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私が占い師になった理由。  作者: 月灯
第七章 過去と未来をつなぐ旅
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119話 東方の地へ - 記憶をたずさえて

✪読んでくださり、ありがとうございます。

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まだ夜明けには少し早い、薄青い空の下。 旅支度を整えたアリアは、小さな街のはずれに佇んでいた。


「……もう行くの?」


声をかけてきたのは、レオンの妻エマだった。 ふたりは偶然にもこの街で再会し、短い間だけど、宿を共にしていた。 行商の旅を続ける彼らとは、次にどこで会えるか分からない。


「うん。東の地に向かうって決めたから」


アリアは微笑む。 それでもその瞳の奥に、まだ揺らぎが残っていることを、エマは見逃さなかった。


「……アリア。あまり重く考えすぎないでね? 千里鏡もあるし、会いたくなったら、また呼び出して。私たち、どこにいても、返事くらいはするから」


「うん、わかってる。でも……」


アリアは少し言葉に詰まり、イリスの方を見る。


「ぽよん」


イリスは、心配そうに跳ねてアリアのローブのすそにくっついた。


「……やっぱり、こうやって目を見て話せる時間って、特別だから。名残惜しいの」


「……そうね」


エマがそっと手を握る。


「でも、あなたなら大丈夫。アリアの旅は、きっと誰かの心に火を灯していく。静かでも、あったかい火を」


「……うん。ありがとう、エマ」




出発の直前。 一同が集まった宿の前で、レオンが笑いながら手を振った。


「じゃあまたな、アリア。次に会うときは、もっと土産話を頼む」


「はい。次こそは、ゆっくりお茶でも」


「エリオット、あんまり気を張りすぎるなよ。アリアの隣には、ちゃんと信頼できる仲間がいる」


「……分かっています。気を張るなと言われても、張らずにいられないのが、僕なんですけどね」


エリオットは苦笑しながらも、アリアのすぐそばに立ち、守るように歩調を合わせていた。


その後ろを、ユリウスがひょこりと歩いてきて、イリスと並んで歩く。


「ところでアリア、東の方って、なんか美味しいものあるのかな」


「え? そこ?」


「だって長旅だし。ほら、食が楽しみって、それだけで元気出るでしょ」


「……うん。そうだね。期待しておく」


そしてイリスも「ぽよんぽよん」と2回跳ねる。イリスも美味しいものが食べたいみたい。


ユリウスの笑顔とイリスのワクワクした様子に、ふとアリアの頬も緩んだ。




街を離れる直前。 マコトがひとり、アリアに声をかけた。


「……ずいぶん、変わったな」


「え?」


「前は、誰かの後ろに立って、光を照らされるのを待ってた。今は──自分で灯りを持ってる」


アリアは、しばらく黙ってから、ぽつりと口を開いた。


「……私、自分が誰かの希望になれるなんて思ってなかった。でも、祈ってきた想いとか、重ねてきた記憶が……全部、つながってるって感じたんです」


マコトは、アリアの肩にそっと手を置いた。


「それで十分だ。もう、お前に教えることはない。あとは、信じた道を歩くだけだ」


「……はい」


その手は、あたたかかった。




空が少しずつ白み始める。 森の向こう、かつてキクが姿を消したという東方の地。


まだ見ぬ祈りの痕跡。 思い出のかけら。 そして、アリア自身の過去に続く道。


「行こう」


アリアが小さくつぶやいた瞬間──


「ぽよんっ!」


イリスが元気よく跳ね、アリアの前に飛び出す。


「先頭は任せるよ」


そう言うと、イリスは得意げに道を進みはじめた。


その背中を追って、アリアたちの影が朝日に伸びていく。


旅はまた、ひとつの節目を超えて。


彼女たちは、それぞれの記憶と、祈りと、希望を胸に抱えながら── 東方の地へと、歩き出した。




ーーー120話へ続く



※このお話の舞台はヨーロッパ風異世界であり、現実世界の歴史とは一切関わりありません。

作中に出てくる 国・文化・習慣・宗教・風俗・医療・政治等は全てフィクションであり、架空のものです。

あくまで創作上の設定としてお楽しみいただけますと幸いです。

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