193話「妖精王たちの結束! 秘術を破れ!」
ついに魔神皇帝ロゼアットの必勝となる秘術が発動された!
それを破るべき、オレたちは量子世界にまで潜り込んだのだが……!
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドッ!!
「ヤバい! もうカスケード始まってるわッ!!」
「げげっ!!」
大津波のように押し寄せてくるキューブの群れに驚くしかない。
それが『認識改変』による波だと見て分かった。
「この波が生物全ての記憶情報に関する『確率波動』の“拡散”ッ!」
世界で起こる結果は全て『確率波動』によって左右されている。
通常は確率波動が“収束”していって結果が決まっていくんだよな。
「“拡散”……やはりね!」
「そんなもん起こせるとか、魔神皇帝ヤバいもん開発したなぞ」
「全くだわ」
自然現象で“収束”する事はあれど“拡散”はありえない。
だって確率波動が拡散したら世の中がメチャクチャになってしまう。
一つでも結果が無かった事にされると、それ以降に広がっていく結果まで消えちまうんだからな……。
それが遠い過去であればあるほど、現在までの欠落した部分が多くなる。
歴史が壊れかねない。
それに確率波動で記憶と物質とでは重さがかなり違う。当然、物質関連の確率波動の方が重い。
だから物質の“拡散”はえらい事になる。
「物質や事象に関する『確率波動』に“拡散”がないだけでも救いか……」
「いえ! あなたと妖精王たちと、魔神皇帝の座標に関するものだけは“拡散”してる!」
「マジか!」
これが“収束”されたら、オレたち妖精王と魔神皇帝ロゼアットの位置が入れ替わってしまう。
そうなるとオレたちは最初っから各国に囲まれた場所にいた事になる。
それに加えて記憶改変もされたら、完全に弁解も何もできねぇ……。
「まずは“拡散の津波”が来て、配置替えされてから“収束の津波”で収まっていって、通常世界での結果は改変される」
「ひでぇな……。通常世界にいる人は改変された事すら気づけねぇ……」
「絶対に許してはならないわ!」
「ああ!」
だから、オレたちは!!
「いっせーのッ!!」
オレとヤマミはまるでドミノ倒しをやるかのように、拡散のカスケードをザーッて押し返す!
跳ね返されたかのように津波は波紋を広げながら逆流していく!
こうカンタンに言ってるけど、無限にも等しい情報量のプログラムを演算処理しながら元に戻す作業を延々と繰り返しているんだよな。
ハッキリ言って人族が同じ事をやろうとすると秒で廃人になっちまう。
「とはいえ、この量は多すぎるぞ!?」
「いいから集中してッ!」
なにしろ初めてやるんだからな。どれくらいの量でどんな規模なのか考えちゃいなかった。
認識改変ってのは、それだけチートなんだよな。
『最初っからそうであったかのように“過去”から認識と記憶が改変される』
過去にまでさかのぼる分、確率波動の拡散が膨大なのは必然。
それをオレたちが手動で元に戻す作業をしているんだ。
「む、無謀だったかッ……!?」
とはいえ、これを許してしまえばオレたちは人類の敵と認識される。
魔神皇帝がやってきた罪を勝手に背負わされて蛇蝎のごとく嫌われる。逆に諸悪の根源である魔神皇帝が英雄としてふんぞり返る。
そしてまた悪逆非道な事をやって、それを他人に擦り付けて各国でリンチ。
そんな風に好き勝手弄んでいくだろう。
こんなん許せねぇ……!!
「おおおおおおおおおおおおッ!!」
粘るのなら得意だ! 今までこうやって頑張ってきたじゃねぇか!
こんなもん何でもないぞッ!!
ヤマミと一緒に必死になって演算処理して元に戻す戻す戻す戻す戻す戻す!
「また仲間はずれにしたな──!」
なんとクックさんが現れた!?
「ち、ちょっと待てッ!! 演算処理できないだろ!」
「量子世界に入れるだけではダメ!」
「幻獣界の図書館で何読んでたか、あたし分かってるからー!」
秘術で十二日間存在ごと消えている間に、オレとヤマミが読んだ本を把握してて読破してたらしい。
「というワケで手伝うっぞ────ッ!!」
なんと演算処理して元に戻す作業をやってのけた。
ザラーッてドミノ返しのようにキューブの群れが逆流していく。思わずポカンとする。
「じゃあ!」
「三人で!」
「クリアするっぞ────!!!」
いい感じだ! 軽くなった!
二人でやるよりはマシに負担が軽くなってきた!
……とはいえ、この量どこまで続いてっか底知れねぇな……。
「ニャッホー! アイナさんっじょー!!」
なんと今度は水の国の妖精王まで!?
「こちらシトリ来た!」
「パーズもだよー!」
緑の国の妖精王ッ!?
「また先輩、何も言わず自分だけでやろうとして……! 水臭いです!」
「火の国の妖精王クーレロまでッ!」
まさか妖精王全員来るとは思わなかった!
確かに量子世界にまで認識を侵入させる事はできるけど、まだこの事は伝えていないぞ!?
「キャハ! なーんか悪巧みしてるかなっと『テキストミラー思考書記化』で魔神皇帝とナッセヤンとヤマミンの思考を視てたんだよねー!」
可愛らしい装飾の大きな虫眼鏡を振ってアイナがそう言ってくる。
オレの『デコレーションフィールド攻撃無効化』のように、妖精王それぞれに特殊能力があるようだ。
アイナのそれは虫眼鏡で覗いた人物の思考を書き出す能力だ。
「だからミンナ連れてきちゃったニャン! サーセン!」
「ってか、思考が読めたって演算処理の方法までは……!」
「だから私がいるんですよ! 先輩!」
クーレロは花吹雪を収束させて花冠を具現化。それを真上に浮かしたぞ。
「リンク!」
そう呟かれると、他の知識が流れ込んできた!?
「この『カローラリンク知識共有化』で指定した者同士で知識を共有できるんですよ!」
「つー事は……?」
「キャハ! 演算しょーりってこういうのニャン? 楽ショー!」
「よし! ありがたい!」
「これならわたしでもできるかー!」
アイナ、シトリ、パーズ、クーレロまでオレたちと同じ知識を持ち、演算処理して元に戻す作業が可能となった。
まさかの奇跡か、妖精王全員でできるとは思わなかったぞ。
これなら……!
「「「いっけぇぇえ────────────ッッ!!」」」
七人の妖精王で確率波動の拡散を元に戻していった!
面白いように相乗効果で逆流パワーが増加して、カスケードしてたキューブが全てパズルのようにはめ込まれていって、収束を終えてしまった!
「これで認識改変の拡散はリセットされたぞッ!!」
「座標入れ替えもね!」
「キャハ! ミンナでやれば楽ショーだったニャン!」
しかし向こうから黒いキューブの津波が押し寄せてきている。
あれはさっきまで確率波動を弄った『反動』だ。元に戻したといっても、作為した過程は消えない。
「ヤマミ! あれは副作用の!」
「ええ!」
聞くまでもなく、オレたちはみんなで知識を共有している。
この黒いキューブは絶対に止められない。
副作用はどうしたって引き起こされるものだ。
もし、これを無かった事にできたらチートのデメリットがなくなって好き放題できるぞ。
好きなだけ自分の望むままに世界を捻じ曲げてしまえる。
かなり無理のある改変しても、何のリスクもなく自然な事として世界に当てはまってしまう。
だから有り得ない。
師匠クッキーでさえ恐れて、しょぼい“因果組み換え”しかしていない。
反動が大きすぎると逆に危険だからだ。
魔神皇帝ロゼアットが、これ知ってたら秘術を使おうとは思わないだろう。
無知は愚かっていうか……。
「これを逆に利用して『認識改変系の秘術を二度と発動できない』副作用に転換するわ!」
「おし! ひと踏ん張り!」
「せーのっ!」
オレたちは黒いキューブのカスケードの処理を行った!
そして、巻き戻るように通常空間へと帰還した……。
オレの視界は魔神皇帝ロゼアットを映している。量子世界へ潜り込む前と変わらない風景だ。
ウウウウウ……ッ!
極大魔法陣が役目を終えて消えていく……。
「ふう……」
しかし魔神皇帝は悪辣な笑みを浮かべたままだ。
どこか違和感を抱いたか、怪訝に眉を潜めてきた。互いの場所も入れ替わってないからな。それでも成功したと思って笑みを釣り上げていく。
《さぁ魔神皇帝ナッセよ! その罪は許せられるものではない! 皆のもの、巨悪を打ち倒そうッ!》
具現化した剣の切っ先をオレに向けて、勝ち誇るように叫んだぞ。
しかし各国の陣営は沈黙……。
だってそりゃそうだ。認識改変なんてされてねーからな。
《どうしたッ!? あの諸悪の根源が自白したのだ! 残虐非道な妖精王は紛れもなく人類の敵だッ!!》
さっきまで魔神皇帝が自白してきた事を、オレが言った事に認識改変したと思ってる。
だからこそ憎悪を掻き立てて煽ろうとほざいてる。
「……突然、何の話だね?」
オルキガ王様が口を開き、怪訝な顔で魔神皇帝を睨む。
《まだ分からないのかッ!? そこの妖精王こそが魔神皇帝──》
「ふざけるなッ!! 魔神皇帝ロゼアットッ!!」
今度は勇者セロスが激情で叫ぶ。
「何を世迷い事を言ってるんだッ!? ナッセが自白だと? 貴様の犯してきた大罪が他人に押し付けられると思っているのかッ!?」
更に各国の陣営からも罵声が飛ぶ。
「さっきからワケの分かんない事ばっか言いやがって!!」
「何が言いたいんだよッ!!」
「なーんか余裕ぶって魔法陣発動したけど何も起きねーじゃん!」
「追い詰められてボケたのかッ!!」
罵詈雑言を浴びて、ようやく魔神皇帝はうろたえ始めた。
《ば、バカな……!? 成功したはずだぞッ! 絶対発動されて成功したはずだッ!!》
確かに成功したけど、オレたちが量子世界で全部元に戻したぞ。
《し……失敗した……? 有り得ない! こんな事ッ……! いや、効果が遅延しているのか?? これから改変が来るのかッ!?》
「おまえ、何言ってんだ? さっきから何やりたいんだよ?」
《ぬう!?》
オレは素知らぬ顔で言ってみた。
わざわざ「すみませ~ん、実はオレたちが破りました」なんてバラす義理なんてない。
原因が分からないまま疑心暗鬼で悩んでろ。
《貴様ァ!! 何かやったのかッ!?》
「はぁ?」
《いや、バカなお前に高度な魔法陣を見破れるはずがない!! くそ不発かッ!!》
バカに見えてて悪かったな。
「どうでもいいけど、自白した事まんま各国に伝わってるからな?」
お返しとばかりに得意げにドヤ顔で魔神皇帝に“現実”を突きつける。
各国の陣営は憎悪と憤怒で湧き上がっていて、恐ろしい剣幕になっていた。
もはや許してもらえねーほどに沸騰している。
「覚悟できてるんだろうな……? 魔神皇帝……!」
その時、魔神皇帝ロゼアットは焦り、驚き、絶望といった感情を詰め込んだ表情をあらわにした!
汗ビッショリで、目を丸く、鼻水垂らし、大きく口を開けて唖然!!
あとがき雑談w
ナッセ「ローファンタジー編で師匠クッキーが“因果組み換え”してたけど……」
ヤマミ「ええ、思えばアレも量子世界で確率波動を弄ってたわね」
突然クッキーが登場したり、土足で床に足跡をつけたけど消したり、五つしかなかった椅子が六つになってたり、最後は六つ目の椅子ごとパッと消えた。
これも量子世界で物質や事象に関する確率波動の操作を行ったからだ。
だから、通常世界にいるオレには不可解な出来事に見えていた。
38話「よくある異世界転生ぞ?」
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ナッセ「なんだか師匠へ近づけた気がする」ムッフー!
次話『魔神皇帝ロゼアット覚悟しろ!? 残り七話!』




