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『ぎんぎら弾正』 え? 今、これ……?


新聞小説の『裏切りの島で』が終わって、『ぎんぎら弾正』という作品が始まった。作は垣根涼介、という作家さん。寡聞にして知らなかった。だが、ウィキを読むと、サントリーミステリー大賞とか山本周五郎賞、はては直己賞を受賞している。凄い作家さんじゃん!


…は、いいのだけど。これ、主役が松永弾正こと久秀。戦国時代一の悪役だ。まあ、そういう人に敢えてスポットをあてるというのは、最近の流行りだ。信長いい人説とか、松平定信いい人説、吉良上野介いい人説とか、とにかく悪評高かった人を「いい人」にすると新説になるらしく、やたらこういう新説が出回るのだ。なかには首を傾げるものもある。


で、じゃあ松永弾正はどうかというと、案外、人気キャラ、といって言いだろうか。悪には悪の魅力があるので。悪かどうかも、ちょっと難しいが、松永弾正というのは『戦国時代の三代梟雄』に斎藤道三、宇喜多直家と並んで称される『下剋上』の象徴だ。三好家を裏切り、信長を裏切った。そんなところから「野心家」のイメージが広がったのだろう。


じゃあ、この『ぎんぎら弾正』は、どんな小説か? 久秀の幼い頃から始まっているので、戦国武将としての姿はまだ見えないが、ちょっと何を書こうといしているか、の片鱗はある。そのエピソードなのだが――


久秀が喧嘩をして、負けて泣いて帰って来る。そうすると母親が、土間から蹴とばすのだ。で、「勝つまでは二度と帰ってくるな」とか言うわけである。それで久秀は考える。藪に隠れて泣かした子が通りすぎたところを狙って、背中から体当りを喰らわせ転ばせる。


「卑怯だぞ!」とか言われながらも、久秀はそこに頭突きを喰らわせる。相手の歯で自分の額が切れて血が流れる。けど、そのまま頭突きを喰らわせて、相手が泣いて許しを乞い、久秀は勝利するのだ。そして帰ってきた久秀を、母親は褒める――という筋である。


……いや、どう? 僕は正直、ドン引きですけど。というか、このセンス、僕の親父とかが読んでた戦国ものの感性でしょ。垣根さんは66年生まれ。それにしてもねえ……ちょっと、今の時代でこれ? と思わざるを得なかった。


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