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【不遇令嬢はエルフになりたい】〜介護要員として辺境の祖父の屋敷で働くよう命じられたが、ざまぁする間もなく実家が没落した件〜  作者: 一富士 眞冬
第2章

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286.宴会終わり〜翌朝

(案外、いい子たちだったな……)

わたしは自室に戻って休む前、宴会場の庭で出会った少年少女たちのことを思い出した


 ちょっと意地悪をしてしまったけれど、幼いから思慮が浅いだけであって、根は悪い子たちではなかった。

 みんな、わたしが悪徳治癒術者の疑いをかけられそうになったら、こぞって弁護してくれた。本当のことを話してくれたのだ。

(確かに、ところどころ気に障る言動はあったけれど……)

それこそが“普通の子供”というものなのだろう。


(性格が悪いのは、わたしのほうかもしれないわね……)

普通の貴族令嬢にも、普通の平民の娘にもなれなかったわたしは、恐らく相当に認知が歪んでいる。

 本当は悪気があって言った言葉ではなくても、わたしは第一に悪意として受け取ってしまう。

 八割が善意であったとしても、残り二割の無知や浅薄ゆえの発言に過敏に反応してしまうのだ。

 たくさんの人と話すと、特に強くそれを感じる。

(よくない癖だとはわかっているけれど……)


 常に、他人の言葉の裏を読まずにはいられなかった。

 他人の顔色を(うかが)わずには、いられない。

 無邪気な子供のままでは、いられなかった。


 実際のところ、今までの人生では、投げかけられた言葉が正しく悪意であったケースのほうが多かったのだから。

 それは、裏を読むまでもないような率直な言葉ばかり(罵り)だった。


 わたしは、あまり賢い魔法使いとは言えない。

 自分では気をつけているつもりでいても、騙されてダンジョンに置き去りにされたり、鎌をかけられて言わなくていいことを言ってしまったり、言質を取られて七尖塔の大魔法使い(エリン・メルローズ)様に会いに行くことになってしまったり──色々とやらかしているので、馬鹿だの愚図だのと言われても否定はできない。


 賢い魔法使いは、言質を取られたりしないのだ。

魔法呪文(マジックスペル)を扱う魔法使いは、日頃から言葉に気をつけなければいけないのに……)

 ジーン君たちに注意しておきながら、自分ができていないのでは、お話にならない。


 そんな彼らとは、明日もどこかで出会いそうな気がする。

 狭い村なので、探されたら簡単に補足されてしまうだろう。

「明日会ったら、もう少し楽しく話せるといいな」

 なんやかんやと理由を付けて、牧場まで押しかけてこられたとしても、今度は迷惑がらず話相手になってあげようかな、と少し思った。


 自室に決めた部屋は静かだった。

 屋内に人の気配があることは感じられる。たぶん、大部屋のレッドたちだろうけれど、だからといって物音がうるさく響くようなこともない。

 宿屋のご夫婦が厨房の辺りで作業をしているのだとしても、そうした生活音が筒抜けになるようなこともない。

 大風が吹いても、揺れも(きし)みもしないような、しっかりした作りの民家なのだ。

 久しぶりにゆっくり眠れそうだった。


 *


 翌朝、皆で揃って朝食を摂った後、わたしが一番風呂をいただくことになった。

 男性陣は、川縁(かわべり)に水浴び小屋があるというので、揃ってそちらへ出かけていった。

 聞くところによると、川縁の水浴び場には蒸し風呂(サウナ)小屋も作ってあるそうなのだ。

 この村では、熱い蒸し風呂で暖まってから川に飛び込むという、なんとも心臓に悪そうな習慣があるらしい。


 レッドはわたしがお風呂をいただいている間、護衛と見張りのために残ると言い張っていたのだけれど、入浴中にずっと浴室の前に居座られても落ち着かないので、リオンとクロスと一緒に行くよう指示したのだ。

 村の中ならば、さして危険なことはない。

 たとえ悪ガキどもが(のぞ)きに来たとしても、その程度なら追い払う自信がある。

 そういうときのための、三倍麻痺毒なのだ。これは気化させることもできるので、浴室の蒸気でいい感じに拡散されるはずである。


 浴槽の水は、リオンとクロスが魔道具──馬に水を飲ませるときに使っていた例の桶──と魔法を駆使して、あっという間に張ってくれた。

 さらには、クロスが魔法を使って水の温度を上げ、ほぼ一瞬で適温のお湯を作り出したため、薪を使って沸かす準備をしていた宿屋のご主人は恐縮しきりだった。


(お湯を作り出す魔法……ものすごく覚えたい! 後で絶対に教えてもらおう!!)


 ローランドの寄宿舎にいた当時、等級(グレード)の低い者ばかりが集められた棟では、共同浴場はあってもそれは質素なものだった。

 お湯を作り出すための魔道装置(ボイラー)に組み込まれた魔石がかなり老朽化していて、大勢が使うと途中で魔力切れを起こすことがよくあったのだ。


 魔石の魔力が切れるということは、蛇口から冷たい水しか出なくなるということである。

 水しか出ないとなると、皆、浴槽の湯を()い出して使い始めるため、入浴時間が遅い組は、()かって温まれるほど浴槽に湯が残っていないことも、ざらにあった。

 つまりは、川縁で水浴びをするのと同じことになる。


 身体を拭くだけで済ませるにしても、やはりお湯は欲しい。

 が、生活魔法にはなぜか温度を大きく上げ下げするような魔法がないのだ。

 コップ一杯分程度の飲み物や、作り置きした料理なら、人肌程度には温めることができる。

 冬の日に放置された残り物ではなく、春先にランチボックスに詰めて持ち出した軽食くらいの体感にはなる。

 けれど、湯気の立つような「熱いお湯」は火魔法を応用しない限り、作り出すことはできないのだ。

(たぶん安全上の理由なのでしょうけど……)

 結局、こっそり浄化魔法を併用して乗り切ることも多かった。


 香り付きの石けんを作っても、周りの目があるから使うことができない。

 浄化魔法が使えるのに、冷たい水しか出ない浴場に行かなければならない。

 共同生活とは、かくも不便なものであった。

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