189話「不屈の鬼神! つい論破してしまう!!」
白目で倒れていたマッチがほどなく気がついて起き上がると、間近で真紅ジャオガに見下ろされててビクッと竦んだ。
「く! こ、殺せなかったのは甘かったな!!」
いつものように『偶像化』を出そうとしたが、全く出ない。
何度力んでも出る気配はない。
「何故だッ!? 何故出んッ!?」
「貴様は心が折れたのだ。もう『偶像化』は出せんぞ」
「な……なにッ!?」
《もうよい!》
魔神皇帝の声にマッチはビクッと怯えた。ぎこちなく振り向く。
怒りを漲らせているのが『支配王紋』で伝わってくる。
《敵の、しかも魔物風情に情けをかけられたとあっては人類の恥! 消えろ!》
「ま、待ってく……」
魔神皇帝が手をかざすと、マッチはボンッと破裂して金属の破片と電子パーツなどを飛び散らせた。
スウッと出てきた魂が吸い寄せられていった。
ジャオガは魔神皇帝へ見上げて眉間にシワを寄せた。
《魔物風情が……いい気になるなよ……! 各国の人類で妖精王どもを始末したら貴様らをターゲットにしてやろう》
「どういう意味だ?」
《それを認識する事はないさ。くっくっく……》
怪訝なジャオガに、魔神皇帝は薄ら笑いを浮かべる。
オレはそれを聞いてしまった。
やはり認識改竄のチートを発動させるつもりだ……。
確かに発動を許せば『最初っからそういう認識』になっちまう。全知全能のように把握してんのは魔神皇帝ロゼアットのみ。
《ヤマミ……、オレは腹を括った! 手心なくヤツをとっちめる!》
《うん! そうして欲しい》
肩のヤマミ小人は頷いた。
一応ジャオガさんに思念通話で説明しておいた。
説明したところで認識改竄されてはどうしようもないけど、しないよりはマシだ。
《分かった……、頑張れ!》
《ああ!》
ジャオガさんから励まされて元気が湧く。頼もしいなって思う。
「さて六帝魔騎士もあと一人……だったよな?」
「ええ……」
“連陣魔道士”ヴィバンと“魔迅の鬼神”タッドが既に交戦中──!
しかし旗色が悪い。
三叉の鬼神のツノ。そして迸る赤い稲光。大鬼神タッド。
凄まじいフォースを噴き上げているものの勢いは弱い。
「くくっ! ヤバいっす……!」
あちこち魔法陣がビームを放ってきて、追い詰められているぞ。
ヴィバンという男。
黒いローブを纏った長身の男。上半身と頭をすっぽり覆う三角帽子っぽいので両目が覗いている不気味な風貌。右手には最高級の杖で煌びやかな宝石が光を放つ。
「地に落ちたものだな……。異世界の魔王の子孫であり、仮想対戦のビッグタイトルを無敗で五冠冒険者と輝かしい功績を持っていたお前がこうして死にゆくとはな……」
「まだまだ負けてないっすよ!」
序盤で超鬼神になったせいで不調になっているものの、根性で食らいついているって感じだ。
あちこち現れる魔法陣を、魔剣の魔迅閃で粉砕しまくっているが、相手は次々と生み出して光線の嵐をビビビビッと浴びせてくる。
既に疲労困憊ながらもタッドは必死に相殺したり回避したりしている。
「ふははははっ! 本領発揮できぬ内に始末してやるッ!!」
ヴィバンはボコボコと背中からザリガニのハサミが六つ足として下方に生え、更にサソリの尾みたいな多関節が伸びてきて、その先っぽは二つの口をもつ蛇!
そう彼もまた『偶像化』を発現させたのだ!
「俺は貴様を超える強者なのだッ!! 数々のビッグタイトルを優勝してきた貴様以上なのだッ!!」
「って、なんか功績あるっすか?」
「うっ……!」
そう怯んだヴィバンは押し黙っていく……。
「ボク以上って言うから、そっちでビッグタイトルを優勝してきたっすか? 魔界と地上界とでは仮想対戦は違うっすからね!」
「ぐっ!」
「まさか仮想対戦には参加してないっすか?」
「し……した!」
「じゃあどんな重賞取ったっすか?」
また押し黙る。なんか空気悪くなってね?
「うるさい! うるさい! うるさーいッ!! 俺は大器晩成型なんだッ!! 今こそこうして貴様以上の力をつけたのだーッ!!」
「あれ? もしかして一つも……?」
「貴様には分からんさ!! 俺が試行錯誤している裏で、一五歳限定重賞大会や一七歳限定三大クラシックを制覇してきた貴様にはな!!」
嫉妬で燃え上がって『偶像化』がギチギチ軋み音を立てて、蛇が「ギャアアア……」と恨みづらみ吠える。
無数の魔法陣を生み出して、光線の弾幕を張る。
タッドは見開いて「魔迅閃ッ!!」と魔剣を振るう。
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドッッ!!
大地を揺るがし、飛沫を吹き上げ、爆裂が烈風を呼ぶ!
タッドは更にボロボロになって吹っ飛び、地面を滑っていく! それでも転がりつつ起き上がった!
「それでも負けないっすよ!!」
「不調の貴様に勝ち目などないッ!! 万全になられる前に殺す!!」
無数の魔法陣が輝いていくと、周囲がピリピリ震え上がっていく!
「そして俺はタッドを超える事になるのだッ!!」
カッと見開いて攻撃しようとする瞬間、タッドは掌を差し出す!?
「あ────ッ!!! タンマ!! タンマっす!!」
「な……なっ!?」
突然大声でタンマしてきて、ヴィバンはビックリして止まってしまう。
「命乞いなぞ──……」
「それだと超えた事にならないっすよ!」
タッドの訴えに、ヴィバンは怪訝な顔を見せていく。
「何が言いたい?」
「不調のままのボクに勝ったって、実力で勝ったって言わないっす! 超えた事にならないっすよ!」
「は? 何を言っているんだ??」
「だーかーらー!! 本気のボクに勝ってこそ実力で勝ったと言えるっすよ!」
ヴィバンは眉を跳ねる。
「だから万全になるのを待てと? 貴様に勝つチャンスをみすみす逃がすものか!」
「……ボクはそんなもったいない事したくないっす」
タッドが首を振る。
「なんだと!?」
「あんたがボクの事を羨ましがってたけど、そんな事ないっす! 五年前からリョーコに仮想対戦のビッグタイトルを次々とかっさらわれて、ボク全敗っす! ものすごく悔しいっす!」
震えて悔しがるタッドに、ヴィバンは怪訝になっていく。
「だったら不意打ちしたりすればいいじゃないか。毒でも盛れば……」
「そんな卑怯な事して勝っても嬉しくないっす!」
「勝てない相手には、どんな手を使ってでも陥れればいい! 優れた技術や技があるなら開発者を殺して自分のものにすればいい! 俺はそうして六帝騎士に成り上がったのだからなッ!」
ヴィバンは誇らしげに笑みを浮かべる。
「そんな事したら一生勝てないっす……」
「は? 何を言っているんだ?」
悲しげなタッドに、ヴィバンは怪訝に眉をひそめる。
「そんなズルい事ばかりしてたら、実力で勝てる機会を失うっすよ!」
ヴィバンは見開いて衝撃を受けた。
これまで自分より上の実力者を、あの手この手で殺してきた。
卑怯だろうがなんだろうが自分がのし上がる為になら、なんだってしてやる、と。
その方が楽だった。
なのにタッドの考え方は真逆だった。
堂々と同じ土俵で勝負して勝つ事こそが真の勝利。それがヴィバンには目からウロコだった。
「バカだろ! 殺されたヤツは何もできぬッ! 何にもなッ!」
「いや! 殺したら逆に勝ち逃げさせてしまうっす!! 一生勝てないっす! そんなの我慢ならないっす!」
「な、なに……!?」
必死に訴えるタッドに、ヴィバンは更に衝撃を受けてしまう。
これまで平然とやってきたが、真実に気づかされて後悔の念が膨らんでいく。
「う、うるさい! うるさい!! 騙される方が悪い! 貶められた方が弱い!」
「……それで勝ってスッキリ嬉しかったっすか?」
「ぐうぅッ!」
胸に手を当てて、襲いかかるショックにワナワナ震えていく。
「ボクは、いつかナッセやリョーコに実力で勝って喜びたいっす!」
「貴様なんかが勝てるワケねーだろッ!!」
「それでも実力で勝ちたいっす!! その方がすごく嬉しいっすから!!」
ヴィバンの罵りに、タッドは必死の形相で切り返す!
正々堂々と純粋に力比べして、実力で勝つ事こそが全て!
お互いに競り合って切磋琢磨と腕を磨きあって、限界を超える!!
それが魔族が誇る“闘争”の真髄ッ!!!
「あ……ああ…………ッ!!」
そこから逃げてしまったヴィバンは自身の実力を信じず、卑怯な手ばかりで勝ってきた。
それは自分の力を否定するにも等しい。
そして致命的なのが、勝てなかった相手を殺してしまい二度と勝てなくなってしまった事。
「そ、そんな……俺がやってきた事は…………!!」
嫉妬のあまりに自分を見失ったのだろう。
他人を蹴落としてのし上がってきた事に誇りなど持てるのだろうか?
むしろ後ろめたさと惨めだけがズシリとのしかかるだけだ。
「何も……何もかもッ……無意味だったッ…………!!」
ボキィ!
葛藤と悔恨に苛まされるあまりヴィバンの心はへし折れた。
だからか『偶像化』は泡となってブワワッと霧散してしまった……。
「俺は何も成し遂げてなかったのかぁぁぁぁ────ッ!!」
両膝をついて頭を抱えて絶叫! うわああああああああああああああ!!!
魔神皇帝は不機嫌にチッと舌打ち。
心が折れて戦意喪失してしまったヴィバンなど役立たずの愚物。
掌をかざし、ボンッとヴィバンを破裂させて魂を回収してしまった。
「ええっ!? まだ勝負の途中っすよ!!」
タッドが叫ぶも、魔神皇帝は相手にしない。
何度訴えても無視されて、涙目で震えながら「勝ち逃げされた……」と勝手に悔しがる始末。
「いや、レスバでは完璧完封完勝してるぞ……」
呆れつつもオレはボヤいた。
まさかレスバトルだけで勝つとはなー。まぁ普通に戦ってたら負けてたもんな。
──なんにしても六帝魔騎士は全員撃破したぞ!
その時、向こうから大爆発が巻き起こった!?
ドガアアァァッ!!
ロゼアット帝国とライトミア王国の勇者パーティー同士の戦いが熾烈を極めていたからだ。
吹き荒れる爆風の最中、魔勇者ボゲーと勇者セロスは睨み合う。
あとがき雑談w
作者「キツい! こうして連載してるのキツい!! でも頑張る!!」
急にキャラ設定を練ってテーマ作って書くの、意外と大変。
休みたいけど、完結が遅れてしまうから休みたくない。
この話が出たら、残りは一〇話!!
ナッセ「本当はもっと話を広げてもいいのにな。案はあったし」
ヤマミ「そうすると三〇〇話、四〇〇話とキリがないって愚痴ってたわね」
クックさん「一話一話キューッて詰めてるー!」
ジャオガ「今回の大会で一発キャラ量産してたのは頂けないがな……」
各国の一発キャラ「「「それな!」」」
次話『勇者パーティー対決!! 残り一〇話に収まりきれるのか!?』




