158話「月は御獣界! そして神獣王登場ですの!」
ロープスレイ星を周回している月のような衛星は正式名称だと『ルリナ周星』だと言う。
オレたちは地球で馴染んでいるので“月”って呼んでた。
オレ、ヤマミ、クックさんは光の国を守護している女神アティマドに連れられて、月の内部へ入ったのだ。
「ここは……?」
《うん。『御獣界』だよ。地上界の人にはナイショしてね》
それは球状の外壁の内側に緑生い茂る自然の世界が広がっていて、川や湖などが窺えた。村とか町とか人工的な建造物とかないように見える。
更に空洞の中心へ向かって蜘蛛の巣のように細長い道が集約されていて緑がかかっている。中心部は真っ暗すぎて何も見えないかな。
そして夜のように薄暗くても不自由しないくらい程度に明るい。黄緑に淡く光っているツタがそこかしこに行き渡っているし、紫に光る花も多いからだ。
「しかし驚いた……!」
「まさか月に空洞があるなんて……」
「ひょえー! 秘密の世界きたー!?」
「あ!」
ふと自分のクツを脱いで裸足になった。
ヤマミもクックさんも裸足になって、それをアティマドは快く頷く。
「外見はただの月にしか見えねぇのにな」
「ええ」
「カモフラーッジュしてるー!」
《それはもちろんだよ。惑星ロープスレイを見守る為だから》
それもそのはず。月の内部へ行ける出入り口は存在しない。人族がここへ着いても入るすべはないだろう。
オレたちは泡のように膜で覆って内部へと沈んでいけたのだ。
アティマドいわく、一種の時空間魔法らしい。
「それにしても……」
「まっるでモフモフ妖精王さまの神っ殿だー!!」
確かに幻獣界の神殿の中と似てるなぞ。
だからこそ、ついさっき裸足になったのだ。
幻獣界と同様、裸足で神聖な自然の恵みをありがたくいただくのが理由。そしてマナーでもある。
「まさか、月っつーか上空に『御獣界』があるとは思ってなかったぞ」
《人族には分からないようになってるんだよ。まさかこんな世界がルリナの空洞にあるとは思わないでしょう》
「そんなに人族には知られたくないの?」
「つーか嫌われてんなぁ……」
「人族って不人気ー!?」
しかし女神アティマドは首を振る。
《過ちを繰り返してこそ人族の本質。未成熟で欲張りで争いを好むのは愚かですが、同時に可能性の塊でもあるのです。そうやって歴史を紡ぎ、妖精王が生まれてきたワケですしね》
にこり微笑みかけられる。
呆然としたが、概ね理解できた。大きな力を持っていながら見守る事に終始しているのは、人族の成長を信じているからだ。
それに人族をまとめるのは王様の役目であって、精霊や天使の役目じゃない。
するクックさんが「そういえばウイルはー?」と振り向いてきたぞ。
「あ! 家に一人で大丈夫かぞ?」
「大丈夫。私の黒い『分霊』が家に潜んでいるから」
「そういやそうだったなー」
置いてけぼりにしたままだったと慌ててたら、ヤマミが心配無用と言ってくれた。
予め潜ませている黒い小人で事なきを得たようだ。
こういう時は『血脈の覚醒者』便利だなー。
ヤマミをデフォルメにした黒い小人を前に、ウイルは飛び上がってたぞ。
「ええええ!!? いきなりさらわれたぁ!!?」
コクンと、説明していた小人は頷く。
他の小人が忙しなく動き回って、今日最後の家事に取り掛かっている。
「せっかちな女神さまもいるもんだな」
「それより宿題終わった?」
「い……いや、まだ」
「早く済ませときなさい!」
「はーい!」
ウイルは慌てて自分の部屋へ戻っていった。
黒い小人からずいぶん世話されているから、言う事を聞くしかなかった。
クソガキやってた頃、どっかで迷惑をかけてる所を見られていた。どこへ逃げても地形を伝播して追っかけてくる。どこへ隠れようとも隙間を伝播してきて見つけてくる。
ウイルにとっては逃れられない鬼みたいな感じだ。
可愛くデフォルメされている癖に本物と変わらない凄みあるんだなぁとウイルは思った。
部屋にはいるようには見えないけど、きっと見られているかもしれない。伝播能力で隙間に潜む事もできるからだ。
渋々宿題に取り掛かっていく。
救いなのは、良いタイミングでお菓子やジュースを差し入れてくる事か。
ウイルの事は心配いらない。確信した。
しかし神獣王さまは、なんでオレたちを呼んだのだろう?
《では行きましょう。神獣王さまの下へ……》
「あ、ああ……」
「マシュ様みたいにモッフモフかな────?」
《中心部の『神殿』まで飛んでいこか。ついてきてね》
アティマドは浮きながら先頭を行く。オレたちも妖精王化してフヨフヨついていく。
空洞は割と広く、中心部へ向かっている数多の細長い道は馬車が五〇両以上並んで走れるくらい太いぞ。
ちなみに重力の向きは中心部ではなく外側っぽい。道はどう見ても柱……。
「みてみってー! みーんな素手で登ってるー!」
「え!? 中心部への道って登るモンなのか!?」
御獣族が道をよじ登っているのを見て、衝撃を受けた。
《ええ。それこそが『登り御柱』だよ》
「柱……!」
思えばそうだ。オレは“道”と思い込んでいた。
その道だけ別に重力の向きが変わるワケじゃない。そのまま垂直にかかっているので、大きな木を登る感じでないと中心部へたどり着けない。
「ってか登り続けるの大変じゃねえ? 中心部までかなり距離あるぞ?」
「見て! 明かり!」
ヤマミの言う通り、光るツタや花を集合させた場所があちこち点在しているのが見えた。
そこで御獣族が暮らしていたり、休みの場にしたり、交流したりしている。思ったよりノンビリしてそうな環境だぞ。
《それに御柱は繊維の束なので、空洞があったり、木が横から生えてたり、隣の柱まで橋みたいにかかってたりと、見た目以上に登りやすいの。っても我々は飛べるので関係ないかなー》
てひひ、と柔らかい微笑みを見せるアティマド。
なんか案内ガイドみてーだ。
結構な距離で飛んでいると、薄ら雲みたいなのが漂ってきたぞ。
中心部を包む感じで雲ができてる?
下の地上っぽいのに川や湖があるんだから、雲があっても不思議じゃないか。
雲の中を飛び続けていると、雲海を飛び出せた。
「ええええっ!?」
「なに──これ──!?」
目を疑ったぞ!
なんせ巨大なニンジンを象ったキラキラとした宝石! それを包む網目状の球殻!
網目状の球殻から放射状に『登り御柱』が伸びている。
かなり巨大な宝石で、自ら光を放っていてカットでキラキラ反射している。
《これがルリナ周星、そして『御獣界』の核だね》
「網目状に包んでいるカラみてぇなのはッ?」
《神獣王さまが住まう神殿だね。魔神デウスの封印部屋もそこにある》
なんかビンビンすげぇ魔力を感じるぞ……。
近づいていくと網目状の球殻はかなり巨大で、中が管のように空洞になっているぞ。
遠くからだと分かりにくいが、中へ入れる穴がいくつもある。
内部はコケが覆い、ツタやキノコなどが所々。無数の大小無作為の穴から射し込んでくる宝石の光で神秘的な光景になっている。
部屋もいくつかあるが、ツタがびっしり阻んでいて入れない状態だ。
浮いたままアティマドについていくと、上へと進んでいって大きな広間へ出た。
瑞々しい木が茂っていて、後光のように宝石の光が放射状に射し込んでくる。
《ようこそいらっしゃったですの……》
思わず緊張して、竦んでしまう。頬に汗を垂らす。
のそりと立ち上がる大きな人影。
《光のライトミア王国より、ナッセ、ヤマミ、クック三名をお連れいたしました》
「クックさんと呼んで────!!」
「こら!」
《救済の女神アティマド、ご苦労だったですの》
《はい》
さっきまでとは違い粛々と頭を下げるアティマド。
ヤマミはクックさんの口を塞いで控えている。むぐむぐ。
「この御獣族が……神獣王さま……!?」
ウサギの耳がピョコン!
全体的に白毛。橙の髪の毛で後ろにロールを巻いている。鼻が突き出ている顔面。前歯が下へ伸びている。二足直立。
黄緑混じりの黒いドレス。下半身は足だけが見える長いドレススカート。上半身の方は逆に露出度が高く、膨らんだ胸をX状に覆っている。
《そうですの! 私こそが『氷兎の神獣王トミナッユ』ですの! んっんっ》
オレとヤマミは見上げてポカ───ン。
「マシュさまよりも、でっか──────い!!」
そう、クックさんが言っていた通り巨人みてーにでっかいぞ!
愛らしい風貌の割に超デカくて、別の意味で威圧感がとてつもない!!
あとがき雑談w
トミナッユ「は……初めましてですの。御獣界を治めているんですの」
『氷兎の神獣王トミナッユ』(魔獣王)
ルリナ周星こと御獣界を統治する神獣王。女性。
魔獣の種を摂取したウサギ種の御獣族が上位生命体に進化した。
御獣族だった頃はパッとしない創作士だった。
性格としてはトロい感じで自信なさげ。懸命に神獣王を頑張っている。
上位生命体として巨大な戦闘力を誇るも、戦う事は苦手なようだ。格上殺しタイプのナッセには負けるかも知れない。
威力値:2350000
ナッセ「ウサギって戦うの苦手そうだもんな」
ヤマミ「こんなのがトップで御獣界は大丈夫なの?」
トミナッユ「うう……、そういう印象ですのね…………(汗)」
次話『神獣王って威厳のありそうな感じなのに、残念なキャラで!?』




