第五節 それぞれに示された道 4話目
「――ではそのテオリ=カイスという者が、この現状を作るきっかけとなったと?」
「そのようです」
「だったらさっさと殺しに行こうじゃなぁい? それで全部解決でしょぉ?」
「そういきたいところでしょうが、残念ながら今は身を隠しているようです」
脚をぶらぶらとしながら「えぇー、つまんなぁーい」と愚痴を吐くベスだったが、確かにそいつを始末できない現状、やれることは少ない。
そして俺はここで一つの疑問を投げかける。
『率直に聞こう。“そいつはプレイヤーか?”』
俺の質問は単純明白で、尚且つ共同開発陣の計画を知っている俺とシロさんの間だからこそ二重の問いにできる。
『どうなんだ?』
「うーん……今のところは灰色としか言えないですね……」
「つまり奴さんの情報が不足していると」
「クロウさんの言う通り、そうなります。結構早い段階で地下に潜ったようですから。そしてテオリ=カイスの遺志を継ぐような形で表立って出てきた貴族の名が――」
――ビトレイヤ。つまりここからは俺も知っている話になってくる。
「彼が今から四十年前に神刃派閥というものを立ち上げ、貴族の間に広めていったそうです」
『そうして三代目国王の側近まで来たっていうことか?』
「いえ、直接的な関与はしていませんが、現在国王の側近としている男の腹心として動いているようですね」
側近については名前が判明していて、ローズルというらしい。逆に言うとそれ以外は一切判明しておらず、側近でありながら城からはよく姿を消すとのことだ。
『側近がプレイヤーの可能性は?』
「こちらの方は可能性が極めて高いかと。その根拠としてはこちらの動きを警戒しているのか、はたまた読んでいるのか、“殲滅し引き裂く剱”との接触を意識的に避けているようです。更に我々と繋がりのある二代目刀王、そしてクラディウス王子とも、同じ城内でありながら情報を漏らすようなこともしていないようでして」
つまりプレイヤー集団である俺達との敵対は実質的に確定ということか。それはそうと一切接触しないのはそれはそれで何か裏がありそうで怖いものがある。
「ビトレイヤについては貴族院所属の幹部がいますのでそれとなく探らせていますが……一番はアギレウス公により深く話を聞いた方がいいでしょうね」
『だろうな。何せ国近くの領地を捨てて辺境まで飛ぶことを望んだくらいだ、何かしら大きな問題を耳にしている可能性が高い』
現状やるべきこととしてはビトレイヤについて何かしら情報を収集し、首都で何をしようとしているのか、その目的を完全に特定すること。そして出来ればの話になるが、宣教師テオリ=カイス、あるいは側近のローズルの尻尾を掴む。ここまでいけばベヨシュタットを再び元の剣王の息子であるクラディウス王子にするための決起ができるだろう。
「となれば、我々プレイヤーの動きとしては大きく五つに分かれますかね」
シロさんによって提示された五つの選択肢。一つ目は首都への潜入調査。これは顔があまり割れていないメンバーがいいかもしれない。
「ならばそれがしが行こう。今までも首都を拠点にしている他のギルドと交流があったのだから、今更へたに疑われることもあるまい」
「ではこれはグスタフさんに。二つ目はチェーザムに領地替えしたアギレウス公への訪問ですが、これはボクが行きましょう。それとクロウさんも」
「俺もか?」
「ええ。場合によっては三つ目、四つ目の話に繋がってきますから」
一体どこまでリスクヘッジをしているのかは知らないが、二の矢三の矢どころか五の矢まで用意している時点で、実はかなりの綱渡りをしているのではないかと、シロさんの話を耳にしていた全員が気づき始める。
「三つ目と四つ目ですが、これは最悪の事態に備えての保険という意味合いが強いかと」
『最悪の事態?』
「はい。ことと次第によっては、我々は即座に敵対することになります」
――我々が心血を注いで忠義を尽くしてきた国、ベヨシュタットと。




