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引退していたVRMMOの続編が出るらしいので、俺は最強の“元”刀王として、データを引き継いで復帰することになりました  作者: ふくあき
献身の章 ~レクイエム~

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第六節 息つく暇 2話目

「ここが町一番の市場、ザール市場だ。街の中でも一番活気づいた場所だ」


 そうしてジェイコブが指さす先には、確かに今までで一番行き交う人々が多い市場が広がっていた。


「ありとあらゆる品物がここに集まっている。食料から生活用品、雑貨、武器防具、その他色々とな」

「あぁー! 確かにここで食べ歩きもいいですね!」

「……まあアイゼはさておき、食べ歩きもここでは悪くない楽しみ方だ」

『そうか。ならば折角だ。色々とこの地の名産品を見ていこう』


 市場をしばらく歩いていたところ、この地では洋菓子が有名なのか、様々な名前のチョコレートやキャラメルといったものが売られている様子。


「甘いものっていいですよねー、食べているだけで幸せになれるというか――」

「お前は食事時いつもにこやかだろう」

「そ、そんな言い方しないでくださいよジェイコブさぁん!」


 こうして聞いている限りでは普通のギルドの同僚同士の他愛のない会話。しかしこの二人はいずれも剣に宿る意思であり、導王にとっての暴力装置を自負する存在。


『……同じ七人衆同士、仲がいいんだな』

「仲がいい、というよりも同じ志の下集っているからな。自然と結束も強くなる」

『それは何よりだ。ギルド内でも意見の食い違いがあれど、向いている方向は一緒の方がいいからな』


 俺達だってそうだ。俺とシロさん、そしてベスやグスタフさんの間でもでやり方に多少の違いがあるが、目的はベヨシュタットの王の下で大陸を統一し、ゲームをクリアするというのが目的で動いている。

 ――俺に限っては、最近その目的にブレが生じているかもしれないが。

 そうして他愛の話をしつつ、後ろの様子が気になった俺はふと振り返る。するとそこには事前に渡していた小遣いでちょっとした甘味を買って楽しむラストの姿と、その十倍以上の量を買い占めているのか、いつのまにか両手いっぱいに紙袋を持ちながらドーナツを頬張っているアイゼの姿があった。


『……そんなに買って大丈夫なのか?』

「大丈夫ですよー! これ全部、市場の皆さんがタダで下さってくれるんですよ!」

「まったく、簡単に餌付けされる犬か貴様は……」


 ジェイコブがやれやれといった様子で首を横に振っているが、確かにあれは近所のおばちゃんから飴を貰って喜んでいる子どもとそう変わらないように見える。

 後ろのあれやこれやといった様子はさておき、歩いている内に俺達は市場の通路から広い空間に足を踏み入れることになる。


『……あれはなんだ?』


 街の広場では催し物が行われているようで、多くの市民が見物の為に集まり、周りを囲むようにして壁を作り上げている。


「あれは最近この首都に来たサーカス団だそうだ。心配しなくとも、大いなる主の占いにはあれは無害だと出ているからな」


 壁を越えて見られるのは、宙に放り投げられる松明やボール。それらを見る限りだと、確かに大道芸人がジャグリングをしているのが伺える。

 だが本当に警戒しなくていいのだろうか。前作だとああして国の内部に忍び込んで工作をした輩もいたと記憶しているが。


『よほど占いが信用できるみたいだな。俺達の国だったら真っ先に検問に引っかかって身体検査の対象になるが』

「そのような万が一があったとしても、すぐに鎮圧できるように見張りは付けてある。あそこを見ろ」


 そうしてジェイコブが指をさす先――とある家屋の屋根の上には、腰の後ろにショーテルを隠し持った少年(ケファロ)の姿が見える。

 向こうもこちらの姿を見つけたのか一瞬目が合うも、それ以上は興味なしといった様子で再びサーカス団の方へと見張りに目を光らせている。


『あいつか……』

「歳は一番若いが、鼻の効くやつだ。善悪を見定めるのは奴が一番得意といえるだろう」

『その割には俺の態度が気に入らなかったのか、導王の前だというのに刃を向けてきたが』

「あれは貴様の態度が悪いのにも原因がある。見ての通り、若い分未熟なところもあるからな」


 未熟さでいえばお前もあんまり変わらない気がするが――とまで言ってしまえばまた話がこじれそうなので俺はそれ以上何も言わずに口を閉じていた。

 しかしそうして俺が薄々思っていたことを、アイゼが無神経にも口走ってしまう。


「それを言うなら、ジェイコブさんもあまり人のこと言えないじゃないですか」

「何だと?」

「だって私一人で素直に大いなる主の御前までお連れできたところを、ジェイコブさんが早とちりして剣を抜いてしまったせいで話がこじれて――」

「ぐっ、その話はもうやめろ!」


 自身の汚点を蒸し返されたことで気恥ずかしさを覚えたのか、ジェイコブは足早にサーカス団のいる広場を後にしていった。

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