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花冠の花嫁  作者: 瑠璃
第2章 謁見までの道
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2.馬車の中

−ガラ、ガラ、ガラ。


馬車の中にはマリアひとりだ。

通常、良家の子女がでかけるときには、エスコート役もしくは侍女が必要だが、初めての謁見−デビュタントにはひとりで行くことがルールとされる。


屋敷をでるときには家族に励ましの言葉をもらった。

兄様からは「側にいられないけど、心は側にいる。頑張れ。」といわれ、頭を撫でられた。

姉様からは「おじ様やフレッドに会い行くって思えば大丈夫。」と言われた。

母様からは「あなたはミーレッシュ家の自慢のプリンセスだから誇りを持ちなさい。」と言われ抱きしめられた。

父様からは「いつもの笑顔を忘れずに。」と言われた。

わたしはそれに頷くのに精一杯だった。


馬車の窓に顔がうつる。

緊張しているのか無表情でこちらを見返している緑の目。

綺麗に装っているが不安が全面にでている。


脱走騒ぎをおこすたびに日中、マリアはひとりで過ごす時間がなくなるようになった。

様々なレッスンをして疲れ果ててベッドで眠る日々。

久しぶりに自分と向き合った気がした。

社交デビューが決まってから心の奥にあったモヤモヤ感が体に広がる。


(謁見が嫌なわけじゃない。おじ様に会いにいくだけじゃない?!舞踏会のダンス!?ダンスのステップはばっちりよ。)


そういうことが不安なのではない。


(…わたしは他の人からどういう評価を受けるのかな。周りは兄様や姉様みたいに何でもできることを期待しているんだろう。わたしは淑女らしく女の子らしくなんて得意じゃない。得意なものや人より優れている部分なんてない。絶対、ボロがでてしまう。)


怖いのは今からマリアがすることが人から評価されること。


何か悪いことを言われるのはわかっている。それで自分が傷つくかもしれないこともわかっている。もしかしたら家族にも迷惑がかかるかもしれないことも…


(…でも…それを受け止める覚悟ができない。)


人の目が怖い。


手がふるえだす。


(ドレスを掴んだらシワになっちゃう。)


変なところは冷静で笑えてくる。


マリアは両手を握りしめて震えをおさえるように努力していた。

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