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157話「感傷するキラリストの心情に変化……!?」

 ギルドのオッサンはオレを見るなり困った顔をしてきたぞ。


「逆にチート級に強ぇえクセして普通の仕事やってんじゃねぇよ、ってのが本音だがな。先輩として他の冒険者に手ほどきして欲しいくらいだぜ」

「たはは……」

「そうなのか?」


 キラリストに意外そうな顔をされる。


「だってせっかくの異世界でワクワクしたいからな」

「そうか。我はナッセの事をよく知らなかったなと、改めて思う」

「じゃあオレの事なんだと思ってんだよ?」


「正義感に満ち溢れていて悪を許さぬ強き者。揺るがぬ意志と信念で剣を振るう猛者。いつでも前を向いて毎日戦場を駆け抜けている。……そんな勇敢なイメージだった」


 うへぇ……、勇者セロスみてーに見られてたのかぞ。

 少なくともクックさんみてーに戦闘狂だと思われてなくてよかった。


「痛いのヤダだし、モンスターとかをバッサバッサ斬るのも気が滅入(めい)るし、できる事ならオレは戦いたくねぇ」

「ずいぶん弱音みたいな事言うんだな……」

「驚いたか? でもそれがオレの本音。平穏な生活が脅かされるのがイヤで仕方なく戦ってんだ。闘い自体好きじゃねぇ」

「……大会に参加してたのは?」

「ああ、あれ仕方なくなー」


 そもそも天覧武術大会だって、王国騎士たちに懇願されて参加させられたようなもんだしな。

 戦闘狂なのはむしろ王国騎士(あっち)の方だろ。

 オレと戦いたいって言うヤツは多い。

 もう参加禁止されてはいるが、毎度毎度撤廃(てっぱい)を申し込む王国騎士は後を絶たない。王様は頑として拒否してるけどな。


「コイツはそういうヤツだよ」

「まぁ……」

「そ……そうだったのか……!」


 あんま好戦的でないのを知って、キラリストは面食らったようだ。


「クエスト受けるのか、ダンジョン潜るのか、やらないんなら帰ってくれよ」

「へいへーい」





 冒険者ギルドを出て、付近の食堂で昼飯をいただく事にした。

 注文をして待っている間、キラリストはなんかソワソワしてて落ち着いていないのが窺えた。


「ナウォキたちが気になっているのか?」

「それもあるがな」


 チラッとこちらを見る。


「ナッセさんは、結構フランクな性格しているな。こんな親切に協力してくれもする。仕事を休んでまでな」

「実際オレも気になってるからなー」

「……ナウォキたちから相当ひどい事をされたはずだ。なぜ?」


 コトコトン、と料理がテーブルに並ばれてくる。

 手始めにジュースを一飲み。


「ああ。実際イヤな奴らだったぞ。思い出すだけでもムカムカすらぁ」

「すまない事をした」

「気にすんな。つーかナウォキたちってより魔神(マシン)デウスの誘いが、だよ」

「誘い……?」


 オレはフォークで料理をすくい上げて口に運ぶ。

 噛むと肉汁が溢れる歯ごたえ。旨味が口中に広がってくる。


「ロゼアット帝国への入国の誘い。アレ怪しいと思ってる」

「上空で浮かんでたアレか」

「ああ。あれが魔神(マシン)デウスだ。ヤベーヤツだろ?」


 キラリストは息を呑む。

 オレがモグモグ食べているのを見かねてか、料理にも手をつけ始めた。

 それぞれ風味が違ってて美味い。


「ナウォキたちは、たぶん帝国(あっち)へ行ったと思う。確証はないが性格的に行きそうだと思う」

「そんな事……!!!」


 キラリストは目を丸くして驚き、でも徐々(じょじょ)に細めて落ち着いていく。


「いや、あるか…………」


 オレはほっぺた膨らませてモグモグしながら頷く。


「特にナウォキはいつも不機嫌で当たり散らして、逆にとっちめられていたからな。いつもよく見る」

「ドカタで?」

「ああ」


 今度は米みたいなのを頬張る。うん美味い。

 最近広まってきた新しい料理だ。どっか異世界転生したヤツが広めたのかな?


「我も最初は同じ事してた。全然敵わなくて(あきら)めて大人しく仕事をするようになった……」

「ドカタさんたちにも冒険者上がりで強いのいるからなー」

「でも、ナウォキだけはずっと変わらなかった。いつも恨みづらみと上司たちを睨んでいた。そして「聖職者になったら思い知らせてやる!」と息巻くようになった。結果は教会で聞いての通りだがな……」


 教会の『聖火』によってことごとく不合格にされてたっけな。

 確かにこんな凶暴なら聖職者になって欲しくないもんな。


「まぁ、世の中にはどうしようもねぇ悪い人もいる。ナウォキはその典型的なヤツだ」

「……我としては変わって欲しかったがな」

「気持ちは分かるよ」


 キラリストはフォークを止めて(うつむ)いている。


「我も……その典型的な悪人だ……」

「自分を責めるなって。本当の悪人は自分で思わねーっての」


 でも罪悪で苦しんでるのが分かるぞ。

 本当、人が変わったなー。悪魔の教皇だったのが信じられねぇくらいだ。まさか変な入れ替えるヤツで別人になってたりしないよな?


「ってかさー、もう自分を『我』って言わなくてよくない? 普通言わねぇだろ」

「そうか……。同僚にも言われなかったから気にしていなかったがな。では、なにがいい?」

「一人称って色々あるからなー。僕、俺、私、ワシ、普通聞くもんなー」


 考え込んでいるのか、黙り込んでしまう。

 構わずオレは残りの料理を平らげていった。空になったジュースを見て再注文。ほどなく注がれてきて、さっそく飲む。


「お、俺は……」

「すぐ決めなくていいよ。いろいろ試して馴染(なじ)むヤツでいけば?」


 キラリストは少し柔らかい笑みを見せて「そうだな」と呟く。


 初めて見たな。そういう笑顔。いつも硬い顔ばっかで取っ付きにくかったし。

 全員が全員、心を入れ替えていけるワケじゃない。

 それでもウイルやキラリストみてーに、普通の暮らしを経て徐々(じょじょ)に穏やかになっていくのは良いなって思う。


「ナッセさんは、なんだか話してて安心できる気がする」

「呼び捨てでいいって」

「いや……そう呼ばせてくれ。どことなく心が洗われる気がする」

「たはは」


 なんか神格化してねーか? とは思うけど……。




 午後は城へ行って、監視係に聞いてみた。

 罪人に記される刻印(エンチャント)である『烙印(ギルティ)』ならば、少なくとも生死が分かるはず、と見ての事だ。

 ドカタから脱走して国内で隠れようとも見つけ出されてたっぽいし。


「あー……、死んでますな。消えてますし」

「国外に出て、だね」


 烙印(ギルティ)表の確認を取った兵と魔道士がそう告げてきた。

 そう『烙印(ギルティ)』は対象者が国内のどこにいるかか、生死の有無を確認する為の刻印(エンチャント)だ。

 国外へ出られたら範囲外なので、どこにいるか確認しようがない。ただし生死だけは確認できる。


 要するに、ナウォキたちは国外へ脱走して道中で死んだ。もしくは帝国へ入ったが殺された。どっちかだろう。


「三名の死亡は確認した。誠に残念な結果になりましたね」


 そう言われ、絶句して落胆するキラリスト。

 その結果を聞いてオレは察した。


「やはりか。魔神(マシン)デウスの誘いは罠だぞ」

「……罠!?」

「ああ。不老不死を与えると(かた)って、たぶんだが本物そっくりのニセモノに入れ替えてんだ。あいつら「心がない」ってたから、精神攻撃が効かなかったんだ。つまり魂はそこにいねぇ。本物は殺された」

「そん……な……!?」


 キラリストはガクッと崩れ落ちて茫然自失。


 気の毒だと思う。五年前まではそんな関係でもなかったのに、情が沸いたみたいな感じになってるのはおかしいがな。

 ともかく、身近で知っている人が彼らだったからか。

 いつしか分かりあって、気楽に笑い合える毎日を過ごせるようになれると理想を描いていたのかもしれない。


「帝国にそっくりのが……いる……?」

帝国(あっち)にナウォキたちは確かにいる。だが、それは精巧に似せられた人形……。本物と似て非なるモンだ」


 (うずくま)ったままキラリストは震えていく。


「私の責任だ……。あいつらを不幸にして死に追いやった」

「勝手に脱走したから自業自得だと思うぞ」

「だとしても……ッ!」


 それでも罪悪感すげぇから、何を言ってもどうにもならねぇな。


「私は……帰る。協力してくれてすまない。そしてありがとう……」

「困ったら言えよー」

「ああ…………」


 (さび)しそうな背中を見せたまま去っていくのを見送る。

 こりゃ時間で解決するしかねぇな。




 自分ちで晩飯を済ませた頃に、また来客が!?


「あ、あなたは……?」

「ってか今日は客が多いなぞ。しかし……」


 オレとヤマミは玄関で驚きを隠せなかった……。

 ピンクのウェーブがかかったロング。白い翼を模した純白のドレス。ほっこり優しい笑顔。淡く灯る両目。

 神々(こうごう)しいフォースが滲み出てるのが窺える。只人(ただびと)ではない。


《お初にお目にかかります。私はアティマドです。この国を守護する女神をやっています》


 しとやかな仕草(しぐさ)でペコリと頭を下げてくる。

 立場的に女神さんの方がずっと上なんだけど、驚くほど謙虚(けんきょ)だ。


「うそ……!?」

「なんつーか、悪魔の教皇や不死鳥(デマイズ)ン時には出てこなかったのに……?」

《出ようと思ったんだけど、あなた方が解決しちゃったからねー》


 え? フランクになった??


 背中から八つの天使の翼がブワッと優雅に広げられていく。

 すると一瞬にしてロープスレイ星を飛び出し、天の川が横切る星々煌く風景が広がる。驚くしかない。

 いつの間にか別室にいたはずのクックさんが側にいた。当の本人も「え? え?」とキョロキョロして戸惑っているぞ。


《いきなりでごめんね……、あなた方を『御獣(ミケモ)界』へ連れてくるよう神獣王さまに言われました》


 翼を広げたアティマドの背後から近づいてくる『月のような衛星』……。

 地球と月と同じように、ロープスレイ星を周回している衛星だ。まさかそれが御獣(ミケモ)界だとは夢にも思わなかったぞ。

 巨大化するかのように『月のような衛星』が視界を覆う勢いで迫ってくる。


「「うわああああああああああああ!!!」」

あとがき雑談w


アティマド「みなさん初めまして。私は光のライトミア王国を守護する天使(スリー)です」


『救済の女神アティマド』(天使族:熾天使/天使(スリー)

 光のライトミア王国を守護する光属性の女神。数百年と比較的若い。

 人族だった頃は弓兵(アーチャー)で、攻撃も回復も得意なオールラウンド創作士(クリエイター)

 かつてはスペリオルクラス『聖女(セント)』へ昇華して、とある厄災に打ち勝った。誰もこの事を覚えていない。歴史を書き換えた?

 なにかと秘密が多い。作中で明らかにされるのだろうか……?

 威力値:????(熾天使:????)


ウイル「俺は初めて知ったぞ」

魔神(マシン)デウス「ワシも知らんわ。誰だコイツ」


アティマド「みんなには、まだナイショだよ?」しー!



 次話『まさかの御獣(ミケモ)界へ!? 神獣王さまとは!?』

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