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【不遇令嬢はエルフになりたい】〜介護要員として辺境の祖父の屋敷で働くよう命じられたが、ざまぁする間もなく実家が没落した件〜  作者: 一富士 眞冬
第2章

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246.宴会⑯(落ち着かない心地)

 ──などと、取り留めもないことを考えてしまったのは、なんとなく落ち着かないからだ。


(わたしなんかが、こんなふうに歓迎されていていいのかしら?)

 こうして宴の席を用意してもらい、お料理を振る舞われ、歓待されているという事実に、どうにも馴染めない。

 だって、わたしは──ずるくて卑怯な嘘吐きなのだから。


 王都にいたときには、片目を隠して人間の振りをした。

 お世話になったノアさんとジャックさんに対しても、本当のことを言っていない。出自を隠してハーフエルフの振りをした。

 レッドに対しても、従者として扱うと言っておきながら、旅に出てから何度もこちらの都合で奴隷呼ばわりをした。

 亜人種が集うこの集落に着いてからは、急にハーフエルフを名乗ることに決めた。


 亜人種(ハーフエルフ)として、迫害を受けながらも冒険者として王都で生き抜き、族長たちを救った──とか、そんな立派な人物ではないのだ。

(きっと、この村の人たちは誤解してるんだわ)


 リオンとクロスにも、まだ言っていないことがある。

(本当は、紹介状なんて持っていないの……)

 お父様は、そんなものは用意してくださらなかった。


 孫が祖父に会いに行くのに、紹介状は必要ないと思われたのかもしれないけれど、日頃から懇意にしているのならともかく、互いに一度も会ったことがないのだ。

 向こうも、いきなり孫を名乗る小娘が現れては困惑するだろう。

 紹介状とはいかなくても、せめて事情を説明する手紙の一つでも持たせてくれたらよかったのに。

 あらかじめお祖父様に手紙を出しておいてくれるような心づかいは、この際、全く期待はできない。


 辺境のお祖父様のところから、王都で暮らす息子──わたしのお父様のところへ、身体を悪くしているという知らせが届いたということは、何かしらの援助を求めてのことだと思う。

 あちらの家令が連絡を寄越したということは、お祖父様の窮状を見かねての行動かもしれない。


 先触れが出ているのなら、途中で迎えがあってもおかしくはなかった。

 少なくとも、求めた支援の結果として実の孫が訪れることがわかっているのなら、無視するという選択肢はないはずだ。

(お祖父様ご本人が、どう考えてらっしゃるかは別として)

 あちらの家令が上手く取り計らっただろう。


 迎えがない──あるいは、どこかで入れ違いになった可能性を考えて、わたしを捜索する手勢さえ出していないということは、お父様が何も連絡をしていない証拠である。

 そもそも、連絡をすれば迎えに関するやり取りがなされる。

 荒野の谷をどう渡るかの算段もされるだろう。

 けれど、それをしてしまえば、大義名分の元にわたしを放逐する計画が成り立たなくなる。

(お父様のことだから、わたしのこともお祖父様のことも、単にどうでもいい──関心がなかっただけかもしれないけれど)


 だから、紹介状や手紙などという物もなければ、わたし自身の出自を証立てる品もない。

 出自を証明するアイテムとは、一族に代々伝わる○○とか、家の紋章が入った剣や宝飾品、父や母の形見といった門外不出の品のことである。

 成り済ましを防ぐには、二つ以上の証拠が揃っていることが望ましいのだ。


 わたしが持っているのは、冒険者カードだけであった。

 隠蔽魔法を解除すれば、ヴェルメイリオ家の者であることは明らかになる。

 けれど、冒険者であること自体に不信感を抱かれた場合には、どうしようもない。


 辺境ではどうだか知らないけれど、王都では貴族が──しかも婦女子が、冒険者をやっていること自体が異常なのだ。

 貧乏貴族の子息の中には、冒険者に身をやつす者もいるようだけれど、たいていが恥ずべきこととして隠している。


(リオンの場合は、隠す前にバレてしまっているみたいだけれど……)

 貴族だとバレたところで、気にした様子もないところが、リオンらしいと言えば言える。


 つまり、わたしが冒険者カードを提示したところで、伯爵家の一人娘が冒険者などやっているはずがない、と断言されてしまえばそれまでなのだ。

 ヴェルメイリオの家名を名乗ることができる程度には血を引いている──それはアカシック・システムが保証してくれる──けれど、タクト・ヴェルメイリオの孫であり、レナード・ヴェルメイリオの長女であることの証明にはならない。


 その上、この目である。

 オッドアイはハーフエルフの象徴ではあるけれど、それだけではセレーナお祖母様の孫である証明にはならない。

 それこそ、分家の誰かが奴隷エルフに産ませた私生児である、と疑われても仕方がないのだ。

 私生児であることが悪いわけではないけれど、貴族社会においては、亜人種の次くらいには好かれない要素の一つである。


 リオンは辺境の検問を通り抜けるために、わたしの護衛の振りをしたいと言っていた。

 わたしが辺境の親族から呼び寄せられた事実が伝われば、すぐに通してもらえると思っての発言だろう。

(辺境の検問って、そんなに大変なのかしら……?)

拙作をお読みいただき、ありがとうございます。

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