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徒然草にちなんで


最近の事だが、「家の傍で素振りしてたでしょ。いやあ、『能とつかんとする人』というのは、こういうものか、と感心したよ」と言われた。『能をつかんとする人』とは何かと思ったら、『徒然草』の一節なのだそうだ。


改めて調べてみると、第百五十段のくだりで、それは『芸能を身につけようとする人は、「うまくなったら表に出て、それまでは内々に稽古するのがいいだろう」と言う人があるようだが、そういう人は一芸を身につけることはない。下手な時にけなされ笑われても、その中で恥じることなく稽古する人が最終的には上手の位にたどり着くのだ』――というような一節なのだった。


まあ、僕が道端で素振りをしてたのは、庭で素振りをすると凄い蚊がやってくるから――というだけの理由なのだが、臆することなく稽古していて偉い、と褒められたという話である。が、僕はそれよりも『徒然草』のことがさらりと出てきたその人の教養に感心した。


そんな事があって数日、ラジオの『朗読の広場』という番組で、やはり『徒然草』を取り上げた回が放送された。それは三つの節を現代語訳して朗読していた。その最初の節は、『木登りの名人』(第百九段)だった。


木登りの名人が、弟子に木を登らせている。凄く高くて危ないところでは名人は黙っているが、大分降りてきて、もう飛び降りても大丈夫なくらいの高さになった時に、名人は声をかける。「どうして危ない時に声をかけないのか?」と訊ねると、「間違いはたやすいと思う時に起きる」と答えた、という話だ。


もう一つ。『丹波に出雲という所あり』(二百三十六段)。京都にも出雲大社の分社があって、聖海上人がそこを訪れた。するとそこの獅子と狛犬が、通常と異なり背中を向けて立っている。聖海上人は感動して涙を流しながら、「この獅子にはよほどの由来があるに違いない」と言って神官に訊ねた。すると神官は、「ああ、これは子供のいたずらですよ」と言って、元に戻した、という話だ。


最後は『大根侍』(六十八段)。九州に「大根は万病の薬だ」と信じて、毎朝二本も食べてる侍がいた。しかしある時、守ってる地が敵の襲撃を受けてしまう。その時、不意に二人の侍が現れて敵を撃退してくれた。「あなた方は誰でしょう?」と訊ねると、「我々は大根です」と答えた、という話だ。色々面白い。


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