『眩(くらら)~北斎の娘~』を観た
NHKの正月特番で再放送したドラマで、元は2017年に放送したものだ。主役は宮崎あおいで、北斎の役は長塚京三さん。この長塚さんの北斎がよかったね! もう、髪がばらんばらんに乱れてて、見るからに奇人変人、頑固者、酔狂老人で素晴らしい人物造形だった。
宮崎あおいが演じるヒロインお栄は、女っぽいところがあまりない、絵を描くことだけが生きがいの、やさぐれた感じの女性像だった。ちょっとやさぐれてる感じの言葉使いなんだけど、宮崎あおいの素の品のよさがにじみ出てて、ちょっと可愛いすぎたかもしれない。けど、化粧っ気のない絵描き女を見事に演じ切ってて、なかなかよかった。
まあ、大河で蔦屋重三郎をやるので、同時代の北斎を取り上げたドラマをやったんだろうけど、本放映の時に見逃していたので面白く観た。松田龍平が演じる善次郎がよかったんだよな~。元、北斎の弟子で、お栄とよく口をきく仲。けど、お栄とは絵の事で話す間がらであって、男女の間じゃない。
…と、本人も思ってたんだけど、善次郎が結婚したとか知って密かに動揺する。女っぽくないのに、そういうところが可愛い。いいヒロインだよ。で、善次郎の家の火事以降、会わない日々が続くんだけど、不意に再会する。で、転んじゃうんだよな。善次郎には女房もいるのに、うっかり手ぇ出しちゃう。そこが大人のドラマなんですわ。
北斎が脳卒中で倒れて、もうダメか! って時に馬琴が現れる。馬琴と北斎は、以前、挿画のことでもめてから犬猿の仲。の、はずなんだけど、馬琴の「もう充分、養生したろう!」と一括されて、意識混濁だった北斎が復活する。この馬琴を野田秀樹さんがやってて、さすがの人物造形だった。
北斎が充分名人なのに、「まだ上手くなりてぇ」とか言う。80くらいなのに「あと五年あったら、俺は本物の絵が描ける」とかいう。ちなみにこれは実話。そういう執念を描いていて、お栄はその北斎の絵に涙するほど感動する。絵を描くってのは、それほどの事か…と思う。創作に賭ける情念に、うたれる作品。
途中のセリフもよかった。「どれだけ上手くても素人と玄人の絵は違う。玄人は恥を忍んで、絵を世の中に出す」と北斎が言う。あ~……シビれた。




