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200話「また新たな異世界へ!」

『終幕の決戦場』とかいう魔神(マシン)との大会から七年後────!



 光のライトミア王国はいつもののように明るく賑わっていた。

 一七歳になったウイルは更に才能を伸ばして、誰もが認める神絵師になっていた。

 その成長した姿は、マリシャスが特典で大人状態になっていたのとそっくりだ。

 だが、かつての冷酷な表情ではなく、優しくて穏やかな表情になっている。


「……あれから、もう七年か」


 金属人間ローワはサッサッサッと俊敏に通り過ぎていった。

 運搬なら任せろ、との事で見逃されて真面目に働いているようだった。

 そんな時、通りかかった“森の魔女”リエーラはウイルを見かけると、ニッコリ微笑んできた。


「あらぁ……、四年前の国際天覧武術大会を優勝したナッセの息子さんじゃないかえ。いつも凄い絵を見せさせてもらってるよぉ」

「もういいよ。そういうの会うたびに言わなくても……」


 ウイルは苦笑いする。


 とは言え、確かに十年ごとに開催する大きな大会は各国で賑わうほどのものだった。

 当時、ウイルも正直興奮していた。

 結果としてはライトミア王国に超戦力が集中してたのもあって優勝までいった。

 ティオス騎士団が五輝騎士(シャイン・ファイブ)より数倍強いし、騎士として勝手に登録されてたナッセもいたから負ける要素が皆無。

 それでも優勝したのは飛び上がるほど嬉しかったんだ……。


「リエーラ婆さん、またチキューへ?」

「あそこは美味しいモン多いからねぇ。飽きないわよぉ」

「クック姉さんには?」

「ついさっき家に寄ったわよぉ。だからもういいわぁ」


 リエーラはこの国を経由して、チキューへの『洞窟(ダンジョン)』へ行く事があるようだ。

 婆さんは「またねぇ」と手を振って去っていった……。



「ウイルー!」

「あ! トゥフちゃん!?」


 ピンクのロングで丸い目の可愛らしい美少女が手を振ってやってきた。

 胸も膨らんでて魅惑的な体つき。ウイルは内心ドキドキしている。


「ウイルのお父さん、また出かけるんだってね」

「あーそうだよ」


 ウイルはゲンナリとする。トゥフはうふふと笑う。


「ウチにアバター任せするの、どうよ?」

「本物そっくりの『分霊(スクナビコナ)』なんでしょ?」

「分かってるんだけどモヤッとしてるんだよ。どっちも本物なんだけどな。せっかく双子の子どもいるのにさ」


 五年前に産まれたナッセとヤマミの子どもは双子だった。

 銀と黒が半々の珍しい髪の色で、二人で左右対称。

 男の子のクロラは右目に魔眼、女の子のホムエは左目に魔眼。五歳ながら才覚があるようだ。


「やっぱやってるな」


 家へ着くと、ホムエとナッセが木刀を手に向かい合っていた。


流星進撃(メテオラン)ッ!! 五連星──ッ!!」


 ホムエは地を蹴って、瞬時にナッセへ瞬間連撃を叩き込むが、一切を(さば)かれる!

 それでも空中に星の手裏剣を足場に、空中を飛び跳ねてかく乱! 四方八方からナッセへ剣戟を食らわすが、ことごとくパリィで弾かれる!


「なかなかやるなぞー!」

「くっ!」


 ムキになって、なおも飛びかかるホムエを相手にナッセはウイルへ振り向く。


「おー、帰ってきたかー。おかえり」

「ただいま、トーサン……」

「お邪魔します」

「ああ。トゥフちゃんも、ゆっくりしてってな」


 ウイルはトゥフと一緒に家へ上がっていった。

 なおも外からガガガガッと激突音が響いてくる。


「いつも?」

「毎日するんだよ。でも妹すげぇ強いぞ。威力値三万超えてるから」

「ふひゃー」


 とは言ってもナッセとヤマミは今でも厳しい修行を繰り返してて、今じゃ威力値七〇万だ。変身すれば二一〇万……。

 どこまで行けば気が済むんだよってウイルは呆れている。


「あいつら飽きねぇなって思う」

「あはは……」

「ちなみに今は封印の『刻印(エンチャント)』でセーブしてて一四万に抑えてる」

「それでも充分強いよね」


 テレビがある広間ではクックさんとクロラがゲームしていた。その後ろで運命の鍵ことヒカリが寝そべった姿勢のまま浮いて、お菓子をバリバリ食ってる。

 ホムエが剣の才能があるなら、クロラは魔法の才能がある。


「遊んでるけど、時々クック姉さんと特訓もするから妹と同じくらい強いぞ」


 ズズズズズズズ……、クロラは魔眼を使って黒渦を発生させるが、クックさんがガシッと捕まえた。


「勝ち逃げだめー! 時空間転移で逃げるのだめー!」

「ちぇー」


 トゥフはビックリする。


「あの年で時空間魔法できるの凄いだろ? カーサンほどじゃないけどな」

「充分すごすぎだよぉ……」


 ウイルの部屋で二人きりになると、一緒に課題を済ませていく。

 しばしカリカリ書いていって、一息をつくとちょうどいいタイミングでヤマミがジュースとデザートをトレイで運んできた。


「おつかれ。根を詰めすぎるとヘバるわよ」


 にっこり笑顔。もうすっかり母である。

 ヤマミがいなくなった後、ジュースを飲んで安堵した。


「ねぇ、お祖父(じい)さんとお祖母(ばあ)さん……いないね?」

「五年前までは一緒に暮らしてたけど、水のブルークア王国でチヨ叔母(おば)さんと一緒に暮らしてるよ。そういや言ってなかったか?」

「聞いてないよー」

「まぁ、でも一ヶ月ごとに三日二泊で来るからなぁ」

「そっかぁ……」


 大会の後、二年間はナッセとヤマミと一緒に暮らしていた。

 もちろんウイル、クックさんも含めた大所帯。

 しかし、いつまでもナッセを甘やかしてもダメだからと水の国へ引っ越した。


「子どもはいつかは巣立ちして自立する。そして親も子離れしなければならない。永遠はないから、と」

「永遠はない……」

「ああ。人間は永遠に生きられない。お祖父(じい)さんもお祖母(ばあ)さんも、いつかは天寿を全うする。トーサンと別れる日は必ずくる」


 ウイルはかつてマリシャスとして『どうせ我が神生は永遠だ』とかのたまった事が黒歴史になっていた。

 時々思い出しては(もだ)えたりする。うあああああ!


「俺もいつかは死ぬ。それでいい。それまで充実できるよう生きていくさ」

「うん。そうだね。一緒に頑張ろう」

「あ……うん……」ドキドキ!


 ──だからかな、トーサンには最大限に感謝しているんだ。




 それから二ヶ月後、オレたちはまた旅立つ事になった────!


「よし! ヤマミいつでも行けっぞ!」

「もう、ナッセそんな張り切っちゃって……」


 魔法膜を帯びて頑強に(こしら)えた壁に四方を囲まれた広大な地下室。

 そこではストーンヘンジを彷彿(ほうふつ)させる円陣状に並ぶ石版が立っていて、中心で魔法陣が灯っていた。

 元はロゼアット帝国にあった『次元扉(ジゲート)』を、ライトミア王城の新たに作った地下室へ移動させていたのだ。


 ちな帝国では、生き返ったボゲーが皇帝になっている。

 ボゲーの仲間たちで精鋭騎士。

 新たに改革されたロゼアット帝国は徐々に名誉回復してきている、ってのは閑話休題(かんわきゅうだい)ぞ。


「しかし『次元扉(ジゲート)』を使うの初めてだなぞ」


 極秘機密なので、パヤッチの星獣に頼んで小型の星獣を数体警備に配置してもらったから大丈夫。

 普通なら使用厳禁なのだが、特別にオレたちだけは許してもらえた。


 そしてオルキガ王様に謁見して許可をもらう際に!


「確かにお主らがこの世界で最強クラスとは言え、未知の世界には何があるか分からんからな。気をつけていくのだぞ」


 と柔らかい笑みで許してくれた。

 って事で、ここの異世界とは別の異世界へ行けるぞ!


「四年前も旅行してたがなァ……」

「うん。埋め合わせできたけど、今度は新しい異世界で冒険だねー」

「あァ……」


 なんとアクトもリョーコも一緒だぞ。

 ちなみに運命の鍵ことヒカリはオレの中。ワクワクしているのが伝わってくる。


「待てー! 俺も行くぞぉぉぉッ!」


 ティオス先輩が慌てて来るが、他の騎士たちに捕まってジタバタもがく。


「いや、ダメだろっ!」

「行かせんぞ!」

「こっちの仕事増えるじゃねーか!」

「このバカ止めろー!」

「ただでさえアーフォスさん引退しちまったからなっ!」


 そう、代わりにティオス先輩が五輝騎士(シャイン・ファイブ)入りしたぞ。


「離せぇぇ────っ!!」

「「「ダメだっ!!」」」


 ドッタンバッタン!!


「たはは……」


 王国騎士として異世界行くのは許されていない。それでなくても国中を駆け回っているのに目を瞑ってくれてるからなー。

 すると床に闇の沼が広がってきて、数人の人影がぬうっと出てくる。


 なんとチヨ叔母(おば)さんと父パヤッチと母マロハーである。


「もう許可はとった。オレも一緒に行ってもいいだろ?」

「うん! 実は私も一緒に行きたかったんだよ」

「父さん!? 母さんまで!? 叔母(おば)さんまで!?」


「私は行かないよ。アメヤちゃん寂しがるからねぇ」


 チヨ叔母(おば)さんの時空間転移(トビーの能力そのまま使える)で両親まで来ちゃったぞ!?


「ええ!? 魔神(マシン)の大会後から数年に何回か世界旅行して満足したんじゃ??」


 しかしパヤッチはニッと笑う。マロハーはニッコリ。


「それはそれ。これはこれだ」

「うふふ、今回は純粋に冒険魂が騒いてるんだよ」

「そういう事だ。血は争えないな」


 まだまだ若いからなぁ。

 オレ、ヤマミ、アクト、リョーコ、パヤッチ、マロハーのパーティーになったぞ。

 ……つーかまだ来ないな?



「ナッセ!」


 振り向くとセロス夫妻と、六歳になる息子がいた。

 七年前に『綺羅星亭』の看板娘ロゼと結婚して子持ちになってるぞ。

 しかも妻の腹が膨れているので弟か妹か産まれるっぽいな。


「相変わらず冒険好きだな。気をつけていけよ。いつでも待ってるからな」

「うむ。同じくだ」


 なんとジャオガさん及び四魔将まで来ていたぞ!

 タッド来ていないかと警戒して見渡すがいない事にホッとする。

 ちなみに勇者パーティーとしてのモリッカとメーミとファリアもいるぞ。

 あと……他にも。


「先輩! 黙って行くなんてひどいです!」

「キャハ! しょーがないニャン! ワタシら王国の宮廷魔道士にされて不自由(かな)ピー!」


 むくれるクーレロ、泣き真似するアイミ。


「僕らは元から王国騎士だからな」

「あーもー不自由つらいよー」


 真面目なシトリとは対照的に、パーズはため息をついて項垂(うなだ)れる。

 マイシはぶっきらぼうな感じで腕組みしているが、右手で人差し指と薬指を立ててフッと柔らかく笑っていた。

 不器用だが彼女らしい挨拶だ。


 今でも全くの互角で勝敗も五分と五分だし、いつか決着つけに帰るからな!



 トトトトトトトトトトッ!


 走って来る音が近いてくる。ようやくか。寝坊してたもんな。


「うにゃー! 待って待ってー!」


 なんとクックさんが入口から飛び出して、ダンッと近くへ着地。

 はぁはぁ息を切らしていた。


「おはよう。ゆっくり眠れたかぞ?」

「むー置いていく気だったなー! うにきー!」

「昨日、遅刻厳禁ってたでしょ?」


 ヤマミはため息。


「トーサン、カーサン、子どもは俺とアバターと一緒にやっていくから大丈夫だろ。あと土産(みやげ)忘れんなよ?」

「ああ。すまねぇ」


 やれやれと言わんばかりのウイル。

 ホムエとクロラは「一緒に行くー」って言い出しかねんから、アバターのオレとヤマミと一緒に家にいる。

 まだ幼すぎるから仕方ないけど、もう少し大きくなったら連れて行くからな。


「でも二人に懐かれているクックさんがいなくなるのは困るなぞ」

「しょうがないわね」


 ヤマミは『極星盤』を手に、ブラックローズ・アバターでもう一人のクックさんを召喚。

 思いっきり魔法力を使って精密に生成したから、本物と変わらないほど超クオリティだぞ。

 自給自足タイプだから、維持コストを払い続ける必要がない。


「七年間貯めたこれ……。いざという時に役に立つわね」


 というワケで本物そっくりのクックさんはウイルへ戻っていった。


「……ナッセさん、気をつけてくれ」

「ああ。キラも元気でなー」


 かつては悪魔の教皇だったキラリストも今ではドカタの上司だ。

 教皇だった頃はパワハラしてたが、今では全くの正反対で人望が厚いぞ。

 生き返ったテンチュとボホモはもちろん、かつての部下とも仲直りして人間関係は良好なものになっていた。

 ……ただ、最後まで悪者だったナウォキは獄界オンラインへ堕ちてしまった。みんなハッピーになれるワケじゃないのがやるせない。


 ウイルは清々しい笑みでオレに手を振る。


「いってこいよ!」

「おう! いってくるぞ! 息子ウイル!」

「ああ!」


 かつては世界を混乱に陥れた大災厄の円環王マリシャスだったが、生まれ変わったウイルは本当にいい子になった。

 血は繋がってないが、紛れもなく親子として(きずな)は繋がっている。

 これまでも、そしてこれからも……。


「さぁ行っくぞー!」


 オレたちはウキウキしながら『次元扉(ジゲート)』へと歩んでいく。

 魔法陣へ踏み入れると、シュワーンとトンネルのような異空間に入っていって、奥へ奥へと潜るように飛行し続けていた。すると途中からサラカートよエムネが浮かんできたぞ?

 一緒に並んでくる。


「サラ姉さん! エム姉さん!」


 残念ながら見送るだけに来ただけだ。

 星塔(スタワー)の管理者という誓約で魔女となった。故に、長い時間遠くまで離れる事は叶わない。


「もー、そんな顔しないでよー!」

「そうだよ……。ナッちゃん家族がみんな揃っていれば……私は安心できるよ……。それにね……」

「んふーふっ! どうせ妖精王としての生涯が始まったら、また一緒だもんねー!」

「そういう事だよ……。うふっ」


 ……そうだったな。

 人族としての天寿を全うしたら、次は『三途界域(アケロン・エリア)』へ暮らす事になる。


「ナッちゃん、もし何かあったら飛んでいくからねー」

「うふっ。マロ姉さん、パヤ兄さん……ナッちゃんを頼むね……」


「心配するな。前のようにはならんさ」「うん!」


 パヤッチの言葉に満足したのか、手を振りながらサラ姉さんとエム姉さんは薄ら消えていった。

 晴れ晴れとした気分で、奥行きの眩い光へ飛び込んでいった。




 たゆたう白い雲、グラデーションの青空、緑()(しげ)る山と森林……。


 そして風車の塔みたいな王城が、広大な都市の中心で(そび)えている。

 魔法の絨毯(じゅうたん)やらホウキやらで人々が飛び交っているほど賑やかだ。



「『大魔法世界アスール』へ、いらっしゃいなのですっ!」


 なんと、ここの『次元扉(ジゲート)』で迎えてくれたのはコハク!

 地球での人族の姿ではなく、ヨーカイ族としての異世界の姿だぞ。

 ツノが一対、長い銀髪を広げ、破けたようなギザギザ黒いマントで包む、五頭身の風貌だ。


「また会えて嬉しいのですっ! 今日はゆっくり『魔法都市エゼマギア』で泊まるのですーっ!」

「ひ、久しぶりだなぞ…。コハク」

「来るのを楽しみにしてたのですーっ!」


 相変わらず陽気な妖怪ことヨーカイだよなぁ……。


「なんにしても、全く未知の異世界に来たんだなー!」


 オレは口元に笑みが走り、目を(うる)ませて、視界に映る異世界に感激したぞ!


「よ────し!! ワクワクな冒険すっぞ────!!」

「「「イェ────────イ!!」」」


 オレ、ヤマミ、クックさん、アクト、リョーコは胸が弾んで飛び上がった!

 パヤッチはやれやれと肩を竦め、マロハーはくすくすと微笑んだ。

 運命の鍵ことヒカリもニッコリ。




 ……その頃、深淵の闇で邪神ヤミダークが赤く瞳をカッと輝かせた。

 ニイッとギザギザの歯を見せて不穏さを醸し出す。


《クックック! 大魔法世界アスールを我が手に……!》


 ズオオオオオオオオ……!!


 恐るべき邪神が大勢力を率いて忍び寄る……。




 ~第二部・完~

あとがき雑談w


作者「うお──────! やっと終わったあ────!!」スッキリ!


 というワケで完結です。長い間ご愛読いただき、誠にありがとうございます。

 最後まで応援してくださって大変感謝しております。

 二件レビュー書いてくれてすごく嬉しかったです。


 最後のアレで続きそうに見えますが、マジで完全完璧完遂完結です。



 次話『────────────』

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