176話「猛攻する緑将五衆人! 恐ろしい男も!?」
空を戦闘機が飛び交い、大地を戦車が這い、無数の魔神兵が機関銃を手に走る。
大気を切り裂いて飛んでくるミサイルが大爆発を起こし、鼓膜が破れるかと思うほどの衝撃と轟音が響いてくる。
「これが……ナッセ殿の言っていた殺戮兵器か」
「ええ、想像以上です」
緑のフォレスト王国の王様。“深緑の智王”カイゼル。気難しい顔で白ヒゲをさすっている。
隣には冷静に鎮座するミシュアル王妃が佇む。
「……これほどの凶悪な破壊力。とても人間同士で使う代物とは思えん」
「まるで途方もなく強い魔王やドラゴンを相手するかのような、恐ろしい破壊力ですね」
「うむ。話で聴くより、この目で見た方がその恐ろしさを知れる」
「ええ……」
ナッセ殿のいた地獄の並行世界。
人間同士の争いは絶え間なく繰り返され、その度に殺傷能力を高め合ってきた。
その結果、非人道的な滅亡兵器すら作り得たという。
それは外敵の脅威から守る為ではなく、敵国の人間を大量殺戮する為に……。
……武器とはなんだろうか?
「レベルも魔法もなにもない非力な人間が、こうも殺意満々の武器を作るとは……」
「おぞましいほどに行き過ぎてますね……」
宮廷魔道士の“精霊導師”サリアという女エルフが白樹の杖をかざし、薄く輝く木の葉が渦を巻いて弾道ミサイルを阻んで大爆発させる。
その上、大量の木の葉が吹雪のように渦を巻いていて爆風や衝撃波すら通させない。
「ドリアプラタ葉舞壁! いかなる攻撃も通させません!」
黄緑のロング、先っぽが外ハネ。葉っぱの冠。緑のローブ。美しい顔立ち。
兵士や騎士たちは「うおおお! スゲー!」と歓喜する。
確かに熟練された緑魔法だぞ。
植物系に関連する魔法は結構レアで、魔力の高いエルフ族ですら使い手は少ない。
これほど大量に具現化された葉っぱで防御陣を敷くのは相当なレベル。流動的なバリアのようなもんで、衝撃波も流して分散させて無力化させてる。
「緑属性である師匠が得意そうなんだけど、あんましねぇんだよな」
「性質は活かしてるわよ?」
「え?」
肩に乗ってるヤマミ小人へ振り向く。
「……緑属性は『生産』の性質を持つ。師匠は『分霊』が得意で『ウニッ子』という分身を生み出すでしょ?」
「あー、そうだったな。でもヤマミも……」
「私は『血脈の覚醒者』の能力で『分霊』できてるだけ」
スタンバイスキル『分霊』は非常に難しいスキル。できる人は多くない。
どんな頑張ってもオレは生成できそうもない。
「緑属性の創作士は『分霊』が得意な傾向があるわ」
ハッと思い返す。
風の国の“球根霊の主人”カッコも球根型の『分霊』を生み出してたっけな。
妖精だから、あれほど大量に生産してたぞ。
「緑将五衆人が一人! “右花の演舞士”シトリ! 双黄樹の妖精王ッ!」
「緑将五衆人が一人! “左花の舞手姫”パーズ! 双黄樹の妖精王ッ!」
黄緑髪ショートの双子騎士。
男性の方は真面目そうで、女性の方は元気よく手を振って、揃って足元にポコポコと黄色の花畑を広げて、四つの羽を背中に浮かし、それぞれ左、右と片目だけに四輪の花模様が浮かび、妖精王化!
「「天樹双挟閃ッッ!!」」
シトリとパーズは剣を交差させ、左右横薙ぎを放つ。
すると扇状に剣閃が広がっていって、数百機もの魔神兵が上下真っ二つ。
「行くぞ!!」
「いっくぞー!!」
更に二人の軽やかなコンビネーションが快進撃を続け、数百機もの魔神兵が蹴散らされていく。
お互い考えている事が分かるのか、滞る事なく入れ替わりで剣を振るったり、同時に振るったり、死角を埋めるように背中合わせで全方向へ対処したりと隙がない。
「烏合の衆で僕らに勝てると思うな!」
「もうわたしたちを止められないぞー!」
オレ、よく互角に戦えてたなぁ……。
水色の髪ロング、ツリ目でクール顔、リボンがあちこち装飾されている薄布の衣服、エルフの女。
「“静水の暗殺者”ケレナ。緑将五衆人が一人よ……」
「弱そうなエルフが前線に?」
「馬鹿め!!」
「蜂の巣になりやがれッ!!」
魔神兵は機関銃で斉射して弾幕を浴びせかけるが、ケレナは鋭い目を細めて見据える。
そのまま弾雨がガガガガガガガガガガッと大地ごと激しく穿つ。
「殺ったり!!」
「へへ!」
しかし煙幕が晴れると、無傷のケレナが横向きで構えていた。
そして銃弾が足元に転がる。
「な!? 一体どうやってッ!?」
「ええい! 撃てェッ!」
ケレナは水流のように流れる動きで間合いを縮め、肘打ちと同時に水の刃が伸びて魔神兵の首を飛ばす。
手刀を振るえば、これまた水の刃が伸びて魔神兵の肩から腰まで斬り裂く。
膝蹴りをすれば同様に水の刃を伸ばして魔神兵の腹を刺し貫く。
後ろ回し蹴りで鎌のような水の刃が軌跡を描く。
それらは秒にも満たない刹那の間に行われ、気づけば大勢の魔神兵が真っ二つで舞っていた。
「速い……!」
御獣界で見かけたのと変わらない無表情な精霊。
全身から刃を出せる点ではオレやアメヤと同じだが、まるで違う。
ケレナが手刀で突けば、槍のように遠い間合いの魔神兵を次々貫く。
更に回し蹴りによるムチのような柔らかい水の刃が複数をまとめて斬り裂く。
これもほとんど目に見えないほどの速さ。
足踏みしたと思えば、地面を這わせて剣山のように複数突き出して周囲の敵を串刺しにしたぞ。
「オレもそこまでは思いつかんかったなー」
「……特に柔らかい刀身はあなたでも難しいでしょうね」
「ああ」
オレができるのはある程度の硬さを持った光の刃の生成ぐらいだ。頑張ればできるかもしんねーけど面倒だ。
そもそも鞭術なんて経験ねーし。
「体の一部を自然属性に変質できる精霊としての特性ね……」
突然、大木が生えだしたと思ったら目と鼻と口がある植物系モンスターっぽいのが現れた!?
「今度は何なんだぞ??」
「ゴーレム生成よ。緑魔法バージョンのね」
太い根っこの足と、葉っぱ広がる無数の腕が振るわれて、魔神兵をことごとく蹴散らしていく。
戦車を遠くに投げつけてトラクターに直撃させてドッカーン!
「わしゃ緑将五衆人が一人! “巨樹兵の主”キョレッサ! 緑ゴーレム『トレンサー』進撃ッ!」
「グワオオオオオオオ!!」
キョレッサはゴーグルを頭に、茶髪天然パーマのおっさんドワーフ。
騎士マントを付けてなければ王国騎士とは思えない風貌だぞ。
「アップルバクボ!!」
赤い木の実をばら撒いて大勢の魔神兵を爆撃していく。
弾道ミサイルが飛んでくるが「プランタ葉舞嵐!」と葉っぱの嵐で集中砲火して迎撃。空で大爆発が轟く。
「がーっはははははは!! 不死さえなけりゃこっちのもんよ!」
「グワオー!」
更に巨樹兵は戦闘機を叩き落としたり、根っこを振り回して魔神兵や戦車を一掃したり、口からのソーラービームを放って敵陣営を大爆発させたりと豪快だ。
王様に会った時は小柄なドワーフの騎士だったから、これは意外。
「緑将五衆人は、あと一人いるんだよな……?」
大きな戦車がキャタピラで走ってきて、威圧感たっぷりだぞ。
なんか上部に頭っぽいのがキョロキョロ見渡してて、赤い一点がピピピピ点滅している。
《サァ、ゴミ掃除ダ……!》
「今度はでかいな!」
「所詮は戦車! 付加魔法がある今、恐るるに足らず!!」
「砲身の向きに気をつけるんだ!」
オーラを纏った兵士と騎士たちが挑む!
頭が視認すると、大きな主砲が火を吹く。すると兵士の上半身がボンと吹き飛ぶ。
しかも側面の猛襲機関銃がパパパパパパパパッっと秒間に百発連射してきて、あっという間に騎士たちは蜂の巣を通り越して細切れの肉片に散った。
「な、なんなんだ!? コイツッ!!」
「退けッ!!」
しかしそれを逃さずパパパパパッと細切れに散らし駆逐。ドドンと魂が複数飛ぶ。
恐ろしいまでの反応と攻撃力を備えた撃滅大戦車……。
「ほう! 手応えのありそうなデカブツだな!」
なんと大柄な大男が騎士マントをバサッと脱ぎ捨てる。
灰色のボサボサ髪、筋肉隆々で上半身タイツ、下半身はズボン、ゆうに三メートルを越す高身長の男。
ニヤリと狂気に笑む。
「さぁ来い!! 儂はお前の全てを受けよう!」
《粗大ゴミハ、死ネ!》
撃滅大戦車は主砲をドカンと撃つ!
音速で大気を突っ切る尖った大きな弾丸が、男に被弾してドゴォンと爆ぜた!
勝ち誇って《ハーッハッハッハッハ》と笑ってきたぞ。
煙幕が晴れると依然と笑みを浮かべている大男が仁王立ちしていた。
額から血筋が流れている。怖い。
「無防備で受けて、この程度か……?」
《ナ、ナニッ!?》
「拍子抜けだ! ……暗黒化身!」
ビキンと全身の肌が褐色に染まり、髪の毛も白髪に! 大地を震わせるほど爆発的なエーテルを噴き上げてきたぞ!
地球で通ってた学校の秋季大会で対戦したあの男と同じッ!
撃滅大戦車は主砲を何度か撃つも、男のエーテルに阻まれて寸前で弾が爆散するだけだ!
今度は側面の猛襲機関銃で集中砲火!
大地を穿つほどの激しい弾雨の中を、ズンズンと大男は平然と突き進む!!
「儂は緑将五衆人が一人! “恐怖の鬼騎兵”ガオガーなり!!」
撃滅大戦車は《ヒッ》と怯えてキャタピラで後進しているぞ。
主砲と猛襲機関銃で乱射しているが、全く通じない。やがて弾切れになり、砲口が沈黙して硝煙を吹く。シュウウ……!
「なんだ、もう終わりか? ではこっちの番だ!」
《マ……待テッ!!》
狂気を解放してガオガーは駆け出して、素手で乱暴に解体作業だ!!
可哀想になるぐらい撃滅大戦車が《グアアッギャアアガッヤメッヤメアアアア……》と悲鳴を上げながらちぎられていく。
バリバリバリッ! グチャグチャバキッ! ゴキャゴキゴキベキバッ!!
最後に強靭な歯で頭部を噛みちぎり、ペッと吐き捨てる。
破片が散らばってて原型を留めていない。見るも無残だ……。
「物足りぬ! もっと強い鉄クズを寄越せ!」
修羅の形相にオレはブルッと身震い。
「た……対戦したくねぇ……」
「あんたの方が強いでしょ」
ビビってたら、ヤマミ小人にジト目で呆れられたぞ。
あとがき雑談w
緑将五衆人「緑を愛し、守護する精鋭の国王騎士です」
“右花の演舞士”シトリ「ご存知だと思うから省略な」
“左花の舞手姫”パーズ「いえーい! 可愛い女の子だよー」←男の娘
“静水の暗殺者”ケレナ「よろしく」
“巨樹兵の主”キョレッサ「ゴーレム職人もやっとるぞー!」
“恐怖の鬼騎兵”ガオガー「ハハハハッ! 猛者はおらぬか猛者は!?」
幼少期の上位生命体が三体も入っているので戦力は相当なもの。
『緑魔法』
新設定。植物を操ったり具現化したりするレア魔法。
プラト、プランタ、ドリアプラタと基本三段階。
次話『“神聖樹の勇者”ププラトって、影が薄いかな……?』




