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曾お爺様を負かしてから来て下さいませ。  作者: み〜さん


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曾お爺様が可愛すぎますわっ!

 






「やはり、馬鹿は馬鹿ですか。そうですか。」


 ディルヴァイスが大袈裟に溜息をついたんですけど!


 何故です⁈ なぜ私、侍従如きにお馬鹿呼ばわりされなくてはいけないんですのッ!


「ディルはそう言いますが、アレは酷いですよ。毎日二度も三度もマールを捕まえて、ある事ない事言っては、子爵令嬢と三文芝居を繰り広げだすんだ。見ていてイライラするよ。」


 リューの援護に、私も大きく頷いてアピールです!


「マティアスもあからさまなのよねぇ。自分の方から言い出すことができないから、こんな鬱陶しい嫌がらせするのよ。小さい男よねェ」


 パティも私の味方なんですから!


 胸を張って自慢げに侍従を見ると、鼻で笑われましたけど⁈なんて失礼な侍従でしょう!


「でも私は、アイラ・ヴェンガァ子爵令嬢がマティアス様を言葉巧みに誘導していらっしゃるのではと思っておりますの。もちろんマティアス様自身、アイラ様に踊ろされているとは微塵も感じてはいらっしゃらないでしょうけど。彼女、相当強かじゃなくて?」


 ニコリとするローズ様の笑みには意地悪な感じが含まれてるように見えるのは私だけ?


 でも、アイラ様っていつもマティアス様の後ろに隠れているでしょう?ローズ様が仰るような感じには見えないのですけど。


「まぁ、それは見てればね。僕も色々気になって調べてみたけど、ヴェンガァ子爵の先代が浪費家だったようで生活はとても余裕があるとは言えないようだよ。自分の娘が少しは見られる容姿ならば高く売り込みたいだろうね。幼少からそんなふうに言われて育ったんじゃないかな、令嬢も。」


 お顔を顰めたリューが大きく息を吐き出します。


 リューの言葉にう〜んと唸っていると、ローズ様がティーカップを私の前に差し出します。


「お茶、冷めましてよ。」


 ニッコリ微笑むローズ様は、私達に見せる優しいお顔です。先程の意地悪を含んだ笑みではありません。


「マールが子爵令嬢に同情する事はないわ。あの方はきっと、それが当たり前だと思っていらっしゃるんじゃないかしら。小さな頃から刷り込まれていればそうだわ。でもマールが令嬢と同じことはできないでしょう?えぇ、できるとは思えませんわね。そんな事ができるマールがまったく想像できませんもの。マールはいつだって草花にまみれ、小動物と戯れる姿こそ私達のマールですもの。令嬢を可哀想だなんて思うのはちょっと、差し出がましいのじゃないかしら。」


 草花にまみれてなんていつのお話ですか!ローズ様、意地悪ですか?


「あら、慰めているつもりなのだけど、私。」


 いえ!何か含みを持ったお顔をしていらっしゃいます!


「ですが、一度交わした婚約をそう簡単に破棄はできませんでしょう?それも家格が上の侯爵家に。」


 そこですはよね。ですから曾お爺様なんですのよ!


「いや、出来る。だから儂に手紙を出したのであろう?マール。」


 曾お爺様の大きな手が私の頭を優しく撫でます。


「はい。ハヤブサで三日あれば届くと伺いました!」


「そうか、そんな事も出来るようになったのだな。嬉しいような悲しいような、複雑な心境じゃわい。のう、ディルヴァイス。」


 目を少し潤ませ私を見る曾お爺様に、胸がキュ〜ンとなってしまいましたわ!なんて切なそうに私を見つめるのでしょう!可愛すぎますわッ!


「いえ、全く御前の心境に共感できませんね。なぜそうなるのかもわかりませんし、マール様も16歳でございます。できて当然では?」


 蔑む目で私や曾お爺様を見るなんて!侍従あるまじき!


「ディルヴァイス!貴様には血も涙もないのかっっ!」


「涙はともかく、血が無ければ今ここで御前の下らない哀愁に付き合って要られませんよ。」


「ディルヴァイス!それでも儂の侍従かっ!」


「そのようですね。甚だ遺憾ではございますが。」


「「ハイ!そぉーこぉーまぁーでッ!」」


 まぁ!さすが双子ですわ。息ピタリ。


 いつもはもっと白熱するのですが、やはりお疲れなのでしょうか?リューとパティのかけ声で終了です。


「で、マールは婚約破棄できるのですか?曾お爺様。」


 リューが眉間をモミモミしています。アラ?リューもお疲れなんですの?


「出来る。何故なら、この話はボンゴードル侯爵家からの立っての願いで纏めた婚約でなーーーごねたんだと。マールの父親、ダンドゥルグに何度も申し出たようだ。だが、一向に色よい返事が貰えないと、こちらに泣き付いて来た。儂が居ればそんな話一笑して取り成してなどせなんだ。だがーー丁度その頃この国を出ておってなぁ、馬鹿な孫が強引に通してしまいおった。戻って来た時には婚約は正式にとり成された後じゃった。」


 曾お爺様が、その当時の事を思い出すかのように、空を見つめます。


「儂はな、ボンゴードルが 悪いと思っておる訳ではないんじゃ。ただのぉ……」


「ボンゴードル現侯爵の奥方は確か、タスキール男爵の娘でございましたね。」


 ディルヴァイスの言うタスキール男爵とは?聞いた事がありませんが、どちら様でしょう。


「うむ、今はもうその家名は残ってはおらん。理由は言わんがな。ボンゴードルの奥方は本当であれば嫁ぐ事のできん上位の家に嫁いだ。身分の差がどのようなものか、分かるであろう?生半可な覚悟では到底飛び込めぬイバラの道じゃ。貴族社会は決して甘くないからのぉ。その苦労たるや、いかほどのものだったであろうのう。他の者に蔑まれないよう自分を律し、息子にも完璧であれと、それは厳しく育て上げたはずじゃ。」


 確かに、今思えばマティアス様のお母様は完璧だったように記憶しております。会ったのは初めてのご挨拶の時だと思います。それ以降お会いしておりませんけど。


「そんなギチギチした侯爵家へ、儂の可愛いマールをやるなど、どうして出来よう?マールはマールらしく在れる所へ嫁ぐのが一番じゃ。甘いと言われようが儂の目の黒い内は絶対に曲げん!そうダンドゥルグとも話は付いておる。」


 曾お爺様が私を熱く見つめて、大きく頷かれました。何と力強いのでしょう!素敵ですわっ!


「マティアス……だから、その反動であんなふうに?」


「だろうねェ。でもあの子爵令嬢では、侯爵家の門扉は開かないだろうねぇ。」


 パティとリューが難しいお顔のままお互いを見て首を傾げております。


「でも、開いたら面白いわよねェ。ふふふっ。」


 ローズ様はやはり笑顔でございます。今は意地悪な笑みですわ。


「では、どうされます?御前様。」


 溜息を吐きながら言いましたわね!この侍従!


「正式に破談にする為に場を設けてくれ。儂が出る。早急にな。」


 微温くなったお茶の入ったティーカップに口を付ける曾お爺様の後ろで、ディルヴァイスが姿勢を正して頭を恭しく下げると、


「 御意 」


 低い声で返事を返しましたの。


 いつもその姿勢でいれば曾お爺様の侍従ぽく見えますのに。


 残念な侍従ですこと。


沢山の方に読んで頂けて嬉しい反面、どうしましょうと思う今日この頃……。


毎日お届け出来る様に頑張ります。


読んで頂きまして、ありがとございました。

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