第三節 立場の逆転 4話目
「……はぁ」
この男の売り込みに対して、なんとも遅れた返事をしてしまった自分がいる。だがそれくらいには突拍子もないアピールだったことは間違いない。
「では、もし気が変わってこの地下水道に入りたくなったら私を呼んでくれ」
「あ、ああ……」
そうして雇う雇わないの主導権すら握られてしまい、ただただあっけにとられる俺をその場において立ち去っていく。
「……何ですかあれは! 主様、まともに相手する必要などありません!」
『それもそうだな……』
だがあそこまでの自身の持ちよう、地下水道の攻略を以前に行ったことがあるのか?
だとするならば雇うだけの価値は十分にある。しかし単なる名声を挙げる為の馬鹿な売名行為ならば付き合う必要も無い。
そもそも前作で攻略した時も、このベルゴール市街地の地下水道は雇われの冒険者が多く居たっけか。確かその時も大半が道半ばで抹消されるか、あるいは途中で撤退して中途半端な報酬金を要求してくるか、その二択だったか。
「……話半分にしておくか」
それでももしかしたらという可能性を考えたが、それに頼るよりは自分とラストの二人でサクッと攻略してからの離脱を考えた方がまだ現実的だ。
「では主様、この後はどうしましょう」
『ひとまず身支度を済ませてから、明日から早速ダンジョンに潜る。【空間歪曲】さえ長持ちするなら内部で仮眠を取ることも可能だろうが、まず無理な話だ。短期決着で素早く攻略しよう』
「では、そのように」
こうしてこの日の残りを商店を渡り歩くことで物資調達を済ませながら、俺とラストはダンジョン攻略の為の計画を入念に練っていくこととなった。
◆ ◆ ◆
明朝、まだ人通りも少ない中で、俺とラストは例の入り口の前に立っている。
『……行くか』
「ええ、参りましょう」
扉をこじ開け、下へと降りていく。はしごに足をかける時に鳴る金属音が、早速眼下に犬を呼び寄せている。
「……やるしかないか」
俺ははしごに足をかけたまま、真下に向けて右手を柄に添えていた。




