3.騎士団の人
震えを抑えるために必死でマリアは手を握っていた。
−カラ、カラ、カラ。
馬車の振動が変わってきた。
屋敷から王宮までの道のりは道が整備されていないため振動が強く感じるが王宮の外門を入ると石畳になる。
(もう王宮内にはいったんだ…)
マリアがふと、顔を上げると馬車の窓から王宮を警護する騎士の姿が見えた。
(騎士…。そういえばあの方は失礼だったけど…不思議な方だったわ。)
マリアが一番身近で知っている騎士団の人と言えば、兄、アーサーだ。
その兄が脱走騒ぎばかりおこしているマリアを気遣ってか、上手くマーサに説明をして街まで連れて行ってくれたときがあった。
「兄様、ありがとう。連れ出してくれて。」
ニコッとマリアが言うと
「俺がマリアと出かけたかったんだからいいよ。」
とアーサーも笑っていた。
「マリア。実は、今日、友人も一緒に行きたいっていっていて街で待ち合わせすることになっているんだけど、いいか?」
「わたしは大丈夫だけど…街で約束してしまっているんだったらわたしが嫌って言ったらどうするつもりだったの?」
苦笑しながら聞くと、
「マリアはいいっていうと思っていたから。」
さらっと言われた。
「騎士団の方?わたし、会ったことある?」
たまに兄様のお友達が屋敷を訪ねてくることはあってマリアも挨拶したり話したりすることはあった。
「騎士団には所属してない。うちにも来たことはないなぁ。一緒にいて気持ちいいやつだよ。」
屋敷に来たアーサーの友人でマリアを悪くいう人はいなかった。
(兄様も認めている方みたいだし…大丈夫よね。社交デビューが決まってからもやもや考えてしまうことらあったけど、今日は楽しもう!)
マリアは気持ちを切り替えて、今日みてまわりたいと思っていた店に思いを馳せた。
街につき、御者に待ち合わせ場所をアーサーが指示するのを待って、待ち合わせ場所に急ぐ。
街の時計台の前につくと、
「アーサー、こっちだ。」
声がかかった。
声がする方に振り向くと、二人の青年がいた。
ひとりは茶色の髪、もうひとりは黒色の髪。
黒髪の青年が手を振っている。
近づいていくたと茶髪の青年は、マリアよりも頭ひとつ分背の高いアーサーよりもさらに背が高く長身であることがわかった。
ちなみに黒髪の青年はアーサーより少し低いぐらいだ。
「悪い。ちょっと遅れたか」
「いや。わたしたちが早くついてしまったんだ。それより、そちらの令嬢が妹君か?」
黒髪の青年がいい、三人の視線がマリアに集まる。
「そうなんだ。俺の下の妹のマリア。」
「こんにちは。マリアです。今日はみなさんのお出かけにお邪魔させていただきます。お願いします。」
ペコッと頭を下げた。
それを見ていた茶髪の青年がふと言った。
「アーサー。お前の妹って金髪じゃなかったか。出かけるためにそんな赤毛に染めたのか?」
頭が真っ白になった。




