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私が占い師になった理由。  作者: 月灯
第六章 王都セントラル編
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96話 最終決戦(前編) - 交差する、希望と憎しみ

✪読んでくださり、ありがとうございます。

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石畳を打つ足音が、ひとつ、またひとつと増えていく。

夜の静寂を破り、仲間たちが闇を裂くように駆けつけてきた。


エレノアとカイル。

ルシウスとユリウス。


そして、遠く離れた塔の上では、レオンが千里鏡を構え、息を殺している。


アリアは玉座の間の奥から、仲間たちの顔を見渡した。

荒い息遣い、泥にまみれた衣。

どの顔にも、戦いの痕がにじんでいる。


「……イリス」


声をかけると、虹色のスライムがぽよんと跳ねた。

仲間の間をすり抜け、擦り傷や切り傷の上をやさしく這っていく。

そのたびに、あたたかな光が灯り、癒しが広がった。


アリアもまた、そっと手を差し出す。

浮かび上がった魔法陣がやわらかな光を放ち、疲弊した心身を少しずつ癒やしていく。


「助かった……ありがとう、アリア」


「……ふぅ、これで少しは動けそうだ」


漏れる安堵の声に、アリアは静かに微笑んだ。


「まだこれからよ。本番に向けて、整えておかないと」


カイルが杖を握りしめ、鋭い眼差しで頷く。


「癒しはありがたい。でも油断するな。ここからが……本当の地獄だ」


「まったくね」


エレノアが髪をかき上げ、前を見据えた。



エルヴァンが杖を掲げると、禍々しい魔力が空気を震わせた。

隣に立つのは、蒼白な微笑を浮かべた男――カシエル。


「さあ、幕を引こう。俺たちの正義で」


玉座の間に、重く冷たい空気が満ちていく。


二人は短く頷き合うと、静かに魔術を紡ぎ始めた。幾何学模様の術式が空中に広がり、赤い光が奔る。黒き魔力が、うねりながら彼らを包み込む。


「来るわよ……!」


エレノアの声が響いた瞬間、エルヴァンの姿が変貌した。

漆黒の闇に包まれ、鋭く伸びたその体は、もはや人の姿ではなかった。


カシエルもまた、漆黒の翼を広げ、赫い瞳が妖しく光る。


「……最終形態か」


ルシウスが剣を構え、低く呟いた。


「アリア。ここで決めるぞ」


マコトが前に出る。握りしめた剣が、静かに音を立てた。


次の瞬間、エルヴァンが動いた。


奔流する魔力が空間を揺るがす。

エリオットがすかさず前へ躍り出た。


「シェル・ディフェンス!」


彼の杖が輝き、仲間たちを包む結界が展開される。

まるで一輪の花のように、優美で強靭な光が広がった。


続けて、カシエルの放つ闇の矢が、空気を裂いて飛ぶ。


エレノアが杖を掲げ、防壁が淡い光を放った。


「カイル、左をお願い。私は中央を制圧する」


「了解。……無茶すんなよ」


二人は軽やかに駆け出し、敵陣を分断する。


マコトもまた剣を引き抜き、地を蹴る。


「ルシウス、ユリウス! 前衛は俺たちで押し切る!」


「了解!」


ルシウスが剣を抜き、ユリウスも無言で頷いて並び立つ。

三人の剣士が、同時に敵陣へ突撃した。


アリアは後衛に残り、仲間たちを癒し続ける。


イリスが肩に乗り、光を放ちながら魔力を補助していた。


「痛みは私が受け取る。だから、前を向いて」


アリアの言葉に、エリオットが頷いた。


「アリア、俺が守る。君は倒れるな」


「……ありがとう、エリオット」


杖の先に、ミストラル村の願いが灯る。

その光が、仲間たちを照らしていた。





戦場は、混沌に包まれていた。


エルヴァンの放つ業火が、前線を飲み込もうとする。

それを、エリオットとエレノアの結界が何重にも重なって防いだ。


「間に合えっ!」


エレノアの叫びと同時に、炸裂する炎が結界に阻まれる。

爆風だけが空気を撫で、熱が頬をかすめた。


「ナイスだ、エレノア!」


カイルがカバーに回り、敵の狙いを逸らすように精密な牽制魔法を放つ。


その隙を突き、ルシウスとユリウスが異形のカシエルに斬りかかる。


「このっ……なんて硬さだ!」


ユリウスの剣がカシエルの腕をかすめるが、深くは届かない。


「剣じゃ足りないか……でも、諦める気はない!」


ルシウスが叫び、兄弟の連携で一気に間合いを詰める。


カシエルの赫い瞳が冷たく光った。


「無駄だ。その正義では、俺たちの憎しみには届かない」


「違う! 俺たちは希望のために戦ってる!」


ユリウスが叫んだ――その瞬間。


ドンッ!!


大地が揺れた。


マコトが放った【時雨斬り】が地割れを生み、エルヴァンへ迫る。


「力じゃない。“想い”こそが、人を救うんだ。今、それを見せてやる!」


「思いで命が救えるなら……誰も泣かない!」


エルヴァンの絶叫と共に、魔力の奔流がマコトの剣にぶつかる。

轟く衝撃波が戦場を揺らしたが、マコトの足は止まらない。



そのとき、後方から光が差し込む。


「アリア、補助魔法通すわ!」


エレノアの強化魔法が、仲間たちの身体を包み込む。

エリオットも声を張る。


「結界、再展開! 前衛の支援、強化する!」


「イリス、もう一度お願い!」


アリアの言葉に、イリスがふるふると震え、全身を輝かせた。

光が仲間の魔力と呼吸を整えていく。


そして――


エルヴァンが、魔力をさらに高めた。


「見せてやる。選ばれなかった者たちの、最後の力を!」


空間が、悲鳴のようにきしむ。


「来るわ! 全員、構えて!」


アリアの声に、仲間たちが一斉に動いた。


正義と正義が、ぶつかり合う。

憎しみと希望が、交錯する。


これは終わりの戦いじゃない。


未来を選ぶための、始まりの戦いだ。




ーーー97話へつづく


※このお話の舞台はヨーロッパ風異世界であり、現実世界の歴史とは一切関わりありません。

作中に出てくる 国・文化・習慣・宗教・風俗・医療・政治等は全てフィクションであり、架空のものです。

あくまで創作上の設定としてお楽しみいただけますと幸いです。

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