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159話「どっちが神獣王さま!? 百獣長レオナ!」

 ルリナ周星の内部に空洞があって、中心部には輝く宝石を核にして神殿が網目状の球殻(きゅうかく)になっている。

 その神殿の最上部大広間で、巨大な神獣王さまが佇んでいたぞ。


 二足直立のウサギ型御獣(ミケモ)族で、魔獣王らしい。


「えっと、何か用だったんか?」

《えっと……》


 この神獣王トミナッユは頼りないくらい内気的で、両手でモジモジ。

 えらいイメージ違うなぁ……。

 オレはてっきり神獣王って、百戦錬磨のライオンか狼みてーなワイルドな獣人だと想像してた。


「神獣王さま。今回はロープスレイ星にいる妖精王を集合させて、大事な話をするのでしょう?」


 今度は赤髪のライオン型御獣(ミケモ)族が入場するなり、そう言ってきた。

 神獣王さまは《そ、そうでしたの》としどろもどろ。


「ナッセ、ヤマミ、クックの三名さま。私は神獣王さまの補佐役である『沈着の百獣長レオナ』です。よろしくお願いします」


 無愛想な感じ。むしろ神獣王さまっぽいぞ。

 人族の女性と変わらないサイズ。赤髪ベリーショートで丸い耳が生えていて、顔面はマズルという黒い鼻で突き出ている。肌は毛で覆われている。

 服は露出度が高く、ややインディアンっぽい。


「今はまだ全員が集まっていないので、神殿(ここ)で休んで待っていただきます」


 ペコリと頭を下げてきて、オレも思わず「あ、ああ。よろしくお願いします」とお辞儀(じぎ)して返す。

 レオナは「神獣王さま。彼らを客室に案内します」と、トミナッユへ頭を下げる。


《た……頼みますの……》

「トミナッユさま。背筋を伸ばして堂々としててください。緊張するのも分かりますが、神獣王さまに即位されて何年たってると思ってるんですか?」

《うぅ……》

「ナッセさまたちも懐疑(かいぎ)的になってますよ」

《ひ、久しぶりの……客でしたの……》

「いいから、ビシッとしててください。ともかく彼らは私が案内しておきますので」

《は、はいぃ》


 レオナって人に尻を敷かれてる感じで、どっちが神獣王さまか分からねぇぞ……。

 トミナッユは恥ずかしいのか目を泳がせて縮こまってる感じ。


「新しく即位されたばっかなんかな?」

「いえ。即位されてもう一三〇年です。新しいといえば新しいんですが三桁の年月を経てもムカつくぐらい内気なのが変わりません」


 レオナ呆れてるみてーだ。日常茶飯事なんかな。

 アティマドは手を振って《ゆっくりねー》と微笑んで見送ってくる。

 大広間を出て、通路をしばらく歩いた後に部屋の前で止まった。


「今日はここでゆっくりなさってください。食料はこちらで用意しますから」

「レオナさん、ちょっと待ってくれ」

「なんでしょう?」

「突然アティマドさまに突然連れられて、何の準備もなく地上界を引き離されたんで一旦(いったん)は帰ら……」

「いえ。緊急事態なので突然で当たり前です。帰還は許しておりませんので、ここで泊まっていただきます」


 呆気に取られるしかない。

 なんか幻獣界ン時より強引だなぁ。ってか無愛想も相まってとっつき難い。意見を許さない圧を感じる。


「え──っ!! まだゲーム終わってなかった──!」

「それは気の毒でしたね」

「帰ってセーブしたいー!!」

(あきら)めてください」


 クックさんの抗議も粛々(しゅくしゅく)と退けて、融通も利かない。


「なんの用だか知らないけど、良からぬ用事であれば────!」


 ヤマミが黒い小人を無数、周囲で周回させている。

 殺気立っていてレオナを睨み据える。

 相変わらず無表情のレオナは小さい片手斧を掲げるなり、ブレさせて消す。すると小人が突然ボボボボンッと爆ぜて黒炎の余韻(よいん)が虚空へ消えていく。

 呆気に取られるヤマミ。オレはゾクッと背筋が凍った。


「悪い用事ではありません。緊急事態ゆえ、稀少な種族であるあなた方の保護と避難を行っているだけです。あんまり暴れないでもらえますか。あと私に勝てませんよ。()しからず」


 片手斧をぶら下げたまま、しれっと冷淡に言い放ってくる。

 特段威圧も殺意もなにもなく、涼しげな雰囲気。それだけに恐ろしい。

 塔の魔女に匹敵する強さ。


 ……その気になられたらオレたち何もできず全滅するぞ。


「今日はお疲れ様でした。どうぞ、ごゆっくりなさってください」


 レオナは淡々(たんたん)と礼儀通りの所作をして、去っていく。

 一見すれば無防備に去っていくように見えるけど、(すき)を見て逃げ出す事はできないかもしれない。どことなく逃がさない圧を感じる。

 いつでも捕まえられるから、普通に行動してるだけだ。


「まいったな……。大人しくするしかねぇんか」

「そうね」


 ヤマミは気分が優れないみたいだ。

 クックさんでさえ、神妙に突っ立っている。どうしようもない。


「斧をブーメランのように投げてたな……。それも電速級に」


 普通なら目にも映らないほどの速度だ。オレは微かに軌道が見えていた。かわせるかって言えば難しいかな。

 雰囲気的に神獣王さまより強いような……。

 むしろ神獣王さまになった方がいいじゃんって思う。


「見守る側の、なんかスッゲー強すぎんだよな」

「うん。強すっぎー!」


 震えるヤマミを抱きかかえ胸元に引き寄せる。


 魔王ジャオガさんが言ってたように、オレたちは人族では大人でも上位生命体としては幼少期。

 トミナッユとレオナは年上だから威力値は最低でも二〇〇万以上は確実。

 オレたちなんて文字通り子供扱いだ。歯が立たねぇ。




 大人しく部屋へ入ると、六人ぐれぇ泊まれるほど広いのが窺えた。

 天井は高く、三階ぐらい突き抜けている。交錯するように木の橋がいくつもある。


 ツタによるハンモック。丸太を使ったテーブルとイス。床の中心には岩で囲んだ温泉のような水場。

 壁際に大小様々な木が生えつけられていて、上の壁の足場へ登れるようになっている。壁には大きな(くぼ)みがあって身を丸めて休めれる空間になっている。

 明かりは天井からぶら下げ気味の光のツタ、床の(すみ)に光る花畑。

 すごく自然風味で幻獣界よりも雑な感じが窺える。


「うへぇ……」

「まるで動物園みたいね」

「風呂っはー!?」


 岩で囲んだ温泉のような水場を指さす。


「水浴びしろって事じゃね?」

「えー……」


 それから一部の壁には穴から水がチロチロ流れている。水道代わりなのだろう。

 葉っぱがたくさん積まれているのがあり、暖を取る為か。


御獣(ミケモ)族にとっちゃ居心地いいんだろうけどさ……」

「ええ」

「むー!」


 ヤマミもクックさんも困惑。


 人族として生活してただけに、イキナリこれはちょっと。

 魔族の国だって不慣れながらも配慮(はいりょ)してくれたぞ。




「あら、お久しぶりです。先輩」


 何時間かくつろいでいると、火の国のクーレロが入ってきたぞ。

 メガネをかけた黒髪ロングの女魔道士。そしてオレたちと同じ幼少期の妖精王でもある。


「クーレロも?」

「はい。火の大精霊イフガープさまに連れられました」

「こんな所だけど、くつろいでなー」


 やはりというか、クーレロも部屋を見渡すなり硬直したぞ。


「そういやマブボルトと一緒じゃない??」

「は、はい。あちらは竜王なので、下層地殻ヘルズプレートの日輪のファイファドラ竜国へ集合していきましたよ」

「あー、竜王は別なのか……」

「マイシもきっと一緒ね」


 それにしても妖精王集めてどうするつもりなんだろう?

 稀少な種族ってたから、幻獣界と同様「異世界へ避難しろ」って言いそう。

 神獣王トミナッユさまはともかく、レオナは強引にしてきそう。


 クーレロも交えてワイワイ談笑していると、他のも来た。



「ニャハ! 初めましてニャン!」


 なんとブリブリっ子な猫の御獣(ミケモ)族の少女が現れて、横ピースの構えで片目ウィンク!

 猫耳と尻尾はもちろん、やや顔、手足にケモ要素入ってるぞ!

 オレたちもクーレロもポカン。


「やーやー、同じ妖精王ニャンかー?」

「あ……ああ」


 トテテテと駆けてきて、クーレロに馴れ馴れしく背中をバンバン叩いて絡む。

 引きつるクーレロ。


「自己紹介いくよー? ワタシ、紫姫の妖精王アイナさんっじょー!!」


 オレたちも次々と自己紹介した所で、アイナはこちらを見る。


「噂のナッセヤン!? 男の妖精王かーい?? マジガチ初めて見たニャン!」


 アイナは馴れ馴れしく距離を詰めて、こちらの手を掴んでブンブン上下する。

 尻尾もフリフリして上機嫌のようだ。

 その後、オレの周りを回ってジロジロ見てきたり、嗅いできたりしてきて、むずがゆい。


「私の夫に近寄らないでもらえる?」

「えー!? 結婚してたニャーの!?」


 不機嫌なヤマミが割って入ると、アイナはビックリして()けぞる。



「醜い馴れ合いだね……。弱き者の戯れ……」


 また新しい妖精王が来た、と思ったら漆黒のマントを羽織った美青年だぞ。流れるようなオールバックの黒髪ロング。見下すような冷たい目。

 流れるように体の側面から黒い霧へと身を変えていく。


「えっ? 闇属性の妖精王ッ!?」

「フッ」


 流れる霧があちこちを駆け抜けて、何回か渦を巻いていく。

 気づけばヤマミの側で上半身だけ戻って冷笑を浮かべ、手を差し延べてくる。


「……私とつがいになろう。闇の、同じ上位生命体としてな……」


 しかしヤマミはその手を払う。


「結構よ!」

「む、もしや従者か……? 魅了か……?」

「魅了してませんし、私の夫です。悪く言ったら許さないから!」

「うっ!」


 気づけば黒い小人が包囲していて、闇の美青年は驚き戸惑う。


「夫とか嘘だろ! ありえない! 光の妖精王と闇の妖精王が相容(あいい)れるなんて!! 生来、相性が悪いはずだ!」

「ナッセ!」

「おう!」


 オレはヤマミと手を重ねて、輝きを放つ。

 凄まじい威圧を放ち、周囲を揺るがしていく。アイナは「うっそー!」と驚き。

 汗をかいて絶句する闇の美青年。


「バカなっ……! そもそも『連動(リンク)』なんかできないはずっ……!?」

「マジそれな! 目を疑ったニャンね!」


 アイナも両手の指差しでビシッとして、ノリノリ。


「つーかお前誰だぞ?」

「くっ! お前って言うな! 私は『冥影の精霊王インボーロ』だ!」

「「「精霊王ッッ!!?」」」


 妖精王ではなく精霊王!? ど、どうりで羽とかなかったワケだ!

あとがき雑談w


ナッセ「前から精霊とか出てたけど、精霊王なんて初耳だぞ?」

ヤマミ「どっちも『妖精の種(フェアリー・シード)』を摂取する事で昇華できるわよね?」

クックさん「妖精王の他にもなれるんっだー??」


アティマド「うん、実は『魔獣の種(ビースト・シード)』と『妖精の種(フェアリー・シード)』はそれぞれ系統があるよ」


魔獣の種(ビースト・シード)』竜王、魔獣王、魔獣など!

 魔獣はいわゆる妖怪と呼ばれていて、様々な容姿と人外の力を発揮するのが多い。割と個体数が多い。

 中でも竜王は凄まじい破壊力を持ち、天変地異のごとく。

 実際“王”が付くものは伝説の妖怪や竜とかレアな種族と見られる事が多い。


妖精の種(フェアリー・シード)』妖精王、精霊王、妖精、精霊、天使など!

 自然界に馴染むような上位生命体。不思議な力を持つものが多い。

 妖精系統はエルフの上位互換で、魔力が極めて高く、精神系能力が高い。

 精霊系統は自然属性と深く関わっていて、体を自然の事象に変えたりできる。(水属性なら、体を水に変える等)

 天使は人族の上位互換のような感じ。特性上、人族からでしか生まれない。個体数が妖精系や精霊系よりも圧倒的に多い。熾天使は“王”クラスの力を持つので個体数はかなり少ない。

 やはり“王”が付くものは精霊、妖精の中でも伝説的存在。


アティマド「好きに系統を選べないから、どんなんなるか分からないねー」

ナッセ「それガチャ!?」

ヤマミ「同じ事思ったわ……」


 “王”クラスの上位生命体になれたナッセたちは運が良かった!?



 次話『闇の精霊王と一触即発!? 月でバトルか!?』

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