177話「地獄の使者!? 勇者ププラトと鬼ガオガー!」
“恐怖の鬼騎兵”ガオガーが戦車を相手に暴れ回っているのを、勇者ププラトは見ていた。
あんな乱暴者ではあるが、律儀に国王騎士として敵を駆逐しているのだ。
「初めて会った頃を思い出すね。今では頼もしい限りだよ」
────そう、あれは七年前!
森林生い茂る平地。しかし煙がいくつか上っている。
「ハハッ! ハハハッ! ハハハハハッ!!」
返り血で真っ赤に染まった全身、笑う大男はまさに狂気。右手で掴むゴブリンの頭を丸齧りして血飛沫が飛び散る。
周囲ではゴブリンの死屍累々で凄惨さが窺える。
あちこちで火の手が上っている。
「僕が“神聖樹の勇者”ププラトだよ」
まだ十と二の少年だった頃の緑の国の勇者。
大男は不敵な笑みで振り向く。食べたゴブリンの血が付いた口元を親指で拭う。
「ほう? 今度は小さいな?」
「“恐怖の狂気獣”ガオガー! 神妙に縄についた方がいいよ!」
────緑の国周辺で暴れ回っているという大男。
その男はモンスターや人族問わず襲いかかって惨殺する狂戦士。
幾度なく凄腕の冒険者が挑むも、ことごとく返り討ち。故に勇者が直々に出向いた。
「小さいとはいえ勇者! 無敗のこの儂を殺せるかッ!?」
突然大地を爆発させて、デカい巨体そのものが超高速でププラトへ飛びかかる!
問答無用で巨腕が唸って大きな手が握り潰さんと伸びる!
「聖剣ティエルーシャモッ!」
驚いたププラトは白い木の枝の聖剣を振るう!
その聖剣をガオガーは掴む! 更に砕かんとミシメシ握力を強める!
しかし!
「ドリアプラタ白茨ッ! 縛れッ!!」
掴んでいる聖剣から白いイバラが無数ビュルビュル飛び出して、ガオガーの全身へ絡みついていく!
もの凄い圧力で縛られ、ガオガー見開く!
そして刀身をガオガーの首へ近づけて、反射光が煌く!
「大人しく捕まっててくれ!」
しかしガオガーはフッと笑う。
「微温いわッ!!」
昂ぶり、ビキンと全身の肌が褐色に染まり、髪の毛を白に変えた!
大地を震わせるほど爆発的なエーテルを噴き上げ、縛り付けていた白いイバラさえちぎってしまう!
「な!?」
獰猛なガオガーは、驚くププラトの顔を掴み、大地へ叩きつけたァ!!
大地に放射状の亀裂を走らせ広範囲に陥没!!
周囲の木々が亀裂によって傾き倒れ、なおも地響きは続く!
「勇者こんなものか……」
煙幕が立ち込める最中、ガオガーは「つまらぬ」と言いたげな澄ました顔。
しかし足元の大地が爆ぜて、飛び出したププラトが鋭い殺気と共に剣を突き出してくる!? それをガオガーは素手で掴む!
すかさずププラトは前蹴りでガオガーの顔面を蹴る事で離れ、宙を舞って着地して後方へ滑っていく。
神妙に二人は見合う。
ガオガーは掴んでた方の手を見やると、切り傷から血が垂れていた。
「フッ! さっきのはなんだ? 先ほどと別人だぞ?」
「あー……、これまでは不殺モードな。平穏に事を済ます為に聖剣を媒介にした緑魔法で敵を捕縛するユルいモードだよ」
「ホウ?」
「だが、今は抹殺モードな! 容赦なく命を刈り取るッ!!」
ププラトは殺気立った鋭い視線を見せている。周囲の空気がピリピリしていく。
少年なのに、出で立ちは修羅そのもの。ガオガーは察した。
「……お前も色々失ったか」
「ああ。俺の故郷は魔族に滅ぼされた。その憎悪滾る炎は今も己の身を焦がし続けている!」
「その意気や良し! だが実力は伴うか?」
「じゃあ死ね!」
地面を爆ぜてププラトは瞬時に間合いを縮める!
ガオガーは初めて死の気配を感じ取り、エーテルを全身に纏って大の字でこらえる構え!
ププラトは超神速で幾重も剣を振るい続け、命を奪わんと唸る!
「サウザンド・フィアーファングッ!!」
刹那の間に瞬間剣戟を叩き込む神速技を、ガオガーは一身に受ける!
ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガッ!!
「ぐぬ……ッ!」
苦い顔をするガオガーは後ろへ滑っていく。
鋼鉄よりも硬くした身体に、数多の切り傷が刻まれ血飛沫が舞う!
「ここまで傷つけられたのは久しいな! さすが大したものよ……!」
「さすがに頑丈だな……!」
「ガハハハッ!!」
ガオガーは嬉しそうに狂気の笑顔を見せ、獰猛なエーテルを漲らせていく!
それに対してもププラトも「勇者の魂波動」とフォースを噴き上げて、更に威圧を増した!
両者の凄まじい威圧がぶつかり合って、大地が揺れていく!
「その小柄な体でどこまでもつかなッ!?」
「さっさと死ね! アイン・イヴィルライトニングッ!!」
引きちぎらんと襲いかかるガオガーに対して、ププラトは垂直に振り下ろして放つ巨大な剣閃で対抗!
眩い稲光が炸裂したかのように全てを白光に包む!
カガッ!
二人の殺し合いは数時間にも及んだ……。
気づけば森林は、悲惨なまでの破壊跡で抉られた荒野と化してしまっていた。
黒い暗雲から豪雨が降り注ぐ。
傷だらけのガオガーとププラトはハァハァ息を切らしながらも、鋭い眼光で睨み合い。
「うぬのような小さき修羅が、国の勇者とはなッ!」
「二度とあのような地獄を生み出すまいと、勇者の使命を受け、魔物を幾度なく葬り去ってきた! これまでも、そしてこれからも!」
「ガハハッ! 心躍るわ!」
かつてププラトは故郷で平和な日々を送っていたが、一瞬にして魔族の襲撃により壊れてしまった。
独り残され、ドス黒く燃え盛る殺意を胸に荒れるしかなかった。
平和とは程遠い、後ろ暗く血に塗れた自分が嫌でしょうがなかった。
「誰でもいい、身を焦がし続ける俺を殺してくれッ! 熱い! 熱いんだあッ!!」
憎悪に滾る殺意が熱くて苦しくてもがくしかない自分。
手に持つ剣は血を求めたがっている。
殺人衝動に駆られて、魔族やモンスターと見れば見境もなく殺し尽くす毎日。
そんな折、通りかかった“深緑の智王”カイゼルが邪魔してきたので、衝動のままに挑むも返り討ちにされた。
もの凄く強くて全然敵わなかった。
ようやく死ねる。そう思って安堵していくが……。
「来い! 人生を捨て去るにはお前は若すぎる!」
「情けはいらねぇ!! 殺せっつんだよ!」
「仕方ないな……!」
強引に連れて行かれ、教育や剣の手ほどきを受けて第二の人生を与えられた。
最初は反目していたものの、王の熱心な教育に折れて次第に敬意に変わっていった。
終わったと思った明るい世界がまた広がっているのを感じて、葛藤に悩まされもしたが同時に渇望もしていた。
「王様よ、こんな俺に……こんな平和な世で生きてていいのか?」
「むしろ生きろ!」
“深緑の智王”カイゼルは明るく笑う。王に、国に、光を見た。
地獄に落ちてから数年、始めて感激の涙を流せた。
「だから、俺は緑の国の勇者として聖剣を振るい続ける!」
グッと聖剣を握って、切っ先をガオガーへ突きつける。
「では失った者はどうする? 自分だけ生き延びて虚しくないのか?」
「もう還ってこない……分かっているんだ…………」
黙祷するようにププラトは目を瞑る。
脳裏に浮かび上がる平穏な故郷での楽しかった思い出。
「だが、世界には多くの悲劇がこれまでもそしてこれからも起きている! 俺だけ喚いても地獄はなくなりはしない! だからこの一生をかけて、この勇者に、聖剣に誓って、地獄を祓い続ける!!」
真っ直ぐな堅い信念!
少年とは思えぬ力強い眼光! 芯の強さが窺える!
「ククッ……! ガハハハハハハハッ!!」
感銘を覚えたガオガーは高らかに大笑い!
どかっとアグラをかいて座り込む。上機嫌に「儂の負けだ」と手を振る。
呆然とするププラト。
「一体……どう言うつもりだ?」
「どうもこうも、この一戦で終わらすには惜しいと思ったのだ。儂かうぬか、どちらが死んでも面白くない。この先を生きて、うぬがどこまで貫けるか見届ける方が面白い!」
「な……!?」
ただの乱暴な悪党ではないのか、とププラトは戸惑う。
「儂も地獄を見た! 故郷を失い、その業火を魂に宿し猛者を追い求め続けていた! 儂より強い猛者に殺される為になッ!」
「お前も……!?」
「このままうぬに殺されるのも本望ではあるが、な!」
殺気はおろか闘志をも断ち切ったガオガーは無防備を晒している。
首を飛ばそうと思えば容易にできる。
戸惑ってしまった。だが、なにより目の前の大男も自分と同じ境遇なのだ。
ププラトは信念の下で、聖剣を鞘に収めた。
「……王国へ連行する」
「応!」
ガオガーはそのまま投獄された。
本来なら極刑のところ、ププラトが責任を持って懸命に嘆願した。
数年の獄中生活もガオガーは大人しくしていて模範囚だった為に釈放され、王国騎士試験を合格して、ついには緑将五衆人までのし上がった。
全ては同じ境遇である勇者ププラトと一緒に世界を見ていく為に!
「おお! ププラトか! 待ちくたびれたわ!」
「なんだ、もう疲れたのか?」
「馬鹿いえ! ただのウォーミングアップに過ぎん!」
「さてと……そろそろ」
「応!」
戦場で交わったププラトとガオガーは背中を預け合い、周囲の魔神兵へ戦意を向ける。
地獄から這い出てきた二人の鋭い視線と剣幕で、魔神兵は恐怖に竦み上がる!
「「この地獄を、己の業火で燃やし尽くすッッ!!」」
二人は狂気じみた殺意を剥き出しに、魔神兵へ猛襲す!
大男のガオガーの腕が、ププラトの剣戟が、天まで轟くかのように唸り上げた!!
天地が激震し、数百機もの魔神兵が宙を舞った────!
浄化の鈴を鳴らし続けて魔神デウスの瘴気を押し留めている最中、オレは勇者ププラトの意外な面にも驚かされた。
これまで悟った感じの落ち着いた勇者と思っていた。
だが、あのような殺意まみれの修羅とは……!?
「これが……本来のププラト……!?」
あとがき雑談w
ガオガー「そういえば、弟は生きているのだろうか?」
ププラト「弟なんていたのか?」
ガオガー「ああ……。マジンガという弟がな。行方をくらましたきり見つからん!」
ナッセ(あ……知ってる。つか秋季大会で戦ったぞ)
ヤマミ(まさかの異世界転移!?)
※マジンガは小話編の秋季大会で出てきたキャラクターですw
参照:105話「秋季大会編 ~全国大会一回戦ぞ!①」
『https://book1.adouzi.eu.org/n5056hg/105/』
マジンガ「そういえば頭を打って倒れてた所を、今の家族に拾われたな」
(今更な記憶喪失の新設定w)
次話『そろそろ国のネタが尽きそうw』




