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【不遇令嬢はエルフになりたい】〜介護要員として辺境の祖父の屋敷で働くよう命じられたが、ざまぁする間もなく実家が没落した件〜  作者: 一富士 眞冬
第2章

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269. 治癒魔法は雄弁に語る㉑奴隷の子守り

 *


「騙されたんだ、帰りたいと言って泣き喚くガキの子守りは、年上の奴隷の仕事なんだよ」

 かつて、レッドはそう言った。


 まだ店頭(みせ)に出せない幼い奴隷は、商会の奥で働かされる。

 自分よりさらに幼い弟や妹のような子供の世話をし、教育するのが仕事だという。

 商会の人間は、新しい奴隷を宿舎という名の檻に放り込む。

 自分たちで面倒を見て、躾ける手間はかけない。

 それは大人の奴隷であっても同じこと。

 基本的なことは先輩奴隷から教わり、鑑定や適性試験を経た後、値段を決められ、商品として紹介されるのだという。

 

「オレも二、三年子守りをしてた。その後の適性試験の結果、冒険者になることが決まったんだ」

 レッドは当時の様子を、面白くもなさそうに淡々と話してくれた。

「新人の躾が行き届いていなければ、折檻されるのは教育担当の年長の奴隷だ。後輩を育てられなければ自分が罰を食らうんだから、みんな必死さ。反抗的なガキは、殴りつけてでも言うことを聞かせる」

 そんな環境で、労働力としての奴隷の質は担保されるのだろうか──という疑問は、愚問でしかなかった。

「使い物にならなかった子供は、いつの間にか消えていなくなってた」


 *


 大人の獣人奴隷が、酷使されるのは理解できる。

 王都では手軽な労働力として、あらゆる場所で使われていたから。

 けれど、幼くして奴隷となった子供がどうやって育つのかということは、レッドから聞くまでは想像もしていなかった。

 商会のバックヤードで行われていることであり、その様子を長じた奴隷が語ることもない。

 普通は(・・・)、契約主と奴隷がそんな会話をする機会はないからだ。

 

 大人が、戦争や騙し合いで負けた結果、責任を取らされて奴隷落ちするのは仕方がない。

 犯罪を犯した人間が、罪を償うために奴隷として強制労働に従事させられるのも、仕方がない。

 でも、罪もない子供を捕らえて、無理やり奴隷にするのは違うだろう。


 魔法使いと約束をするということは、常に危険を伴うのだ。

 わたしはマルコ君たちの戻りを待つ間に、魔法の危険性についてジーン君に説明した。


「だからさっきも、わたしは“よく聞いて”とはお願いしたけれど、“約束して”とは言わなかったのよ」

「全然気づかなかったな」

 そうなのだ。意外と人は、他人(ひと)の話を聞いていない。


 わたしだって魔法使いの端くれだから、意識はしていたはずなのだけれど、モントレーさんに鎌を掛けられて引っかかってしまった。

 魔法使いでも何でもない、獣人のおじさんのお喋りに、うっかり返事をしてしまったのだ。


 門番のモントレーおじさんは、まんま(・・・)とわたしから、わたしが“アリア”だという証言を引き出した。

 それはつまり、自白や魅了の魔法など使わなくても、人を操ることができるという(あかし)でもある。

(ただの“年の功”ってやつでしょうけれど、そういうのが一番怖いのよ)

 言葉巧みに人を騙す悪い人間がいなければ、詐欺同然の契約で身売りさせられる女の子なんかいないはずなのだ。


「“何でもするから”とかも絶対に言っては駄目な言葉(ワード)ね」

「げ。マルコの奴、普通に使ってたぜ。魔法使いを探して“何でもするから、じいちゃんを助けて!”とか、よく言ってた気がする」

「相手が善良な魔法使いで助かったわね。危険だから、よく言い聞かせておいて。あのメンバーでは、あなたが一番のお兄さんでしょ」

 わかった、とジーン君がうなずく。


「魔法使いが使うのは、攻撃用の属性魔法だけではないってことを覚えておきなさい。属性魔法ではない魔法には、部隊全体に恐怖を蔓延(まんえん)させるような魔法もあるし、その逆もあるのよ」

「……魔法で部隊の士気を上げたり、下げたりできるってことか?」

「ええ。魔法使いの仕事は、回復と攻撃だけではないのよ」


 *


 そんな話をしながらマルコ君たちを待っていると、わたしたちの席に一人の大人が近付いてきた。


「少し話が聞こえてしまったのだけど……」

 長い兎耳をした、お母さん風の女性だった。

「こんばんわ、テルミさん」

 ジーン君の知っている人のようだった。


「ルミカ姉ちゃんのお母さんだよ。ミラノが言ってた、薬草屋さんの」

 いや、だから“ルミカお姉ちゃん”って誰よ。


 マルコ君たちが戻ってくるまで暇なので、三人で座って話すことにした。

 彼女はテルミさん。

 村の薬草屋さんの奥さんで、今日の宴会料理にたくさんの香草を提供してくれていた。

 

 ミラノちゃんが“ルミカお姉ちゃん”と呼んでいた人のお母さんである。

 薬草屋さんの娘さんであった“ルミカお姉ちゃん”は、家業の手伝いで、シアンが滞在していた族長(ノア)さんの家まで、何回か薬草を届けに行っていたらしい。


 ルミカさんは、わたしより一つ年上のお姉さんだった。

 そのルミカお姉ちゃんのお母さん(テルミさん)が、わたしの前に座っている。

 彼女は、おもむろに切り出した。

「古い傷跡も、消せるのかしら」

拙作をお読みいただき、ありがとうございます。

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