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199話「大会終了後──! トビーの種明かし!」

 ついに魔神皇帝(マシンカイザー)ロゼアットと虚無の魔神エンプフィネス・マシンデウスを封印しきった!!

 魔神塔(マシンタワー)の上でオレは右腕で、ヤマミは左腕で、そろって拳を突き上げた!


「みんな────!! 勝ったぞ────────!!」


 やりきった、とオレたちはスッキリした笑顔で勝利宣言!

 


「「「どわああああああああああああああああああッ!!!」」」


 大会の行方に固唾を飲んで見守っていた観戦客は一斉に勝利の歓声を上げた!

 華やかな紙吹雪が舞い散り、各々喜びを分かち合った!

 そしてウイルは顔を(ほころ)ばせて涙がほおを伝う……。


「良かったな」

「うん!」


 優しい笑顔でキラリストはウイルの肩にポンと手を置く。


「例え、お前が()マリシャスだとしても気にしないさ」


 何気なく言われてウイルは「え!?」と見開く。

 キラリストはほくそ笑んで「バレてないと思ったか?」とウイルの背中をポンポン叩く。

 ウイルは「えー……」と肩を落とす。


 だが、もう隠さなくていいんだなと安堵もあった────……。





 疲れ果てたオレはヤマミに肩を貸してもらって、なんとか立っていた。

 パヤッチもマロハーも満面の笑顔で迎え入れる。


 ────すると!


「ひえっひえっひえっひえっ! 優勝おめでとうございま~~す!」


 不穏な雰囲気でトビーはニタニタ笑顔で拍手を繰り返していた。

 一歩一歩忍び寄るように近づいてきて、みなに緊張が走る。

 セロスは「くっ! 貴様……っ!」と聖剣で構えていく。しかしみんなは疲労困憊で満身創痍で、満足に戦える人はほとんどいない。


「うっふふふ! ダメですよ~~! もう戦えないのにムリしちゃあ~~!」


 まるで力尽きたオレたちを狙っていたかのように怪しい笑みを見せていく。

 そんな不穏な雰囲気を出すトビーに、オレは神妙な顔を見せる。


「もういいよ。チヨ叔母(おば)さん…………」


 オレの一言にトビーは見開く……。

 セロスは「なに!? 何を言っている……?」と戸惑う。

 パヤッチはオレの言葉に同意するようにコクリと(うなず)く。マロハーは悲しげ。

 サラ姉さんとエム姉さんは複雑な顔でムスッとしている。


「星獣を解放したのもヤツだ。そうしてくれなければオレもろとも悠久(ゆうきゅう)の時を過ごし続けていた」


 パヤッチは冷静にそう告げた。

 オレはヤマミに肩を貸してもらいながらゆっくりとトビーへ歩んでいく。


「ずっとずっと後悔し続けてさ……、自身を道化師と偽り、世界を巡ってオレたち家族を元通りにする方法を模索し続けてきただろ? もういい。もう終わったんだよ。ありがとう……」


 トビーはじんわり柔らかい顔にほぐれて涙ぐんでいく。

 するとパラパラと剥がれていって、チヨ叔母(おば)さんが姿を現していった……。


「まったく憎たらしいぐらい鋭いね。そのまま気づかなければ魔人になる誓約通りに私が存在消滅してたのにねぇ……」

「そんな事はさせねぇって! 家族だろ!」

「ああ……優しいまま強くなって……嬉しゅうございます……」


 ポロポロと泣き崩れていった……。

 オレとパヤッチは優しく笑む。サラカートとエムネは確執があっただけに複雑な表情をしていたが、ナッセ家族を元に戻そうと長年奔走してた事を思い、水に流す事にした。

 それがオレたち家族の幸せに繋がると信じて…………。


「ってか、多くの人死んだだろう! 魔神塔(マシンタワー)に吸い込まれて存在消滅し……」

「いや。だってこれ大会でしょ?」


 セロスが責任追及しようとするのを(さえぎ)って、オレはそう言ってみる。

 チヨ叔母(おば)さんは(うなず)く。

 パチンと指を鳴らすと、漆黒に染まっていた魔神塔(マシンタワー)は星屑を散らして星塔(スタワー)へ戻っていった。


「元々、あの星塔(スタワー)に封印されていた母さんを出す為に、敢えて永久不滅の魔神(マシン)デウスを復活させた。そして大会という“限定された戦場”に引き込む事で被害を最小限に抑え、かつ魔神(マシン)を逃さないようにした。その中でオレたちが頑張って魔神(マシン)デウスを永久封印できたって事だぞ」

「だが、その為の犠牲はあまりにも大きかった……」


 ギリッとセロスは歯軋(はぎし)り……!


「落ち着けよ。あくまで大会だってば」


 セロスは未だオレの言葉が飲み込めない。怪訝に眉を潜める。

 パシューッと星塔(スタワー)の頂上から流れ星が数多と飛び出してきて、それはゆっくりと大地に降りていくと徐々に人を象っていく。


 なんと、これまで死んでしまったはずの人々が現れた!?


「えっ? うそっ!?」

「ああ……ッ!?」

「死んだはずじゃ??」

「生き返った? 生き返ったのかーっ!?」


 ざわざわ各国の人たちは驚き戸惑っていく。

 そう、この大会で死んで魔神塔(マシンタワー)に吸い込まれた全ての人は一時的に保護されていただけなのだ。

 これは仮想対戦(バーチャルサバイバル)システムとほぼ変わらない。

 致命傷を負って棺桶化するのと同じように、魔神塔(マシンタワー)へ吸い込まれて抹消される演出をしていただけだった。


「ちょっと待て! 魔神(マシン)デウスの言ってた事は……!?」

「チヨ叔母(おば)さんの課した大会の誓約により、力尽きても存在抹消されずにゲーム的な墓地(セメタリー)で待機させられてたよ」


 すると御獣(ミケモ)界の神獣王トミナッユと“沈着の百獣長”レオナがやってくる。


「その通りなんですの……。戦いの行方を見ててハラハラしてたんですの」

「それはそうと今回の封印の為に『極大封印魔法陣(エクサシルア)』の妨害は正解でしたね。こっちで成立してしまったら先延ばしするだけでした」

「ですの! 『星塔(スタワー)』でなら永久に封印できますの!」


 大会序盤で究極の封印術を妨害されて魔神塔(マシンタワー)に抹消されたんだっけな。

 でも冷静なレオナは墓地(セメタリー)から戦況の行方を見て、こちらの事情を納得したみたいだ。


「それに、魔神(マシン)デウスに血縁者は存在しないので、核となる魔法陣を浮かび上がらせて入れ替えする事は不可能ですね」

「つまり二度と出られないって事か……」

「そうなんですの」


 セロスは息を呑む。そういう封印事情知らなかったっけな。

 チヨ叔母(おば)さんはオレの血を使って、星塔(スタワー)の核となる宝珠の封印魔法陣を浮かび上がらせて魔神(マシン)デウスの一部を入れたからこそだ。

 この成果により、永久不滅の魔神(マシン)デウスを完全封印する布石となった。


「じゃあ……大会で負けてたら?」


 チヨ叔母(おば)さんはフフッと笑う。


「あくまで仮想戦場での戦闘結果だからねぇ。魔神(マシン)デウス勢力が優勝という事で普通にリセットされるだけだからね」

「な?」


 オレは苦笑いでセロスに見やった。まだ疑り深い顔してる。


「……実はお前らグルだったんじゃないのか?」

「終わった今だから気づいたのよ」


 疑うセロスをヤマミが否定する。


「ホント! 負けたら全て終わるってガチで思ってたんだぞー!」


 オーバーに焦るリアクションを見せるオレに、セロスはジト目……。

 その視線をチヨ叔母(おば)さんに向ける。


「……なんで最初に言ってくれなかったんだ?」

「敵を騙すにはまず味方からっていうでしょ。それに魔神(マシン)デウスを封印するには本気で取り掛からないといけないでしょう? 元々はそれが最大目的なの」

「まぁ、最初に()()ってたしなぁ……」

「なんか()に落ちんがな」


 チヨ叔母(おば)さんは相変わらず策士だなと思う。

 オレが小さい頃に、手品でいつも騙される事で驚かされたんだよな。

 今回はそれを大きなスケールでやってただけで……。



《はっはっは! ようやった!》

《解放してくれてありがとう。ホッとしたわ》

《あの皇帝に操られて悔しかったから、胸がすく思いだったぞ》

《そうそう。スカッとしたわ》

《もう維持できなくなって、ほどなく我らは消えるが達者でな……》


 なんと五体の星獣がバイバイと手を振ってくれる。

 オレも笑顔で手を振った。

 それに満足したように安らいだ顔でボボボボンと霧散していった……。



「なぁ? サラ姉さん、エム姉さん」

「ん、なーに?」

「何かな……?」


 オレは『星塔(スタワー)』に振り向いて、頂上の輝きを見据える。

 主を失った魔神(マシン)デウスの瘴気の残滓(ざんし)を、正常化した『星塔(スタワー)』が吸い込んで浄化しきったからだ。


「今、お願い玉満タンになってるだろ?」

「うふっ。優勝したんだから……、願いは好きにしていいよ……」

「ナッちゃん、なんか願い事あるのー?」


「ああ。ちょっとな」


 オレはヤマミへ振り返る。するとなんか察してため息。

 甘いわね、って思ってそうだなぞ。





 ネガ濃度が高い地獄のような並行世界(パラレルワールド)……。

 ナッセが逆異世界転生して苦しまされた厳しい世界。

 とある高経済社会、ほとんどが夢も希望もない殺伐とした会社や工場。


 デウスは太った男。ロゼアットは痩せたヒゲオッサン。

 二人とも会社に勤務していた。


「残業九〇分やれる?」


 高圧的な上司に、デウスとロゼアットは萎縮(いしゅく)して「でも……」と拒否気味。


「やれるよな?」

「……はい」


 デウスは小心者で大人しく頭を下げる。

 魔神(マシン)の力も何もない、普通の非力な人間だからだ。


「チッ! ふざけんじゃねーぞ! やれるかボケ!」


 逆にロゼアットはプライドが高くて舌打ちして反抗すると、上司に「あ?」と(にら)まれる。


「もっぺん言ってみろ殺すぞ! あ? てめぇの代わりなど他にもいるんだ! 路頭に迷いたいなら更新切ってもいいんだぞ? こら!」


 乱暴な物言いに加え、机をドンドン乱暴に叩かれて、ロゼアットは(すく)んでしまう。


「く……すみませんでした……」

「分かったら作業へ戻れ。あとタイムカード押しておけよ」


 毎日毎日サービス残業を強いられて、心身ともに削られていくだけ。

 デウスもロゼアットも死んだ目でコンベア作業へ戻っていく。



 深夜、トボトボとデウスとロゼアットは帰路につく。

 電車にガタンゴトン揺れられて(ほう)けたまま。

 ようやく帰れたデウスとロゼアットは、それぞれ違うマンションの一室でバタンと倒れて、グッタリする。

 晩飯を作る余力もない。腹が鳴る。


 デウスもロゼアットも、かつて大会で猛威を振るっていたとは思えない、非力で豆腐(とうふ)メンタルな人間に成り下がっていた。


「くそがぁぁぁ~!!」


 ロゼアットは自棄(やけ)っぱちとビールを何杯も空けていた。

 机をバンバン拳で叩いて「うう~~……」と恨みづらみと唸る。野心に溢れていて自信満々だったとは思えないほど卑屈で小物だ。


 デウスの方は無気力でいじけるように横たわっている。

 魔神(マシン)だった頃のように傲慢不遜で絶大な力を振るっていたとは思えない。

 こんな風に延々と地獄のような暮らしをループされていた。例え死んでも、また同じような状況に戻る。

 殺伐した世界で競争社会で永遠に苦しみを味わうしかない……。


 そんな折、眩い光がそれぞれの一室を覆い尽くす。



「え? ええっ?? 何が起きた……!?」


 デウスはキョトンとして真っ白の世界を見渡す。オレを見つけるなりギョッとしてきた。


「へぇー。人間になるとこんな姿なのかぞ……」

「き、貴様ぁ……! ナッセェ!」

「また会ったな魔神(マシン)デウス。あ、もう魔神(マシン)じゃねぇや」


 デウスは「うう……」と唸って睨んでくる。


「なんだよ! お前がオレに『賭博(とばく)(くさび)』を打ち込んだせいだろ! 自業自得だぞ」

「うぐぅ……!」


 魔神(マシン)デウスが勝手に勝利を確信して、オレに『賭博(とばく)(くさび)』を打ち込んで誓約を強いた。

 この誓約は“負けた方が地獄へ落ちて、永遠に苦しみをループされ続ける”というもの。

 しかしそれは、一方的に相手()()に与えられる誓約ではない。

 負ければ、仕掛けた側であったとしても平等に適用される。


「なんで……このワシがこんな目に!! 元と言えば貴様がぁぁ~!」

「ってか、お前『何とでも言え弱者ども! これこそ絶対強者、そして勝利者としての特権なのだッ』ってたろ?」

「ぐっ……!」

「その勝利者がオレになっただけだぞ」


 デウスは言い返せず、悔しくてたまらないようだ。


「ただ、今回は『お願い玉』に頼んで、ちょいルールを変えようと思うんだ」

「なに!?」

「おめぇはさ、生まれた時から災厄(マリシャス)として暴れるしかできねぇ……何にも知らねぇ子どもみたいなもんだ。ウイルみたいにな」

「……何が言いたい?」


 オレは清々しい笑顔を見せた。


「一回だけ、赤ん坊から人生をやり直してもらう」

「なに?」

「ちょいネガ濃度薄めた世界線で、人生をやり直して素晴らしさを知って欲しいんだぞ」


 睨んでいたデウスは徐々に表情が解けて、困惑していく。


「はぁ……?」

「普通の家族としてのびのびと暮らし、学校で友達と一緒に遊んで、好きな子にドキドキしたりなど、オレたちが通った道を歩んでもらう」

「家族……? 友達……? 好きな子……??」

「ああ」


 オレは手をかざして、デウスに光飛礫で包み込む。


「人生楽しめよー! そんで反省できたら、元の異世界へ帰ってこれっぞ! そういうルールにしといた」

「な……なに…………!?」

「上手くやれよ?」


 デウスが上へと徐々に浮いていくのを、オレは柔らかい笑みで手を振って見送る。


「またなー!」




 今度はロゼアットは漆黒の異空間で、キョロキョロ戸惑っていた。


「ごきげんよう……」


 ビクッと竦んで振り向くと、椅子にくつろいでいるヤマミが視界に入った。

 頬杖をついて冷めた目を見せている。


「無様ねぇ……。魔神(マシン)の力を盲信するあまり大敗を喫して地獄へ落ちるなんて」

「あれはナシだッ!! 不意打ちや卑怯な手ばっかり使いやがってッ! あれさえなければ、余は世界を掌握できていたのだッ!!」

「ふうん………()りないのね…………」


 目線の上から冷笑を浮かべるヤマミに、ロゼアットはいきり立って襲いかかる。

 しかし、何か見えない壁に弾かれて尻餅(しりもち)をつく。


「て……てめぇッ!!」

「あなたはレベルもスキルも存在しない、心身ともにただの非力な人間……」

「いいから戻せッ!! 元の世界に戻しやがれッ!!」


 憤って、見えない壁をドンドン拳を叩き続ける。


「ナッセは甘いから、きっとあなたにもチャンスを与えると思う。だから私が引き受けた」

「ぬ……!?」

「ずいぶん非人道的な悪行を長い事たくさんしてきたじゃない?」


 ロゼアットは畏怖してあとしざりしていく……。


「ま……待て……! 悪行とは言うが、この世は絶対的な弱肉強食! 弱い方が悪いッ! 余は悪くねぇッ!!」

「やっぱり救いようのない極悪人ね……」

「いいから早く元の世界へ帰せッ! 余は世界を統べる皇帝だッ!! こんな所でやってられるかーッ!!」


 軽蔑するように目を細めるヤマミ。


「ネガ濃度が高い世界ほど可能性は減っていく。現時点でも帰れる可能性は限りなくゼロ。加えてあの誓約だからね。でも、この程度では()は許さないわ……」

「な、何をするつもりだ……!」

「絶対反省しなさそうだから、よりネガ濃度が高い世界へ送ってあげる」


 今の時点でもまだ喜と楽とかある地獄だが、濃度が高くなれば喜と楽などが減って怒と哀など悪い要素が複雑化して苦痛だけが増える。

 ほぼ拷問ともいえる並行世界(パラレルワールド)

 それに恐怖したのか、ロゼアットは悪寒して震えていく。


「そ、そうだ! あんな取り柄もない馬鹿なナッセと偉大な余を入れ替えてくれれば、第一王妃にしてやってもいいぞッ!」

「あなた、最愛の妻がいたんじゃないの?」

「そんなもの性欲のはけ口に過ぎんッ! 要らなくなったら捨てればよいッ!」


 恐怖のあまり、ロゼアットは余計な事を口走ってしまう。


「……クズね。救う価値ないわ」


 ヤマミは嫌悪をあらわに、立てた親指を下に向ける。

 フッと床が消えて、ロゼアットは奈落の底へ落ちていく。


「ま……待て待てーっ、ひあああああああああああああ…………ッ!!」


 あまりの恐怖で絶叫しながらもがくのを、ヤマミは冷たく(あざけ)る…………。


「永遠にさようなら」


 深淵の闇で覆われた……。ズ…………!




 そうして全ては終わった────────……!

あとがき雑談w


ナッセ「なぁ、ロゼアットどうだったん?」

ヤマミ「反省が見られないので、()()()()見捨てたわ」

ナッセ「そっかー……。残念」


 ヤマミはニヤリと怪しく笑む。


 最初っからロゼアットだけは地獄へ突き落とす意向だったのだ。

 反省しようがしまいが関係ない。

 これまで犯してきた悪行を許す事はせず、容赦なく処理したのだ。


ナッセ(怖いから知らないフリしとこ……)ブルッ!



 次話『次で完結だッ!! あと一話ッ!!』

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