表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
花冠の花嫁  作者: 瑠璃
第2章 謁見までの道
6/17

1.準備

(とうとう、この日が来ちゃったな。)


あれから結局、脱走することはかなわなかった。

でも一度は見かねた兄様がこっそり街に連れて行ってくれて…たくさんのお店を見て回れて楽しかった。いつものわたしに戻れた気がした。



その日は朝から忙しかった。

日が昇る前から起こされて、お風呂に入れられて、髪と体を入念に洗われる。


昨日からマーサは、今流行りのバラのエキスを使ったものを使うって張り切っていたけれど、残念ながら、わたしがあまり強い香が好きではない。

自然に咲いているバラならきれいだと思うし、香も素敵だけど、エキスや香水ってなると、香がきつく感じられて、気分が悪くなってくるのだ。

まだまだお子様なわたしには似合わないと思うしね。


苦手だと知っているべラとクリスが反対してくれて、それでもマーサが譲らないのを見かねた姉様が口添えしてくれて、やっと、わたしが気に入っているレモンとハーブの香りのエキスとポプリを使うことが決まった。


「特別な日にいつもと同じだなんて…」

と、マーサは言っていたけど、ここはわたしの意見を通してもらう。

気分が悪くなって、謁見前に気絶ではかっこ悪すぎる。


この日のために誂えたドレス。

拝謁用のドレスの色は白って決まっている。

乙女の純真さを表すため…らしいが、確かなことは不明。

決められた中でその中でどれだけ工夫をできるかが勝負になっているらしい。

姉様のときにはウエスト切り替えのシンプルな形。

でも、その表面に信じられないほど細かく刺繍が入っていて、大人っぽい姉様にはとても似合っていた。

わたしはというと…胸下切り替えのドレス。ウエスト部分は同じ白だけど生成りっぽい色のリボンで結ぶことにした。

デコルテがきれいに見えるっていうことで胸元はスクエアカットにしてもらった。

胸下切り替えのドレスって…胸が豊かな人が着ると、そこが強調されてしまうんだけど…

残念ながらわたしにはその心配は不要だった。


化粧はなるべくシンプルに。

あまり色を乗せると、けばけばしくなってしまって、デビューにふさわしくないらしい。

べラの提案で、ピンクとオレンジを基調とした感じに仕上がった。


髪型もオールアップするように決められている。

すべて上げてしまうと、顔が丸いのが目立つから、顔の周りの髪だけ少し落としてもらった。

髪飾りはあえてつけない。

しかし、ティアラはつける。

ミーレッシュ家代々の家宝の中にもティアラがいくつかあるんだけど…

その中のひとつ、鈴蘭をモチーフにしたものをつけた。

わたしの名前に入っている「スノーフレーク」は実は花の名前。

鈴蘭に似ている花だ。

それに気づいてこのティアラにしようと決めた。


あとは靴。

靴も白でそろえた。

ヒールが高いといざという時に転ぶといけないからなるべくローヒールにした。

マーサはもう少し高いほうがきれいに見えるっていっていたけど、わたしの普段のお転婆ぶりを知っているから…ここは強く反対しなかった。


こうして、いつもとは全然違う、「マリア・スノーフレーク・フォン・ミーレッシュ」が鏡の前にいる。

柄にもなく緊張していて、瞳には不安が見える。

髪はクリスが一生懸命、お手入れしてくれて、いつもよりも艶もあってきれいだけれど…やっぱりただの赤毛だった。

いつまでも、うじうじしていても仕方がない。


(わたしは、わたし。いつも通りに。)


いざ、出陣である。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ