第二節 新たな戦術魔物 3話目
ふぁっきゅー繁忙期(・ω・`)
巨大な布が徐々に動きを変え、まるでそこに巨大な人間がいるかのようにケープとなって空間を括っていく。
「……来ますよ!」
「くっ!」
月明かりのおかげで俺達の足下の影が広がっている事に気がつく事ができた。そして次の瞬間、縮地による跳躍とほぼ同時にその場にどこから呼び出したのか巨大な岩が落下する。
『【ポルターガイスト】……やはり亡霊とみて間違いないな』
「っ! 主様――」
『言われなくとも分かっている』
「いえ、その……」
『心配するな、どうにかなる』
亡霊がよく使う魔法として一番にあがるこの魔法、戦う時には相手の力量はもちろんのこと周りにあるものを確認しておかなければ、今のように範囲も広い大型のものを投げつけられたりすることあったりする。
「さて、どう始末をつけましょうか」
と言いつつも既にシロさんは自分の方で陽動役をかってでてくれるようで、相手の注意を引く白銀の大楯と片手でも取り回しの良い直剣のセットで相手の残りの浮遊物を捌ききろうとしている。
『ラスト、今のうちに』
「はい!」
そうして俺の手に握られたのは、破魔ノ太刀という純白の刀身に刃紋代わりに反呪文の魔法文字が刻まれている対魔法特化型の刀。刀という武器種となかで唯一魔法攻撃を叩き斬る事ができるこれであれば、亡霊という実態の無い存在も叩き斬る事ができる。
「抜刀法・参式――霧捌!!」
攻防一体のこの技ならば、例え途中でポルターガイストの的になろうが斬り返すことができる筈。
「っ、ジョージさん!」
『分かっている!!』
反撃のことなと頭に入れて――
「違います!」
――後ろです!!
「ッ!? 何だと!?」
目の前に飛んで来た剣の残骸を横の回転斬りでいなし、そのまま後ろへと振り返る。するとそこにはもう一つの巨大な剣が――まるで巨人が使うかのような巨大な剣が俺の頭上へと振り下ろされようとしている。
「くっ!!」
とっさの判断で俺は刀でいなすことを試みたが、その間にラストの魔法による割り込みが入ってくる。
「主様!!」
ラストによって放たれた棘は剣へと突き刺さり、そのまま破裂して時の塵をまき散らす。
「【死刻塵顛陣】か、よくやった!」
この際多少の状態異常などどうでもいい。あのまま受けきるよりは明らかにダメージは少なくて済むはずだ。
「主様、ご無事で!」
『礼を言うぞラスト、よくあそこで割り込めた』
「はい! 私は主様しか見ておりませんので!」
それはそれで問題なのだが……ともかく。
『シロさん今の大剣どこから飛んできたか見てないですか!?』
「残念ながら、丁度対面にゴーストがいるから見えませんでした」
となるとこの亡霊以外にもまだ敵が潜んでいるということになる。
『面倒な……見えない敵を二体も相手にしろってか』
突然の奇襲を前に次の一手を踏み出せない俺達に対して、追い打ちをかけるようにして多くの建物が崩れおち、中から更に追加で亡霊が集団となって姿を現わす。
「……どうやら、二体では済まないようですね」
『仕方ないな』
俺とシロさん、そしてラストで互いに死角をカバーするような形で一カ所に集まり、周囲に漂う亡霊の群れを相手に僅かな隙を見いだそうとする。
「それで、どう切り抜けましょうか?」
『別にどうとでもなるだろう。レベル20の雑兵が、レベル100の亡霊に変わっただけだ』
「それってかなり変わっているような気がするんですが……まあ、いいでしょう」




