62話「脅威! 進化する凶人王!!」
第四階層で既に他の魔王たちが、魔境ラスボスと戦っていてケリがついたみてーだ……。
やや人型っぽい鳥の魔王だ。赤いヒゲモジャモジャのオジサンの顔面に鋭く尖ったクチバシ。頭上に赤いトサカ。白毛に覆われた筋肉質の五メートル強の大柄な体躯。鱗で覆う二本足には鋭い鉤爪。尾っぽはススキみたいな形状。背中に翼。
あいつが倒したみてーだ!
「あやつは! “獄鳥の魔王”チバード!! 魔界のとある空を支配しているという魔王。多くの鳥の魔族を従えていて大所帯の勢力で有名だ」
確かにセキセイインコっぽい魔族ばっかりの部下が大勢だ。頭がインコまんまで、人型のムキムキな体に鳥の手足で背中に翼。
なんか「ぽ! ぽぽ! ぽっ!」とか鳴いている。
シュールな光景だが、これほど同じような形状の魔族が多いとは!? 亜魔族?
《……従属させた魔族を自分が好むセキセイインコに作り変える事で有名だ》
「ええっ!?」
ソネラスが困った顔で教えてくれた。
つーかさ、異世界でセキセイインコってフツーなの?
「偏屈した好みね……」
「ポッポだ──────────!!」
ヤマミも困惑顔だ。逆にはしゃぐクックさん。
そういやインコってそんな鳴き声するっけ? むしろハトじゃね?
地球のセキセイインコを誤解したまま作り変えてるんじゃ……??
「カーッカカカカッ!! これで魔境の秘宝は我が手にッ!!」
チバードは両手を振り上げて勝ち誇る。それだけでビリビリと物凄い威圧が響いてくる。
あんな魔王だが、とてつもない力を持っているのが感じられた。
「ふむ、“暴焔の魔王”ジャオガ殿もたどり着いていたのだな……」
その声に振り向くと“邪淵海の魔王”シャンオールの勢力がやってきていた。
魔境の入口で並んでた時に見かけたヤツだ。クジラを模した巨大な太った魔王。
周囲には魚系のモンスターや魔族たちがぞろぞろいる。
配下もただならぬ威圧があり、いずれも威力値五〇〇〇〇以上だ。ティオス先輩が何十人もいるようなもんか。
「おやおや“獄鳥の魔王”チバード殿に先を取られたのう」
今度は“死霊の魔王”ネクロレース勢力だ。
豪勢なマントを羽織った骸骨の魔王で三メートル強の大男。そしてアンデットや幽霊系のモンスターと魔族がぞろぞろいる。
この第四階層にまでたどり着くほどの猛者だらけとは!
「……ラスボス倒したら、オレん時のように魔境消えるんだよな? パーッて光が……」
「待て!」
声を上げたジャオガさんが険しい顔を見せる。
オレは不穏な空気を感じ、すかさず『察知』を広げた。まだ向こうの宇宙都市で凶人王が蹲っているのが感触できた。動かないみてーだ。
そこへ感触を絞ろうとするとジャオガさんが「止めろッ!!」と怒鳴ってきて、ビクッとして感触領域を解いてしまう。
「な、なんだよ? 悪欲探知しようと思ってたのに!」
「……しなくとも深い悪意が滲み出てるほどだ。マトモに感触すると失神するぞ」
ヤマミがオレの肩に手を置いて「あれ見て」と指差してくる。
ズズズズズズズズズ…………!
周囲の空気が怯えているかのような不穏な気配。
背筋がゾクゾクと凍りつくような威圧が膨れ上がっているのが分かる。まだ生きてる!
「ああ!? まだ生きてんのかよっ!! 総攻撃受けたはずだろっ!?」
チバードはイラついた様子を見せる。配下のセキセイインコ魔族は「ぽ、ぽ、ぽ、ぽ!」と首をカクカクさせてうろたえてるような雰囲気を見せる。
《“獄鳥の魔王”チバード殿! どういう状況か説明いただけないか?》
《ん? ああ“暴焔の魔王”ジャオガ殿か! それに“魔戦卿”シルビュードまで! 他にもぞろぞろと! まぁいい、実はな……》
なんかこちらをチラッと一瞥してきたが気にせず、話してくれた。
この魔境最大のラスボス『大厄災の凶人王』は最初は脳ミソみてーな姿ではなかったらしい。
満月のような卵だったものだったのが次はクリオネみたいな姿になって、今のような脳ミソへと三段階変身していったらしい。
いくら攻撃を加えてもダメージらしいダメージにならず、それどころか吸収するように力を増していったらしい。
「いや! さっき血ィ吐いて吹っ飛んだじゃん!?」
《青いな! 妖精の白騎士!! モンスターの中には進化する厄介なタイプも存在しているのだ!》
まさかオレの事を知ってるとは思わなかった。
チバードの事知らねーのにな。やはり魔境クリアしたから有名になったせい??
なんか周囲の魔族たちがザワザワしてきてる。
《妖精の白騎士!! すぐ構えておけッ!! 来るぞッ!!》
「……は、はい!」
ズン! 重々しい黒い威圧が第四階層を席巻した!!
悪欲探知しなくとも、あそこから黒い靄みたいなものが溢れ出ている。悪意で塗れている。吐き気がするほど酷い怖気がする。ゾゾゾゾ……!
これだけ魔王たちがいるにも関わらず、獲物に歓喜するようなドロドロとした下卑た感情が滲み出ている。
感触もしてねぇのに凄まじい悪意……ッ!
ズズズズズズズズズズズズズズ…………!!
「やぁ! 新規の悪魔どももお揃いでようこそ!」
黒い靄から姿を現した白い赤子の姿をしたナニカ。
三頭身ぐらいで可愛い風貌なのだが、脳ミソん時よりでっかくなっている。背中からは天使のような真っ白な翼がバサッと。頭上には輪っか。人形のような虚無そうな両目には狂気を孕んでいる。
にぃい、不気味に口角を上げて笑う。
「これから神聖なる神に代わって正義の裁きを執り行います!」
「ほざけっ!!」
セキセイインコ魔族が揃って魔弾を撃ち、膨大な弾幕が覆いかぶさってくる。
大爆発が連鎖し、大気を震わせるほど轟音が鳴り響いてくる。それでも、魔弾をこれでもかと言わんばかりに連射し続ける。
インコみてーな割に強い魔族たちの弾幕は、第四階層をも踏破したほどだと頷ける威力だ。
ドドッドッドドドドッドッドッドドドドドドドドン!!!
ますます広がる爆煙と吹き荒れる烈風。
響いてくる空震でビリビリと肌に響いてくる。くっ!
「ボーッとしとらんで、さっさと妖精王にならんかッ!! 殺られるぞッ!!」
「あ、は、はいっ!!」
ジャオガさんが慌てたように言ってきたので、オレたちは急いでフォースを噴き上げて足元に花畑を広げ羽を八枚展開し、後ろ髪を伸ばす。
臨戦態勢とヤマミとクックさんも妖精王状態で身構えた。
更にシルビュードさんたちも配下も気力を漲らせていく。タッドも鬼神のツノを生やして魔剣で構える。
それぞれ魔王勢力はいつでも戦えるぞってばかりに凄まじいフォースを漲らせていた。
「邪悪な者ども、我らが神の使徒である人類に歯向かった愚かさを悔いろ」
なんと数百体ものセキセイインコ魔族の首がスパパパパーンと飛ばされていた。
誰もが唖然とする間……。
断面からブシューと鮮血が噴き上げられる最中、凶人王はチバードの前にいた。
速い!!!!
「愚かな悪魔どもに裁きという慈悲を……」
「こ、この野郎ォォォォォッ!!」
チバードは凄まじいフォースを噴き上げて、荒れ狂う激流を纏う豪腕を振るう。
──その豪腕だけがちぎれ宙を舞う。
既に凶人王は手刀を振り下ろしていた。
呆然とするチバード。遅れて断面から鮮血がドバッと吹き出す。そして凶人王の拳がみぞおちを穿つ。ズン!
見開き「ウゴガッ!!」と血を吐きながら超高速で吹っ飛び、遥か向こうの宇宙都市に激突して煙幕が噴き上げられた。ドン!
「正義の裁きを受けたまえ!」
更に凶人王は掌を向け、背中の天使の羽から光の飛礫が無数と零れ出す。それらは無数の光線に軌跡を描いて、数百もの爆発球を巻き起こし、チバードごと宇宙都市を跡形もなく押し流す。
ズアアアアアアアアア……ッッ!!
まるで惑星が爆発したかのような眩い爆発の余韻が広がっていく。そして高熱を伴って吹き荒れる凄まじい烈風。ビリビリと響いてくる衝撃。
恐ろしく圧倒的な破壊力にオレも誰もが畏怖させられた。
「なに…………これ…………!?」
「こんなの!? あ、ありえないわよッ!!」
「…………世界、滅ぼす、力!」
あっという間に“獄鳥の魔王”ら勢力を消し飛ばしてしまい、戦慄に震えた。
ぎょろりとこちらへ振り向いてくる。ゾッと背筋に悪寒!
【大厄災の凶人王Ver4】(人族)
威力値:1160060
Ver3から進化した姿。3m強の真っ白い三頭身の赤子のような風貌。背中から天使のような翼。頭上には輪っかが浮いている。自分を神の使徒と思い込んでいる狂信者。
神聖なる正義の裁きと正当化して容赦なく殺戮する。圧倒的なその力は世界をも左右するほど。大魔王級。
「次はどいつから討伐してくれようか?」
狂気孕む赤子の顔、血に濡れた手をぺろりと舐める。
あとがき雑談w
チバード「我が下僕になれば、以下のような恩恵を受ける事ができるぞ」
①可愛いセキセイインコの姿になる。(インコ男になるとは言っていない)
②鳥獣魔族/風属性/飛行/地属性耐性など付与。(奴隷も付与されるとは言っていない)
③共通スキル『思念通話』会得。(ボスに思考が筒抜けになるとは言っていない)
④やりがいがある快適な職場。(給料出るとは言っていない)
⑤食うに困らない食堂。(全て種子だとは言っていない)
⑥快適なハウスを提供。(鳥かごとは言っていない)
⑦種族を問わず強くなれる。(インコ男として、とは言っていない)
⑧犯罪者も受け入れられて更生率100%再犯0%。(洗脳だとは言っていない)
インコ魔族A「ぽ!」
インコ魔族B「ぽぽ!」
インコ魔族C「ぽっぽ!」
インコ魔族D「ぽぽぽ!」
チバード「喜んでおるぞ。君も入ってみないかね? カッカカカカ」
次話『全滅の危機……!?』




