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156話「キラリストの頼み! 消えた元部下の捜索!」

 朝っぱらから空は曇で覆われている……。

 そんな天候の下で、家の玄関にドカタの格好をしたキラリストが来ていた。


「本当に知らないのか!?」

「ああ」


 なんつーか、昨日からナウォキとテンチュとボホモがいなくなっているらしい。気になってオレの所へ聞きに来たようだ。

 責任を感じているのか、切羽詰った顔で(うつむ)いている。


「頼む! 探すのを手伝ってくれないか!?」

「えっ?」

「我だけじゃ、目処(めど)が立っている所へ行っても門前払いされそうだ」


 正直いって驚かされた。


 こいつ、悪魔の教皇ン時は部下をゴミのように扱ってたらしいのに?

 もちろんナウォキたちも使い捨ての駒としか見ていなかった。どういう風の吹き回しか、かつての部下の身を案じるようになっている。

 他の()部下もドカタやってっけど、今でもキラリストを忌避(きひ)している。


「ってか、嫌われてるのになぜ?」


 (うつむ)いたまま黙ってるのも困るんだけどな……。

 これから仕事行きたいんだけど?


「分からない……」

「はぁ?」

「確かに我はあいつらをゴミのように扱ってきた。嫌われてもやむなしと思っている。だが、こう心につっかえる感じがするんだ」


 見上げてきたその顔は悲しそうだった。


「ナッセ! なにして──……」

「すまん、今日は休むぞ。連絡しとく」


 やってきたヤマミが小言をボヤこうとするのを、オレはこう返した。

 異世界(ここ)での伝言(メッセンジャー)となる『ツーバメ』を取り出す。

 ツバメの形に(かたど)られた魔法陣の空欄(くうらん)にメッセージを入力。紙飛行機を飛ばすようにリリースすると、シュンッと飛び去っていった。

 建物の中であろうがなんであろうが、すり抜けて送り主へ届けられる。


 しばらくするとツーバメが帰ってきて、それを手に取る。

 開くと「分かった。仕事はこっちに任しとけ。探し人が見つかるといいな」と記されていた。

 今度は「ありがとうございます」と入力して飛ばす。


「まったく……」


 ジト目で腕を組むヤマミ。オレは「わりぃ」と後頭部をかく。


「行くか?」

「悪いな。我のワガママで」

「いい。気にすんな」


 しおれているキラリストを放っておけなかった。

 五年前じゃ敵対して争い合っていたのにな。まぁいいか。




 まずはナウォキが聖職者試験に行ってた教会か……。

 立派な建物で、厳かな雰囲気がする。かつては悪魔の教皇による邪教団が排除しようと攻めていたらしい。

 そりゃ、行きづらいワケだ。


「すみませーん。人探ししてるんだけどー」


 オレがそう(たず)ねると、高位の神官っぽいのが来て客間へ通された。

 立派な部屋でソファーとかシャンデリアとか豪勢だ。(あが)める対象となる女神のシンボルマークを記された旗が壁に飾られている。

 テーブルを挟んで高位の神官さんへ、オレとキラリストがソファーに腰掛けて向かい合っていた。

 なんか白い炎を灯したランタンがテーブルの端に置かれている。


「わざわざ妖精王さまが訪ねてくるとは身に余る光栄。私はエイッス・ミラドナです。以後よろしくお願いします」

「ああ。よろしく」

「よろしくお願いします」


 丁重なお辞儀(じぎ)をしてきて、オレもキラリストも頭を下げて返す。


「すまねぇけど、ナウォキってヤツ来てねーかな?」

「……ナウォキさんですか? 来てませんね」

「聖職者試験を何度も受けていたが、落ち続けて悔しがっていた。結構正解を答えていたと言っていた。かなり猛勉強していた事は我も知っている。なぜなのか聞いていいか?」

「ええ」


 するとエイッスが端に置かれていたランタンをコトンと中心に置き直した。


「これは……?」

「ランタンが何か?」

「『聖火』です。聖職者試験でも、受験者一人一人が持って試験を受けてます」


 説明を聞くに、手に持ったら(よこしま)な心に反応して炎の色が変わるらしい。

 キラリストが掴み上げると、徐々に炎は水色に変わる。


「へぇ……、これは素晴らしい!」

「え? これって?」

(よこしま)な人が持つと(あざ)やかな虹色になるんですよ! この薄さは凄い! キラリストさんは本当に改心しているようですね! 普通の人並みです!」


 なんかエイッス歓喜してる。

 キラリスト自身も呆けるほど驚いているようだ。


「普通の人は大体こんなもんなんですよ。誰にでも弱いながら(よこしま)な心を持ちますからね」


 オレが持つと聖火は真っ白に戻る。


「え? 戻った??」

「これはこれで驚きですね。つーか初めて。ここまで真っ白はないわー」


 エイッスに引かれてしまう。

 ……妖精王だからなんだろうけど、なんていうかな。逆に納得いかないぞ。


「と、これは『光のライトミア王国』を守護している『女神アティマド』さまが授かってくれた『聖火』なんですよ」

「確か天使(スリー)だっけ?」

「熾天使です! 向こうさんは天使(スリー)って呼んで欲しいらしいですがね」


 エイッスはキリッと訂正を(うなが)してくる。

 とは言え、種族的にオレと変わらねぇ上位生命体だ。オレが幼少期なら、あっちは成体。先輩だぞ。



「って事はナウォキはこれで……」

「ええ。誠に残念ながら虹色に輝いてましたよ。本人は喜んで威張(いば)ってましたが」


 つまり邪悪満々って事か。

 人質取って呪いの新聞読ませようとしたりしてたしなー。仕方ないぞ。

 なんか隣でキラリストがズーンと気落ちしている。


「例え全問正解満点だったとしても、この聖火で落とされます。なので両方とも合格基準に達していれば受かる道理です」

「なぜ、こんなシステムを?」

(よこしま)な人が合格して入り込めば、組織は腐敗していく。これはそれを防ぐ為のもの。ましてや聖職者としてなら当然の事ですがね」


 あー、そういう事か……。

 高い地位や権力を目的とする(よこしま)(やから)が合格すれば、善良な人や信者を食い物にして己の欲を満たそうとする。そして欲を満たすのに都合よく組織を作り変える。それが腐敗。

 それは神に仕える聖職者として許されない事だ。


「我は、ナウォキがひたむきに寝る間も惜しんで勉学に(いそ)しんできたのを応援していた。ドカタよりも聖職者としてみんなを良き道に導くって夢を清々(すがすが)しく語っていた。それなのに……」


 かなーり落ち込んでるぞ。


「表面上は好青年っぽかったですがね、内面に邪悪な心を秘めているのでは致し方がない。残念ながら彼には落ちてもらって教会の秩序(ちつじょ)を守らせてもらいました」


 突っぱねるかのようにエイッスは首を振る。

 当然の事だ。彼ら聖職者にも守るべきものがある。悪しき者に土足で入り込まれないよう追い払う義務がある。


「ああ。来ていない事は分かった。ありがとな」

「押しかけて悪かった……」

「いえいえ、どういたしまして。それとキラリストさん気に病まないでください」


 



 教会を背景に、オレとキラリストは次の場所へ歩き始めた。


「今のお前なら聖職者試験、合格できるんじゃね?」

「……また以前のように信者を(ないがし)ろにしたくはない。二度とな」

「そうかー」


 二度と聖職者になるつもりはない。その決意した顔から窺えた。

 ドカタやってきて何を得たのか分かんねーけど、まぁいい傾向じゃないかな。


「次は冒険者ギルドだったっけ?」

「ああ。そうだ」




 大通りの道路の側で堂々と大きく立つ建物。看板は『ライトミア冒険者ギルド』と異世界の文字で書かれていた。相変わらず変わっていない。

 入ってみると冒険者が少ないように見えた。例の魔神(マシン)の件かな?


 受け付けのオッサンにナウォキたちが来てないか聞いてみたぞ。

 しかし首を振ってきた。


「……来てねぇか。やっぱなー」


 受け付けで相変わらず仕事をやってるオッサン。多く訪れてくる冒険者を頭に入れている。それでもやはり見かけていないとの事。


「何年か前に冒険者登録の申請(しんせい)をしてきたが拒否したぞ。三人ともな。『烙印(ギルティ)』付きの前科者が新規で冒険者になる事は禁じられている」

「まさか申請してたとはなー」

「どうして禁じられているか聞きたい」


 真剣な面持ちのキラリスト。


「冒険者とは殺傷力の高い武器や能力で戦う危険な職だ。間違えば犯罪者にもなりかねん。それに自分の命も脅かす。故に厳選した上で資格を与えて仕事をやってもらうのだ」

「じゃあ国王騎士は? 冒険者カードとか必要?」

「……両方資格を持ってる人もいないワケではないがな。王国騎士の資格は冒険者とは違う。なにしろ国を守る大事な職だからな」


 へぇ……、そういうの初めて聞いたな。

 だから王国騎士たちはオレに勧誘してたってワケか。王国騎士試験を受けさせようと必死になってたなー。

 あれがそうか。


「それを前提に、『烙印(ギルティ)』付きの前科者が冒険者資格を悪用されると我々冒険者としての信用が落ちる。だから登録申請は拒否するし、悪質な冒険者が発覚されれば直ちに資格剥奪する。盗賊たちが冒険者カード持ってないのはそういうワケだ」

「キラリストもムリか?」

「ああ。もちろんだ。悪魔の教皇による凶行は軽くも古くない。ギルドに悪評が立っては仕事にならんからな」

「すまない事をした……。謝って許される事ではなかろうが」

「だったら口ではなく行動で示すんだな」


 オレは首を傾けて「これでも改心してるんだけどなー」と口走る。


「いやいい。我にそんな資格はない」

「ドカタ頑張ってる噂は本当みてぇだな。今のおまえを見てて確信した。そういうのは評価するぜ」

「……そのように評価してくれると我も救われる」


 (うつむ)いたまま頭を下げる。ずいぶん殊勝になったもんだ。


「まぁ、わざわざ危険な冒険者になるのはオススメしねぇぜ。国の中で仕事をしている人が大半だ。安全だし生活も安定する。それにドカタも人々の生活を支える大事な仕事だ。しかし……」


 こっちをチラリと見て困惑してくる。


「逆にチート級に強ぇえクセして普通の仕事やってんじゃねぇよ、ってのが本音だがな。先輩として他の冒険者に手ほどきして欲しいくらいだぜ。なぁ」

「たはは……」

「そうなのか?」


 キラリストに意外そうな顔をされる。

あとがき雑談w


 異世界のメッセンジャー『ツーバメ』!

 時空間転移系アイテム。(ツバメ)の形に魔法陣が(かたど)っている。ピラピラ薄い。

 中心で空欄(くうらん)に文字を入力できる。開け閉め可能。

 リリースすると時空間転移して目標へ届く。


ナッセ「今になって登場したけど、前々からあるアイテムなんだよな」

ヤマミ「作中で使う機会なかったからね……」


マシュ「幻獣界や魔界など別空間で隔てている所へは届かないようです。よしなに」



 次話『キラリストのデレ展開!? セリフ変化も必見!』

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