181話「これが勇者セロスのパーティーの実力だ!」
“聖雷の勇者”セロスは聖剣を振り上げて身構える。
魔神兵たちは一斉に機関銃で斉射。凄まじい弾雨がセロスを蜂の巣にせんと殺到。
「レイ・サウザンドスラッシューッ!!」
瞬間連撃、幾重の左右斜め斬り下ろしが網目のような軌跡を描く。
その斬撃は扇状に拡大しながら、弾雨をも跳ね除け、驚愕していく魔神兵をまとめて細切れに斬り散らす。
ズドオオォォン、と飛沫を吹き上げて大地に網目の亀裂が刻まれた。
相変わらず勇者としての強さを発揮してるなぞ。
確固たる信念故に対立しかねない事もあったけど、今では頼れる味方だ。
「さすがですね! でも僕も負けてませんよ~!」
“青髪の超闘士”モリッカは自身に雷魔法を落とし、全身からエーテルを噴き上げ、青い電撃がバチバチ迸り、髪の毛も青く輝く髪に少々逆立たせていく。
体全体に雷魔法を付加させる『形態』でパワーアップだ。
「これが超モリッカです!」
狂喜な笑みで、超速疾走して数十機もの魔神兵を殴って蹴って砕いて、振り返りざまにエーテル弾を放ってドッガァァンと大爆発にかき消す。
弾道ミサイルが飛んでくるが、モリッカは「かあッ!!」と気合いだけで白光にかき消した。
「ば……バカなッ!? ウソだろ……!?」
「以前のモリッカと全然違うやんけ! データが違うッ!」
「そもそも“残虐なる蟲王”ベルセムと自爆して死んだはずじゃ!?」
ロゼアット帝国って割と情報収集してるなぁ。以前のデータっぽいけど。
とは言え、今のモリッカにはいつもビックリさせられている。
元は、なんか召喚士で魔法を使うタイプだったし、大人しい少年って感じだったのに、どこか某格闘漫画のアレみたいになってんですもん。
そしてセロスとファリアの幼馴染っていう。
“水仙賢”メーミは白いローブを纏った水色ロングの凛々しいエルフの女性だ。
左目を瞑っている。
「あんまり出したくなかったけど~……」
瞑っていた左目が開かれ、金色の虹彩で瞳孔から六方向にトゲの紋様。更に白い縦線が窺える。
セロス、ファリア、モリッカは「ついに切り札を!?」と反応していた。
「『魔繰眼』!!」ギン!
片手を上げて「ホノバーン」と巨大な火炎球を浮かせてきたぞ。
それは徐々に赤いムチの形を取っていく。それを振るうと伸縮自在に不規則に飛び跳ねていって魔神兵を数十機ビシシシシッと打ち据えて爆炎に包む。
「ぐわああああ!!」
「ぎゃあああ!!」
「うぎゃー!」
火炎に貪られた魔神兵は跡形もなく溶け消える。
「な、なんだっ!? 火炎球がムチに?? 当たると炎が!?」
「これが『魔眼』!?」
「くそー!! みな斉射だっ!!」
「おお!!」
「その目とムチでは銃弾を防げまいっ!」
「死ね!!」
パパパパパパパパパパパッと、一斉射撃を行う魔神兵。
その弾幕に対して、今度は竜巻を発生させた風魔法を半透明の螺旋模様の大盾に造り変えて弾いてしまう。
螺旋模様の大盾は自由自在に飛び回って、メーミを自動でガードしている。
赤いムチを投げつけると、元のホノバーンとして巨大な火柱で噴き上がって魔神兵を複数屠る。それをメーミの魔眼がギンと凝視。
火柱が無数の触手に分かれて、他の魔神兵へ襲いかかって次々と燃やしていった。
「ぐあああああああ~!!」
まるで生きているかのように触手が魔神兵を捕まえては燃やしていく。
そんなメーミの能力にオレは驚かされた。
一つの魔法を多種多様に操れるなんて信じられない。普通真似できねぇ。
「あれが魔法を変幻自在にコントロールできる魔眼か!?」
「魔法を分身に作り変える『分霊』とはまた違うわね……」
どっか魔眼ショップで聞いた事はあるが、実際に見るのは初めてだ。
まるで具現化武器のように形状を整え硬質化、被弾した際の拡散を収束して自在に操ったり、使い勝手はよさそうだぞ。
今度は機関銃の形に固め、乱射して意趣返ししたりする。
「あくまで自分の放った魔法が対象なんだけどね~」
メーミはてへぺろと舌を出す。
“剛戦鬼”ファリアは盾をかざし、魔神兵の機関銃の弾丸を弾いていた。
それは彼自身の刻印創で具現化された『亀甲鱗』で、六角形で連ねた盾である。
「はははっ! 盾で引っ込んでいるだけの小心者じゃないか!」
「亀のように手も足もでないってか~! ひゃはは!」
「勇者のオマケとしては力不足じゃねーの!?」
しかしファリアは据わった目を覗かせる。
「さんざん亀だとか……、勇者のオマケだとか……、おまえら見下しすぎだろ」
なんとファリアの盾が無数の六角形の鱗に分解されていく。
それらは銃弾を弾きつつ、魔神兵の全身へくまなく張り付いてしまう。
「う、動けん!?」
「これは一体っ!?」
「離せぇーっ!!」
ファリアはゆっくり歩み寄り、手前の魔神兵へボディブローをかます。
すると全身の鱗が一斉に連鎖爆破してボガガーンと木っ端微塵に!
「ひいっ!?」
「な、爆破できるのか?」
「待てっ! 待ってくれー!!」
「才能もなにもねぇ俺が悩んで考え抜いて作った『刻印創』だ」
ファリアは掌の『刻印』の『5』という数字にポンポン拍手すると、数が減っていく。ポンと『0』になった時、魔神兵は一斉に爆ぜた。
最初の殴っての爆破よりも数倍もの威力でえげつない。
散らばっていた鱗が集合していって再び盾としてファリアの腕に収まる。
「俺はよ……オマケ扱いばっかでマジでムカつくんだが、セロスは真面目で普通にいいヤツだからな……。もし嫌なヤツだったら、やりやすかったんだがな……」
今度は盾だけではなく、鎧からも鱗がブワッと大量に舞っていく。
戦士らしからぬ戦い方である。
「単にセロスの相棒ってワケじゃねーな」
「目の奥に負の感情が燻ってるわね……」
「分かるのか?」
ヤマミ小人は薄ら笑みを浮かべる。
「下手したらセロスと憎しみあう仲になってたかもね」
ゾクッとした。
オレもヤマミと今でこそ友好な関係を築いているが、過去で一歩間違えば敵対してた可能性もあった。
それはセロスとファリアにも言える事だった。
ヒーロー扱いの万能なセロスと、オマケ扱いの不器用なファリア。
「私たちと違って恋愛要素が絡まない男同士で、あの仲は奇跡かもね……」
オレは見誤っていた。
今までファリアの存在を、セロスの付き人みてーな印象で見てた。
だが実は全く違ってて、本当はファリアもヒーローとして賞賛や喝采を浴びたかったんだろう。だから常にセロスへ嫉妬を抱いていた。
それでなおも勇者の仲間として味方として、そしてかけがえのない親友として己の芯を貫いている。なかなかできるもんじゃねぇ……。
「セロス! こっちは任せろ!」
「ああ! ファリア、頼りにしてる!」
鱗を舞わせるファリアと、聖剣を振るうセロスが共闘奮戦。
昔から一緒に歩んできたからこそ、割り切って付き合えている。
もし諍いが起きても、きっと兄弟ゲンカのようにコトを済ますだろうな。
「元々セットでもオマケでもなく、二人がお互いの意志で共闘しているだけなんだよな……」
そんな事は、ヤマミと一緒に歩いているからこそ理解できる。
「それはそうと、魔神デウスさん静かすぎねぇ?」
「そうね……」
大会闘技場の中心で陣取っている魔神デウス。
最後に最終形態『虚無・終・魔絶』を発動したものの、全く拮抗が崩れない事に驚いたきりで反応しなくなっちまった。
まるで死んだかのように虚像だけが沈黙している。
だが、死んでねぇのは悪欲探知で分かる。底知れない悪意と苛立ちが滞っている。
簡易的なロゼアット帝国を眺めている、もう一人の勇者。
魔神デウスに乗っ取られる以前は帝国の勇者として働いていた男……。
「オラァ……もう独りですけ……」
“砂漠の蛮勇者”ボゲー。
ギザギザ短い黒髪の肌黒くて毛深い小太りオッサン。卑しそうなタレ目。盗賊のような衣服で勇者には見えない。破けた茶色のマント。得物は棍棒型の聖剣ボグ!
「この裏切り者めっ!!」
「同じ帝国の者として、歯向かうとはなっ!」
「陛下に変わって、始末してくれるわぁっ!!」
戦車も連れて、魔神兵が機関銃で勇者ボゲー襲いかかる。
「魔神の操り人形にゃあ用はねぇがですッ!!」
聖剣である棍棒を振り下ろすと、広範囲を陥没させ土砂の飛沫を噴き上げていく。
ボゲーが振るうたびに広範囲の衝撃波を発生させて、複数の魔神兵を木っ端微塵に粉砕していく。
「ニセモンにゃあ、オラァ未練どころか感慨もねぇがですッ!」
バッゴオオオォォォォンッ!!
棍棒一本で何十機もの魔神兵や戦車が豪快に吹き飛ぶ。
やるせない苛立ちを込め、かつて帝国の者だった人形へ激情をぶつけてるみてーだ。
魔神デウスは内から聞こえる声に戸惑っていた……。
《さっきから聞こえる声……。何者だ……》
《永久不滅とされている魔神デウスがどれほどの存在か、見せてもらったが無能の極み。貴様は所詮『魔絶』依存の小物でしかない……》
《なっ! なんだとぉ……!? ぶ、侮辱するか!》
内なる世界で、魔神デウスの意識の前にズズズッと黒い人影が形成されていく。
《貴様は我々の国を乗っ取って、全てコピーで成り代わったつもりだが……》
《ま……まさかッ……!?》
魔神デウスは見開いていく。
そう、人影はロゼアット皇帝。顔に斜めに走った傷が目立つ厳つい中年の男。ニヤッと笑む。
《逆だ! 貴様を取り込む為に、敢えて軍門に下ったフリをしていたのだ》
《なに……!?》
《人類など非力で烏合の衆の存在と思ったろう? 舐めてたな……》
クックック、狡猾な表情を浮かべるロゼアット皇帝。
背後からおぞましい悪意が滲む、黒く濁ったフォースが禍々しいドクロを象っていく……。
そんな剣幕に魔神デウスはザワリと初めて恐怖した。
《貴様は思い知るのだ……! 人類の底知れぬ悪意と貪欲さをな……!》
ズズズズズズズズズズズズズズズ……!
あとがき雑談w
ナッセ「勇者パーティーっても、どんな風に旅してたかは語られてないんだよな?」
セロス「もう今更だからな。魔王魔族は敵ではなくなった」
ファリア「とある魔王を倒した事など、本編ではもう語られないだろうな……」
ナッセ「え? そんなん初耳!? 魔王ジャオガさんじゃなくて?」
メーミ「“冥骸皇”アクラって魔王がいてね~。手強かったんだよ~」
ジャオガ「ああ、アクラか。悪趣味なヤツだったな。いなくなってくれたのはありがたい」
ナッセたちが異世界にやってくる数年も前に、セロスたちは別の魔王と戦って勝利してたらしい。
これ外伝書けそうじゃね?
次話『まさかのロゼアット皇帝!? 死後の執念で蘇ってきた!?』




