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能を見てきた(後編)

基本的にはこのエッセイは、一回で読みきりの予定なんだけど、あまりにも書きたい事が多かったので、前後編にした。ご了承されたし。


実は観世喜正さんが演者の中にいる、という事を全然、チェックしてなくて、その時は僕は本当に驚いたのだった。実は大分昔にNHKのテレビで能を見てた頃、観世喜正さんの動きが凄くて、よく見てたのだ。


前三人の仕舞も本当によかったが、喜正さんの動きが凄くて、一気に目が覚めた。僕は武術家なので武術的観点から能を見始めたのだが、本当に優れた能楽師の動きは、武道の達人の動きを思わせる。


僕の言ってることは別に無茶苦茶な事ではなく、剣術と能には明確な関係があるのだ。柳生新陰流の柳生但馬守宗矩は能に入れ込みすぎて沢庵和尚に注意されたし、今、岩波文庫で出ている柳生新陰流の伝書『兵法家伝書』は、金春流の金春七郎氏勝が授かったものだ。この金春七郎氏勝は随分、武芸が達者だったという話があり、柳生と金春流には明確な交流があったことが判るのである。


で、武術から能を見る僕を痺れさせてきた、そんな喜正さんの仕舞が終わってしまい、「ああ…もうちょっと見たかった」と思いつつも、最後の『船弁慶』が始まった。これは夢幻能とは全然違う構成で、前シテと後シテが、全然、違う人物である。


義経が頼朝に追われ、船で出港しようとしている。弁慶は、義経の恋人の静御前は、この先の旅には同行させない方がいいでしょうと提案し、義経も承諾する。それで弁慶は静にその事を伝えると、静は悲しみのなかで別れの舞を舞う。これが前段で、静の女舞がとても美しかった。


そして出港した義経一行だが、海で討伐した平家の知盛の亡霊が現れて、義経たちに襲いかかる。これが後シテで、武者の姿、そして薙刀を持っているのだ! そして、この薙刀の振り方が、実によかった! 


まず、薙刀の柄の際まで持ち、それを下段から振った時、シビれた! 下段からの振りって、床に当たってしまったりして難しいのだ。そして前手の薙刀の握りが、実に軽く、柔らかく持っており、素晴らしい手の内だと感心したのだ。


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