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私はよくネット掲示板を見ている。今日は自宅のパソコンから。
SNS全盛期だというのに、SNSより素直な悪口が豊富で落ち着く。どうもSNSは(私が主に使用するのはツイッターだが)、人の目を気にするところがある。というか、面と向かって言えないようなことはSNSでも発言するなというのが、ネットリテラシーだろうが、掲示板は未だに便所の落書きレベルで、人間ってまだこんなアホなんだと安心できる場所だ。
人前で憚られるようなことを言う場所が本来のネット上のブログであったり、掲示板であった。いつの間にかネガティブ発言者のいるサイト群に、SNSの普及でポジティブ発言者がなだれ込んで来た。元々ネガティブだった利用者は追いやられ、SNSはきれいごとを並べ立てて使用ユーザーの知名度を上げる場所となった。まあ、炎上や迷惑行為で知名度を上げる人も少なからずいるが。
私も炎上すればプロ作家になれるかな? 無理無理。そんな恐ろしいことはできない。デビュー前からそんなことを考えたらいけない。それに、SNSは編集さんも使用している。私が将来お世話になるかもしれない、まだ見ぬ編集さんが。
取らぬ狸の皮算用だが、苦悩してみる。
『ファンタジーノベル小説新人賞スレ50』で落選者がいないか見てみる。ダメだ。一次選考の結果発表前よりスレッドの勢いが落ちている。落選が分かった瞬間、みんな掲示板から消えてしまう。名残惜しくもネット上を徘徊するような応募者は、私だけなのかもしれない。
一次選考通過者は安堵しており、『次の二次選考発表が一か月後だから緊張する』と身構えている。闘志十分で私みたいに落選した同族探しなんかしている人は一人もいない。
気になるコメントは、『自信作だったのに落ちた』とか、『これが駄目だったら、俺は来年還暦になる。読者層の若い感性にはもうついていけないってことだな。二次選考は期待せずに次の作品の執筆に取りかかる』など。
私も気づいたら六十歳になっていたなんてことになるのだろうか。作家デビューに年齢制限はないものの、それでも読者層と趣味趣向や感性がずれていくと、デビューするのが難しそうな気はする。
私は三十代だけど、難しい大人の事情はよく分からないから子供向けにファンタジー小説を書いたり、夏目漱石の『こころ』が好きで学生の悲劇を描きたくて純文学の賞に送ったりしている。きっと、子供の気持ちなんて分からないし、夏目漱石のこころは学生の悲劇をテーマにしているわけじゃないと思う。だが、応募前の私は自分の作品は子供向けのファンタジーで、夜寝る前に読んでベッドでガクガク震えてもらいたいと思って書いたし、純文学の方は、『こころ』より泣けるから、私の作品はやばいと思って書き切った。私は自分の作品に自信があり過ぎるのかもしれない。




