241.宴会⑪(迷案)
ウランさんは今までの話の中で、Bランク後半からAランクの実力がないと、荒野の谷を超えられないと言っていた。
リオンとクロスも、荒野の谷を渡るにはAランクの冒険者が必要だと言っていた。
つまり、ノアさんが率いるこの村の傭兵部隊が、辺境伯であるお祖父様の依頼を受けて旅立ったということは、Aランク冒険者に匹敵する力を備えていて、荒野の谷を超えられるという事実を示している。
(アレスニーアまで行ってAランク冒険者を探さなくても、護衛してくれる人をこの村で雇うことが出来れば……)
寄り道をしなくて済む分、旅程をだいぶ短縮することができる。
遅れを取り戻せるかもしれない。
辺境伯からの依頼を、珍しくもない様子で“散歩”と呼んでいるくらいだ。辺境領までの道のりも慣れたものなのだろう。
──などと考えて、慌ててその考えを打ち消した。
ちらりと向かいの席に視線をやると、リオンとクロスが温かな料理を楽しんでいるのが目に入る。
(全っ然、名案なんかじゃないわ!)
一人前の冒険者が、傭兵を護衛に連れて荒野の谷を渡ったなどと知られたら、大恥である。
初級や下級の冒険者で、どうしても辺境に用事がある者──わたしのような底辺の存在ならば、仕方がないと見做される。
けれど、中級冒険者にもなってそんなことをすれば、腰抜け呼ばわりされるのは必至だ。
貴族が大仰に見栄を張り、騎士が名誉を重んじるように、冒険者にも意地や面子というものがある。
大規模なレイド戦のようなものならともかく、冒険者が護衛にのために傭兵を雇うことなどできるはずもない。
ギルドで禁止されている行為ではないから、罰則があるわけではないれど、保護者同伴で行動して笑いものにならないのは、王国に保護されている“勇者様”くらいのものである。
職業によって相性があるので、貴族は護衛として傭兵を用いない。
それと同じように冒険者と傭兵というのは、仲が悪いというほどではないにしても、完全に棲み分けがなされている。
冒険者は魔物討伐とダンジョンの探索を主とし、紛争には極力関わらない。戦場へ赴くことを好まず、国軍と関わる機会もない。
傭兵は紛争地域での対人戦闘を専門にし、ダンジョンに潜ることはしない。必要がなければ魔物を狩ることもない。
(少なくとも、王都近郊の都市部ではそういうルールになっていたはず……)
いわゆるプロの何でも屋と、プロの戦争屋として分かれているのだ。
必要な技術が違うということもあるけれど、たぶんギルドの経営上の都合だ。
だから、どちらにしても傭兵を冒険者パーティーの護衛として雇うことは無理なのだ。
(それに……わたしが傭兵団の方を連れ出してしまったら、この村の守り手がいなくなってしまう)
ほかの部隊が残っているだろうけれど、ノアさんたちが出稼ぎに行ったことで、ただでさえ村の防御が手薄になっているというのに、これ以上の人手を割かせるわけにはいかない。
(その前に、先立つものがなかったわね!)
アレスニーアまで行けば、クロスのお師匠様が魔石を買い取ってくれるそうだけれど、今は手持ちの現金がない。これでは依頼を持ちかけることなどできはしない。
こういうのは確か、現金での支払いが基本だったはずだ。
そして、少なくとも半分は前金で渡さなければならない。
団や部隊という単位で雇うのなら、貴族でも渋るような大金になる。
そんなお金は持ち合わせていなかった。
リオンなら持っているかもしれないけれど、冒険者の彼らが傭兵に依頼を出すわけがない。出させるわけにもいかない。
だから最初から、アレスニーアまで行って、仲間になってくれる冒険者を探そうとしていたのだ。
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