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【不遇令嬢はエルフになりたい】〜介護要員として辺境の祖父の屋敷で働くよう命じられたが、ざまぁする間もなく実家が没落した件〜  作者: 一富士 眞冬
第2章

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280/288

280.治癒魔法は雄弁に語る㉛誤解と曲解と嘘も方便

 わたしが上手く弁明できないでいると、代わりにミラノちゃんとティアナちゃんたちが、本当に話の流れで治癒魔法を実演してくれることになっただけだと代弁してくれた。

「おじさん、本当にそういうのじゃないんだよ!」

「あたしたちがダンジョンの話が聞きたいって強請(ねだ)ったからなの!」

 ね? と二人がロック君に目配せをすれば、ロック君が大きくうなずく。

「マルコの言ったことも、アリアさんの言ったことも本当だよ。何も約束なんかしてないって!」


 一部始終を傍で見ていたジーン君も、弁護に加勢してくれた。

「むしろアリアさんは、魔法使いと気軽に約束なんかするなって(さと)してくれたよ」

  そしてジーン君は、さらにルミカさんとテルミさん母娘(おやこ)の話を持ち出した。


 そういうの(医療に関わる話)個人情報(プライバシー)だから、あまりペラペラ喋らないほうがいいのでは……と思ったものの、もとから家族ぐるみで付き合っているような、狭い村の中の話である。余計なお節介かもしれなかった。

「むしろ、あの二人のほうが“お礼に薬草を渡すから”って強引に家に呼びつけてたし」

 そう。お礼はいらないと言ったのに、結局押し切られてしまったのだ。

 それより、この流れに乗って弁解させてもらおう。


「ダンジョンでは、今のような治癒魔法を何重にも重ね掛けすることもあります。一回や二回、お礼をいただくほどのことではありません」

「そうは言ってもなあ……」

 マルコ君のお父さんは、今度は“礼はいらないという言葉が本当であっても、持病まで完治する大層な魔法を使ってもらって、何も礼をしないわけにはいかない”とか“礼を欠いては犬族全体の沽券に関わる”などと、今度はぼったくり云々とは関係ない方向にごね始めた。

(犬族の人って頭が固いというか、変な方向に義理堅いというか……面倒くさい人が多いのかしら)

わたしは、門のところで会ったイザークさんのことを思い出した。


「ちょうど、ダンジョンでノアさんとジャックさんに掛けた治癒魔法の話をしていたので、それなら実演しましょうか? って、わたしも調子に乗ってしまいました。(まぎ)らわしい真似をしてすみません」

 獣人族の人たちは魔法に詳しくないようだから、上手くいけば(けむ)に巻けるかもしれない。


「確かにわたしはエルフ族の末席に連なる者ですけれど、王都で生まれ育ったのでエルフ村の生業(なりわい)のことは何も知りません。たぶん、王都の冒険者が使う治癒魔法と、エルフ族に伝わる治癒魔法は種類が違うのではないでしょうか?」

「どういうことだい?」

 おじさん(マルコ君のお父さん)が話に食いついた。


「冒険者は、戦闘中に攻防の合間を縫って治癒魔法を掛けます。一度の戦闘中に、何度も繰り返し掛けることもあるんです。だから、治癒魔法がそんなに値の張る魔法のはずがありません。骨折を治すだけで──闇治療だからという点を差し引いても──馬一頭分ものお金が必要なら、冒険者は誰もパーティーに魔法使いを入れようとは思いません。魔法薬(ポーション)で十分だと言うでしょう。

 たとえば、戦闘中にゴブリンに殴られて骨折し、それを仲間の魔法使いに治療してもらったとします。ゴブリンなんか、一匹倒しても野ウサギほどの儲けにもなりません。それなのに、治癒魔法一回で家畜一頭分もの報酬が必要だとしたら、冒険者稼業は成り立ちません。取り分計算のときに、貢献度から報酬の大半を魔法使いが持っていくことになるからです」


 わたしの体験談ではないけれど、世間一般──冒険者の間では常識とされている説だから、嘘で丸め込もうとしているわけではない。

 レベルの高い魔法使いを仲間に加えるには、コストがかかるのだ。

 攻撃魔法の一発に剣士三人分の攻撃力があり、それが敵に対して致命傷を与えたのだとしたら、その分、魔法使いには多くの取り分を渡さなければならない。取り分の計算には、貢献度が大きく関わっていくるからだ。

 骨折を治す程度の治癒魔法に、多大なコストがかかるようでは、初級冒険者はパーティーを組めない。

 基本的に、ソロでは依頼を受けることが難しいからパーティーを組むのであって、パーティーを組めないのなら、仕事にならない。新人が育たないため、冒険者業界は成り立たなくなるはずなのだ。


「だからつまり、冒険者の治癒魔法はもとから安いのです。姿勢の治療院だって、平民でも利用できる程度の値段だもの。

 薬草だって希少で高級なものから、ありふれたものまで、色々な種類があるでしょう? それと同じです。エルフ族が使ったのは、きっと珍しい種類の治癒魔法だったのだわ」

 そういうことにしておこう。

 恐縮するほどの魔法ではないと信じてもらえたなら、“悪徳治癒術者かもしれない”という、わたしへの疑いも晴れるはずだ。


 エルフ族と冒険者の治癒魔法が違う種類のものなのかどうか、本当のところは知らない。

(でも、エルフ族のお祖母様も種族固有の魔法を使っていたというのだから、エルフ族特有の治癒魔法が存在していても、不思議ではないわよ……ね?)

 なにしろ、わたしはお祖母様のエルフ族秘伝の魔法によって、大病から命を救われたのだから。

拙作をお読みいただき、ありがとうございます。

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