第五節 砂漠の境界線 9話目
「――それにしても、随分と迷惑をかけたみたいですね」
『迷惑かけた割にはこっちが話をしている間に宝箱をベスと裏で分けあってたでしょ」
「心配せずとも、後でジョージさんにも分配しますよ。今回のMVPですし」
「そういえば洗脳されてるとき、ジョージがちゃぁんとトドメを刺してくれたんでしょぉ? わ・た・し・に」
「私がとどめを刺してやりたかったが、気絶で済ませてやった。感謝しろ」
「えぇー、そんなー」
それまでの現実世界に即したビル街の景色が消えてゆくと、流砂に沈んだ地下墓地が一面に広がっている。
「さて、どうしますか?」
『ああ。それとグリードだが、ギルドの方で保護する予定だ』
「保護……? 運用ではなく?」
『ああ。とにかく本人から話を聞いた方が早いだろう』
そういって俺は、その場の説明を改めてグリードに任せることにした――
◆ ◆ ◆
「――成る程、そんなことが」
「もし本当だとしたら大変ねぇ、ラストも狙われるんじゃない?」
『じゃない、じゃなくて既に狙われている』
「ではどうしましょうか。ジェラスも同じ理由で狙われかねませんし」
『当面はレリアンの防衛、という名目で運用していくしかあるまい。奴らも降臨するにはある程度パターンがあるらしいからな』
恐らくは余計な被害が出ないようにという意味合いも含まれているのだろう。大規模に発展した街中ではなく、クエストなどに向かう時の道中や、あるいは街に出現するにしても防衛戦など、戦闘があり得る場面でしか基本的に出現する可能性はないとのこと。
「確かに七つの大罪を動かすなんて、そういったときくらいにしかあり得ませんからね」
『だからレリアンに置いておくか、俺みたいに近場の農村に待機させておいた方が今のところ安全だと思う』
「そうですね……私もしばらくはジェラスをレリアンのアジトの方に待機させておきましょうか」
ひとまずはこの状況を共有し、グリードが今後の行動において重要なキーパーソンになることも理解して貰えた。そして現時点での問題点だが――
『――ナックベアへの侵攻はどうするつもりだ? 偶然とはいえグリードを引き入れることはできたとして、そもそもこの人がザッハムに人を帰すつもりもないようだが……』
「帰すも何も、私が引き入れたプレイヤーは、皆平穏を望んでいる。それをわざわざこのような戦争の場に再び引き戻すつもりはない」
『かといって戦場にグリードもラストも連れて行こうものなら、オラクルが嗅ぎつけてくる可能性が極めて高い。対処できなくもないだろうが……』
「そうですね……」
そもそもナックベアと一戦構えると言ったのはシロさんなのだから、ここは意見を出して貰いたいところ。
「……ひとまず前線を見てから決めましょう。我々で押していけそうであるなら、我々も加勢して恩を売ります。もし無理そうであれば前線が押されたときのために、できる限りザッハムの防御を固める。これでどうでしょう」
『……そうだな。オラクルがいる限り、戦争をするにしても手早く終わらせる方がいい』
わざわざグリードとラストをレリアンに引かせるのも多少の時間がかかる。それよりも俺が二人をフォローしつつ立ち回った方が手早く済みそうだ。
「言っておくが、私は外ではさっきのような召喚術も使えない。ハッキリ言って何の使い物にもならんからな」
『分かっている。今回ラストとグリードは俺の近くにいてもらう。いざという時は籠鶴瓶を使ってでも守ってやる』
「あらジョージったらかっこいいこと言っちゃって」
ベスはクスクスと笑って茶化しているが、こっちは割と真剣なんだぞ?
『とにかくまずは、前線に向かう。今回はシロさんとベスがメインで前に出て、俺達でバックアップをする』
「それで行きましょう」
そうして俺達はザッハムのその先にある前線へと、向かっていくこととなった――




