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【不遇令嬢はエルフになりたい】〜介護要員として辺境の祖父の屋敷で働くよう命じられたが、ざまぁする間もなく実家が没落した件〜  作者: 一富士 眞冬
第2章

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248.治癒魔法は雄弁に語る①庭へ

 宴会場である集会所に着いたときから、庭先にはたくさんの松明(たいまつ)(かか)げられていた。ずいぶんと明るくしているのだなと思っていたのだけれど、その理由がわかった。

 今は、庭の中央にいくつかのイスとテーブルが並べられ、大規模なテラス席のようなものが出来上がっている。


「ガーデンパーティー?」

「うーん……ちょっと違うかな」

 私が呟くと、リオンが苦笑しながら答えてくれた。


「ガーデンパーティーというのは、貴族や金持ち間での呼び方だ。これはただの屋外での宴会だ。贔屓目(ひいきめ)に言っても立食パーティーだな」

 あまりアホなことを言うな、とクロスに呆れられた。

 

 庭の端には即席のかまどが組んであって、即席の屋外調理場ができあがっていた。

 四つのかまどには、大鍋が二つ、焼き網が一つ、大きな鉄板が一つ掛かっている。

「お、焼肉!」

 リオンがさっそく、肉に釣られて鉄板に群がる村人たちの間に紛れた。

 鉄板では、何の肉かはわからないけれど、薄切りにされた赤身の肉が大量に焼かれている。辺りに漂う香ばしい匂いの大半はこれであろう。


 レッドは人狼族のおじさん達に連れられて、酒盛りに付き合わされていた。

 串焼きをもらうため、皆で焼き網の周辺にいる。

 片手にお酒のジョッキ、片手に串焼きというスタイルである。

(あ……片手で持てるように串焼きなのね)

 はたしてレッドは、酔っ払いたちのウザ絡みから、無事に抜け出せるのだろうか?

(無理に飲まされないといいのだけれど……)

 わたしは頭の中で、二日酔いの薬があとどれだけ作れるか、薬草の在庫を数えたのだった。


 テーブルとかまどの中間地点には、酒樽が用意されていた。

 皆、そこでお酒をもらって、それぞれ好きな食べ物のところへ散って行くのだ。

 ジョッキと皿、もしくは椀で両手が塞がってしまうと困る者は、中央のテーブルを使っている。

 やはり焼肉が一番人気で、ウランさんも木製のジョッキになみなみとお酒を注いでもらってから、いそいそと鉄板のほうへ向かっていた。


 クロスは、樽から自分のグラスにお酒を注いでもらって、さっさとテーブルに陣取っている。

「クロス、食べ物は?」

 何かもらってこようかと尋ねると、不要だと言われた。

「後でいい。こういう地酒は村でしか飲めないからな」

 珍しい地酒らしい。

 たぶん、エルさんが言っていた強いお酒だ。

お前(アリア)はやめておけ。慣れない者が飲むと悪酔いするぞ」

「ありがとう、わかったわ」


 それから、わたしはマイアさんに手招かれて、大鍋のかまどへと歩み寄った。

(何を煮ているのかしら?)

 湯気の立つ二つの鍋を交互にのぞき込むと、一つはとろみのあるクリームシチューだった。

 遠目には、室内のテーブルで偶蹄(ぐうてい)族や兎人(とじん)族の人たちが食べていたスープに似ているけれど、こちらの鍋にはごろごろとした大振りの肉が入っている。

 柄の長いお玉(しゃもじ)で鍋をかき混ぜているマイアさんは、美人で優しい“お母さん”そのものだった。


 もう一つは、大衆食堂のメニューにもよくあるスープだったけれど、わたしの知っているどのスープよりも、大きな具材がたくさん入っている。

(スープじゃなくてポトフ……?)

 そして、どちらの鍋でも干し肉や塩漬け肉ではなく、狩ったばかりの新鮮なお肉を使っていた。


 ちなみにポトフ鍋の番をしているのは、白くて長い兎耳が目を引く兎人族の女の子である。

(あ、兎の人もお肉食べるのね)

 失礼ながら、そんなことを思ってしまう。

 雑食系と肉食系の獣人にしか知り合いがいないため、草食系獣人が好む食べ物など知らない。

 屋内のテーブルでも、偶蹄(ぐうてい)族の人たちが野菜料理ばかり食べていたから、勝手に菜食主義者のイメージを持っていた。


 後で知ったことだけれど、兎人族は野草に詳しくて、香草の調合や組み合わせに一家言を持っているそうだ。

 そのため、香草を使う料理を作るときには欠かせない人材らしい。

 薬草採取だけではなく、料理用の香草の束(ブーケガルニ)を作って売る商売もしているというから、ぜひとも見習いたいものであった。

拙作をお読みいただき、ありがとうございます。

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