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【不遇令嬢はエルフになりたい】〜介護要員として辺境の祖父の屋敷で働くよう命じられたが、ざまぁする間もなく実家が没落した件〜  作者: 一富士 眞冬
第2章

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238.宴会⑧(騎士と傭兵)

 魔法使いのような後衛職と、直接戦闘をこなす前衛職も、その実は水と油のような関係である。

 パーティー内で協力し合っている間は、互いの得意不得意を補い合って、いい関係を築けるものの、一度、喧嘩でもすれば悲惨な罵り合いになる。


 (いわ)く、後方の安全な場所から魔法を放つだけの憶病者。

 曰く、体力だけが取り柄の脳筋。

 間に挟まれた中衛は、どちらの味方もできずに器用貧乏呼ばわりされて、爪弾きとなる。

 見かねて荷物持ち(ポーター)が止めに入ろうとすれば、雑用係は黙ってろと一喝されて終わりだ。

 ギルド酒場では、取り分で()めた大人たちが、いい歳をして子供のような罵り合いをしている光景を、何度も見た。


 仲の悪いパーティー同士が、相手パーティーのメンバーを罵るときにも、だいたい同じ言い草になる。

 どちらの脳筋具合が酷いか、どちらの臆病度合いが酷いかという、目くそ鼻くそのような罵り合いだ。

 お酒が入るとさらにヒートアップするため、最終的にギルド職員によって、酒場から追い出されるところまでが一連の流れとなっていた。


 暗殺者と騎士、毒薬使いと剣士や戦士も似たような構図で、決して仲がいいわけではない。

 騎士は暗殺者を“こそこそと闇に紛れる卑怯者”と嫌い、暗殺者は騎士を“頭の固い気取った連中”と揶揄している。

 ちなみに、騎士が毒薬使いに求めるものは、大抵が解毒薬である。

 それ以外の用途では、暗殺者と同様に毛嫌いされている。


 一方で、毒薬使いと暗殺者はわりと友好的な関係にある。

 毒薬使いにとっては暗殺者は毒薬を注文してくれるお得意様であり、暗殺者にとって毒薬使いは御用達の薬屋のようなものである。

 普段から身近に毒に接しているせいで、薬師の薬が効かない者が多いのだ。


 例えば「女神の小鈴」という、釣り鐘型の小さな花を咲かせる野草がある。

 広義には薬草と呼ばれているけれど、薬として使われる部位より、毒として使われる部位のほうが多いため、暗殺業界ではポピュラーな毒草として扱われている。

 そのためか、たいていの暗殺者には耐性ができてしまっていて、成分として「女神の小鈴」を含む薬が効かないことがある。


 暗殺者だって、風邪くらい引く。

 が、急な病に薬師の薬で対処しようにも、その薬の中に「女神の小鈴」が含まれていると、十分な効果が得られない。

 効かない理由を勘繰られても面倒だし、正直に話して別の薬を処方してもらうわけにもいかない。

 そのため、最初から事情を理解している毒薬使いに、風邪薬や傷薬などの普通の薬を処方してもらうことがあるのだ。


 薬も毒の一種なので、調合できないことはない。

 薬には多少なりとも毒の成分が含まれているものであり、毒と薬の分岐点は、(ひとえ)に調合割合による。

 暗殺者も毒薬使いも、万人に好かれる職業ではないという点では共通している。要は似たもの同士であり、それなりに仲良くやっていた。


 ──とまあ、職業(ジョブ)によっても相性の良し悪しがあるのだけれど、騎士と傭兵というのは先天的に相性が悪い組み合わせの筆頭なのである。

拙作をお読みいただき、ありがとうございます。

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