162話「絶対封印! これが究極封印魔法陣!!」
まさかの『次元扉』が召喚された!?
これは任意のモノを任意の場所へ転移させる時空間魔導装置。それは異世界にも渡れるほど高性能だ。
この月……御獣界にも隠されていた……?
「できればまだ幼少期である全員は、これで異世界へ移住して欲しい。でも強制はしません。大会に参加して魔神デウスと戦いたい者もいるでしょうから」
思わず息を飲んだ。
とは言えレオナさんが強制してこないのはありがたい。このまま強制移住されたら悔やんでも悔やみきれねぇからな。
保護としては間違ってないんだが……。
「神獣王として私は残って、魔神デウスの封印を試みるですの」
「私も同じくです」
すると闇の霧が流れ込んできて、レオナさんの前でインボーロ跪いた姿で現れた。またかよ。
彼はすました顔を上げて。
「その前にワガママですが、今回だけは妖精王ナッセとの決闘を許して欲しい。決着を付けぬ事に心が晴れぬのです」
えぇ……、こんな時にオレと決闘したいんか!?
「あなたでは勝てませんよ」
「えっ!?」
レオナさんがさらっと言い捨てて、インボーロは驚きで固まる。
「妖精王ナッセはこの中でも最強です。そして悪魔の教皇や不死鳥、更にマリシャスをも倒した戦歴。天地がひっくり返っても勝ち目はありません」
「そ……そんなはずはない! あいつはきっと偶然や卑怯な手で上手く勝ったに違いない!」
「地上界を見てきた結果です。平和になってもナッセたちは修行を怠らず更に強くなってます。……あなたはこれまで何をしてきたんですか?」
「うっ……」
うへぇ……。論破されてしまったぞ。
インボーロは俯いたまま震えている。
「人族としての卑しい名誉欲や敵を叩きのめしたい加虐心がまだ残っています。そんな幼稚なままで決闘を許可するワケにはいきません」
「ぐっ! そ、そんな気持ちなどない! 悪いものを正そうと真摯に──」
「正義を盾に加虐を正当化するなら一番最低ですね」
「……うっ!」
「あなたが勝って負けても、確実に最悪な印象を周囲に与える事になりますよ。分かってて申し込んだんですか?」
完全完璧完封しちまったぞ……。
インボーロもさすがに「す……すみませんでした……」と頭を下げて、すごすごと引き下がっていったぞ。
「みなさん。彼はまだ未熟ですが、忌避せず広い心で成長を見届けて欲しい。精霊王として自覚し、やるべき事を見据えるようになれば、必ず頼もしくなるでしょうから」
レオナさんは庇うようにこう付け足した。
そうする事で、後腐れなく悪い印象を残さずに収拾できたみたいだ。
人族のと全く違うんだなぁ、と思い知らされた。
人族はこうなったら、白黒付けるために売り言葉に買い言葉から始まって、抑えきれなくなった激情のままにケンカおっぱじめる。
ルールも法律もぶっ飛んぢまうからなぁ。
そこに競い合う事で互い認めて仲を深めるような純粋さはない。
ただ相手を徹底的に叩きのめして、自ら力を誇示して優越感に浸りたいだけだ。だから侵略や戦争は絶えない。
そう、人族にとっては叩き潰して勝つ事が絶対であり真理。
「オレさ……、そういう意味で人間やめて良かったなって思えるよ」
「それは分かるわ」
女神アティマドの言ってたように『過ちを繰り返してこそ人族の本質』だもんな。
地球の歴史でもそれは語られている。
「それともう一つ……。魔神デウスの封印を手伝って欲しいですの」
トミナッユは両手を掲げると、球状の巨大な魔法陣が重々しくズゥンと現れる!
はち切れんばかりの魔力をひしひし感じる!
オレも誰もが驚きながら見上げた。
「あれは……ッ!?」
「すっごい魔力出てるー!!」
「見て! 中に三大奥義が一つ『賢者の秘法』が!?」
球状の魔法陣の中心で輝く球体が窺えた。
「これが『極大封印魔法陣』ですの!」
真剣な顔でトミナッユがそう告げる。
続いてレオナさんも分かりやすく説明してくれた。
この魔法陣は三大奥義揃った究極の封印魔法らしい。
極限にまで効力を上げる賢者の秘法、球体魔法陣内の魔法流を高速回転させる無限なる回転、そして瞬間的に停止した時空で対象を取り込む超越到達の領域で初めて成り立っている。
これを喰らえば、どんな巨大な力を持った相手でも封じ込められてしまう。
「以前にも魔神デウスを封じ込めた時も、この術でした」
「ええ、ですから発動時にみなさまの力を集約させて欲しいんですの。より効力を確実なものとする為、そして未来を切り開く為に、ですの!」
先人が苦労して作り上げた究極の封印魔法……。
これを大会で発動して魔神デウスを封印しようとするのだ。
オレたちは息を呑んだ……。
「今すぐにとは言いませんですの。しばしここで相談したりなどで、各々の答えを決めていって欲しいですの」
「──では、これにて集会は解散です」
奥行きの壁の穴から覗く、眩く煌く巨大な宝石が哀愁を誘う。
ぞろぞろと、みんなは各々の客室へ戻っていった。
オレもヤマミもクックさんも大広間を出て、客間へ戻る間もいろんな思考が巡っていた。会話もなく静かに歩いたのは久しぶりだ。
「現状、究極封印魔法陣でしか魔神デウスを倒す方法がねぇんかな」
ヤマミとクックさんと囲んでオレはボヤく。
「例え封印が成功しても、数百万年の周期で封印を張り直す必要があるわ」
「今回みたいな事あったら、また出てくるー!?」
「ああ」
トビーみてぇに誰かすげぇヤツがあっさり破りかねんしなー。
それだけが危惧だ。
オレたちの時代が平和に終わっても、遠い未来で復活されたら後味悪いぞ。
「未来の人たちに、そんなモン押し付けたかねぇな……」
「気持ちは分かるけどね」
魔神塔として作り替えられた塔は黒く陰気臭い……。
《トビー!! 何をしておるッ!》
ちいさなマロハーが塔の核である魔法陣へ力を注ぎ続けている。それを眺めているトビーは、魔神デウスの声へ振り向く。
姿を現した魔神デウスは唸りを上げて殺気立っている。
そして多くの金属人間こと魔神兵が赤く目を輝かせて包囲していた。
「見りゃ分かるでしょ~?」
そう、トビーは四角い箱を手にしていて、そこから魔法力の気流がマロハーへ流れている。
莫大な魔法力が蓄えられていたようでマロハーの消耗は限りなくゼロになっていた。
《何故、コヤツに魔法力を補給しておるのだ!?》
「大会前に力尽きては困りますからね~~」
それが我慢ならない魔神デウスは殺気立っているようだ。
《それがワシの狙いだ!! ヤツらに「実は希望は途絶えてました」と絶望を突きつける為に、わざと一ヶ月の猶予を与えていたのだ!! それをッ!!》
周囲の魔神兵たちが突っかかる瞬間、急に魔神デウスを球体魔法陣が包む。
ガッシリ絡め取って動きを封じてしまう。
すると糸が切れたように、魔神兵たちは目の光を失い一斉に横たわった。
《ぬうッ!? こ、これはッ!!?》
「あ~~余計な事しない方がいいですよ~~? 究極封印魔法陣は壊したワケじゃないのですよ。ただボクの時空間魔法で収納して、その間だけ効力を失わせただけですから~~」
《き、貴様ァ! このワシを謀ったかッ! この……!!》
「また御獣界へ戻してあげてもいいんですよ~~? ひぇっひぇっひぇ」
《ぐうッ……!》
すると球体魔法陣はトビーのかざした手に吸い込まれて消えてしまう。
魔神デウスは解放されて、胸をなで下ろす。同時に魔神兵も次々と起き上がっていく。
「いかがでした~~? って事です~~」
極大封印魔法陣はトビーの手中にあり、いつでも元に戻せる状態だ。
《……だが解せん! 未だ不可解だ! ワシを究極封印魔法陣で脅して思い通りに操る事もできた! 何故わざわざ大会を開いて人族どもと戦わせる!?》
「それが楽しみですからねぇ~~! こう見えても戦争ゲーム好きなんですよ~~?」
《ぬう……!》
「魔神、人族……どちらの味方でもないですからねぇ~」
ニタリ、と薄ら寒い笑みを浮かべた。
ほどなくしてパチンと一回拍手。
「ま、それに大会であなたが勝てば究極封印魔法陣は効力を失うまで取り込むつもりです。別に反故するつもりもないですからねぇ~~」
《その話、本当だな……!?》
「どっちが優勝するにしても、勝者を貶めるような真似はしませんよ~」
白々しく、飄々と、トビーは軽口を叩くように笑い飛ばす。
《道化師め……! 今に見てろ!》
「んん~~、ゾクゾクくるぅ~~! 魔神の憎悪も格別にカイカン~~!」
あとがき雑談w
トミナッユ「今回はこれを詳しく説明するんですの!」
『極大封印魔法陣』
三大奥義「賢者の秘法」「無限なる回転」「超越到達の領域」の三拍子揃えた最強の封印系魔法陣。
先代が苦心して開発したもので、代々神獣王さまが発動できるよう継承を繰り返してきた。
発動すれば対象を捕縛して、ルリナ周星で御獣界の封印室へ移転して留める。封印できる対象は一つの個体のみなので、複数の個体を対象にできない。
だが概念の存在すら完封してしまうほど超強力。対マリシャスとも言える。
とはいえ数百万年の周期で弱まるので、再び張り直す必要がある。
“征閃の光竜王”バルディマス「我々は総出で不死鳥を封じ込めようと必死になってたのに……」
レオナ「それは大変でしたね」
トミナッユ「複数を封印は流石にムリですの……」
次話『ナッセたち特訓!?』




