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私が占い師になった理由。  作者: 月灯
第七章 過去と未来をつなぐ旅
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115話 進むべき道を - 記憶とともに歩む

✪読んでくださり、ありがとうございます。

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──この旅の先に、キクの記憶と、聖女制度の秘密があるかもしれない。


朝靄の残る森の中、アリアはゆっくりと歩き出した。背後には、苔むした石碑が静かに佇んでいる。


石に触れたとき、キクの祈りが胸に流れ込んできた。


「いつか、私たちを本当に理解してくれる人が来ますように――」


その言葉が、いまも耳の奥に残っていた。


足元で、ぽよん、と柔らかな音が弾ける。アリアが視線を落とすと、虹色のスライムが小さく跳ねていた。


「……イリス、朝から元気だね」


イリスは、ぽよんともう一度跳ねると、アリアの足元にぴたりと寄り添った。


その温もりに、自然と頬がゆるむ。


「不安もあるけど、行こうって決めたからには、ちゃんと……自分で選ばなきゃね」


ふと、背後に重みのある足音が近づいてくるのを感じた。


振り向くと、マコトがそこに立っていた。無言のまま、まっすぐにアリアを見つめている。


その視線は問いかけのようであり、確認でもあった。


「……やっぱり、キク様が最後に目指した“東の地”に行きたいの」


アリアはまっすぐ答えた。


「そこに、何か大切なものがある気がする。聖女の本質……制度の始まり。キク様がそこまでして向かおうとした理由が、どうしても知りたいの」


マコトは一度だけ、静かに頷いた。


「……そうか」


それだけだった。けれど、アリアはわかっていた。マコトの言葉が少ないのは、信頼の証だと。


言葉ではなく、その沈黙に宿る覚悟を。


やがて、少し軽やかな足取りの気配が、近づいてくる。


「まったく……君は、一度決めたら止まらないんだから」


現れたのはエリオットだった。口調は呆れたようでいて、瞳の奥には穏やかな光が宿っていた。


「でも、無茶だけはしないでくれ。僕たち、いや、少なくとも僕は――君を守るつもりでいるから」


「……ありがとう、エリオット」


アリアはその言葉に、小さく肩の力を抜いた。


「でも、守ってもらうだけじゃなくて、私も、ちゃんと前を見て進みたい。みんなと一緒に」


「ふっ、君はいつもそうだな。頼られたくないって顔をして、でも実は誰よりも人を想ってる」


エリオットはそう言いながら、少しだけ照れたように目をそらした。


「おや……エリオットが先に格好つけるとは、珍しいね」


柔らかな声が加わる。アリアが振り返ると、そこにはユリウスの姿があった。


朝の光を背に受けて立つその姿は、どこか懐かしさと威厳をあわせ持っていた。


「アリア。君が望むなら、どこへでもついていく。それが僕の昔からの役目だと思っているから」


「……ユリウス。ありがとう」


アリアはその名をそっと呼び、微笑んだ。


「あなたがそばにいてくれると、不思議と落ち着くの。子どもの頃みたいに」


「昔は君、僕の後ばかり追いかけてたね。あの頃が懐かしいよ」


「うん。でも今は……私が前を歩くこともあるかも」


「それはそれで、心強い」


ユリウスが笑みを深める。どこか兄のような眼差しが、アリアの不安をそっと包む。


そのとき、イリスがぽよん、と跳ねた。アリアの膝を軽くつつく。


「……あ、ごめんね。独り言ばかりになってたね」


イリスは何度も小さく跳ねてから、アリアの肩にぴとりと身を寄せる。


そのやわらかな感触が、アリアの胸をじんわり温かく満たした。


「大丈夫。あなたがいてくれるだけで、私はちゃんと前に進めるよ」


風が、森の隙間をぬって吹き抜けた。


マコトがふと、空を見上げたまま、ぽつりとつぶやく。


「……恐れがあるから、人は選ぶ。

 選んだ先に、覚悟が宿る」


その言葉に、アリアは静かに目を閉じた。


いま、自分の胸にあるのは、恐れではない。

選んだ道を進もうとする意志。

その中にある、ほんの少しの勇気。


「……うん。覚悟する。自分で選ぶ、この先の道を」


キクが、サクラが、セリシアが、それぞれに託した想い。


それを確かめるために。

それを受け取るために。


「みんな……行こう」


アリアは振り返り、仲間たちを見渡した。


そこには、信じ合える瞳が並んでいた。

自分ひとりではなく、共に歩く人たちがいる。


旅は、まだ続く。

記憶と祈りを胸に抱きながら。


──その先に、真実があると信じて。




ーーー116話へ続く



※このお話の舞台はヨーロッパ風異世界であり、現実世界の歴史とは一切関わりありません。

作中に出てくる 国・文化・習慣・宗教・風俗・医療・政治等は全てフィクションであり、架空のものです。

あくまで創作上の設定としてお楽しみいただけますと幸いです。

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