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私が占い師になった理由。  作者: 月灯
第七章 過去と未来をつなぐ旅
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101話 新たな旅路へ - 過去と真実を探して

✪読んでくださり、ありがとうございます。

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春の陽が、石畳に穏やかな影を落としている。

旅の支度を整えたアリアは、王城のバルコニーから城下町を見つめていた。

人々のざわめきが風に乗って届く。その何気ない日常の音が、どこか遠く感じられる。


「…平和って、こんなふうに、静かなんだね」


彼女の肩の上で、虹色のスライム――イリスが、ぽよんと軽く跳ねた。

ぷに、と柔らかい体を頬に押し当ててくる。まるで、「だいじょうぶ」と言ってくれているかのように。


「ありがとう、イリス。これからの旅、よろしくね」


イリスは、びよんと高く跳ねて応える。アリアは小さく笑った。


背後で気配がして、振り返ると、ユリウスとマコトが現れた。二人とも、すでに旅装束に着替えている。

マコトはいつもの無口な表情で、剣を静かに背負っていた。


「準備、整ったみたいだね」

ユリウスが言う。どこか緊張した面持ちだったが、瞳には決意が宿っていた。


「ありがとう、ユリウス。師匠も…」


「礼は要らん」

マコトがぼそりと低く応える。

「…やるべきことを、やるだけだ」


その言葉に、アリアは目を細めた。今の自分には、その無骨な言葉が何より頼もしく感じられる。




ウィステリア王国に、ようやく訪れた静けさ。

それは決して永遠ではないことを、彼女たちは知っている。


王城の正門では、王と王妃――アリアの祖父母が見送りに立っていた。

歳を重ねたその瞳には、かつての若き王と妃とは異なる深い慈しみがあった。


「アリア。…そなたの選ぶ道が、またこの国の未来に光をもたらしてくれることを、願っておる」


王は、まっすぐに彼女を見つめて言った。


「あなたのお母様が生きていれば…と、何度思ったかしれません。でも、今こうしてあなたがいる。それだけで、わたしたちにとっては大きな喜びです」

王妃の言葉に、アリアは胸が熱くなった。


「…ありがとうございます。母が残した想いを、ちゃんと受け継げるように、自分の足で歩いてきます」


アリアは深く頭を下げた。王も王妃も、無言で頷いた。


一歩、馬車のほうへ向かうと、やたら大きな荷物と格闘するエリオットの姿が目に入る。


「ねぇ、なんでボクが荷物係!? 魔術師は体力より知力を使ってナンボでしょう?」


マコトが無言で背後から荷物を持ち上げ、積み直す。

「……助かった」

とだけ、ぼそり。


「……ボク、魔術師である前に苦労人だよね…」

エリオットの肩が、しょんぼりと沈む。


アリアはそんな光景に小さく笑った。

「……こういうの、悪くないかも」




街道を進む馬車の中、アリアは胸元のペンダントを指先でなぞっていた。

そこには、父・オーウェンが残した研究日記のデータが収められている。彼が命を懸けて遺してくれたもの。そこには、こう書かれていた。


――初代聖女キクも、異世界からの転移者だった可能性がある。


「…もし本当にそうなら、わたしがここにいる意味も、きっとただの偶然じゃない」


アリアは呟いた。


現代日本では、雑誌の編集者として慌ただしい日々を送りながら、週末だけ占い師として人の悩みに寄り添っていた。

人を導くのが好きだった。でも、それは誰かに“本当の自分”を隠して生きていた証でもあった。


だからこそ、思う。


「わたしは、もう逃げない。この世界に来た理由、前前世のこと、聖女としての“役目”。全部知りたい。知って、選びたい」


ユリウスが隣で静かに言った。

「その答えを、もしキク様が残していたとすれば…それは、アリアに託されたってことだな」


「うん。……だからこそ、この旅で確かめるの。過去を、そして未来を」


マコトが馬車の前方で聞いていたのか、短く言う。

「…過去を知り、闇を祓え。聖女の道、それしかない」


彼の言葉は、鋭く、でもどこか優しかった。




アリアの隣で、イリスがぴょこぴょこと跳ねる。

「ぽよん」

跳ねるたびに、虹色の光が揺れる。


「うん、イリスも一緒にね。怨念の残る地、闇の溜まった場所、そこを浄化していこう。少しずつでも、希望を灯していくために」


どこかで、初代聖女キクも、同じように歩いた道なのかもしれない。

転移者として、異なる世界に身を置きながら、それでも人のために祈り、戦った彼女の記録を、アリアは辿ろうとしている。


それは、自分自身の根を見つける旅。

そして、未来を紡ぐ旅だ。


「さあ、行こう。きっと、世界はまだ知らないことだらけなんだから」


その声に、風がふわりと応えた。

イリスがぴょんと跳ねる。

ユリウスが微笑んだ。

マコトは静かに前を向く。


新たな旅が、今、始まった。




ーーー102話へつづく

※このお話の舞台はヨーロッパ風異世界であり、現実世界の歴史とは一切関わりありません。

作中に出てくる 国・文化・習慣・宗教・風俗・医療・政治等は全てフィクションであり、架空のものです。

あくまで創作上の設定としてお楽しみいただけますと幸いです。

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