトが歩を進めた。


──それぞれの足音が、少しずつ重なって、ひとつの道を奏でていく。


旅は続く。 でも、今日の一歩は特別だ。


彼女が“自分の言葉”で未来を選び、過去に手を伸ばした日だから。




ーーー121話へ続く



※このお話の舞台はヨーロッパ風異世界であり、現実世界の歴史とは一切関わりありません。

作中に出てくる 国・文化・習慣・宗教・風俗・医療・政治等は全てフィクションであり、架空のものです。

あくまで創作上の設定としてお楽しみいただけますと幸いです。

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