154話「絶望の宣告!? 魔神デウスの宣戦布告!」
各国で通信討議を行っている時に、地震のように辺りが震え始めた……。
ゴゴゴゴゴゴ……!
《ふははははははっ! ワシの挨拶がわりはいかがだったかな?》
通信室にいるオレたちはモニターをもう一つ開き、それに映った夜空に巨大な土偶みたいな虚像が浮かんでいた。
世界中の人たちも空を見上げて不安そうにザワザワどよめく。
初めて見る魔神デウスの風貌に、オレも驚いてしまう。周囲もザワザワしてくる。
「あれが……!」
「虚無の魔神!?」
ヤマミを見ると「幻獣界の図書館で記録されている本の画像通りだわ」と言ってくる。
なぜ当時オレに教えなかったかというと、封印が弱まる周期が人間としての一生と重ならない為。よほどの事がない限り魔神デウスとは絡む事がない。
……そのはずだった。
「誰かが封印を解いたか、だわ」
「いったい誰が……?」
そう、誰かが意図的に封印を解かない限りは絶対出てこれねーはずなんだよな。
つか御獣界へ行った姉さんズどうしてんのかな?
《ワシは『虚無の魔神デウス』だ。大変長らく封印され続けてきたが、久しぶりの世界に心は晴れ晴れだ》
白々しい。「魔神には心なんて無い」って尖兵が言ってたじゃないか。
小馬鹿にされているようで腹が立つ。
《ほんの挨拶がわりだったが、骨を折ったろう?》
「ぐ……!」
《各国がそれぞれ滅ぼされず、対抗手段を得て守りきれて何よりだ。できなかった国もあったがな。もっとも我が軍勢で侵攻すれば滅ぼすのは容易だと、身に染みて思い知った事だろう》
目線の上から偉そう。無機質な顔面ではあるが、嘲っているのが窺える。
《そこでだ、一ヶ月の猶予を与えようではないか!》
「一ヶ月の猶予だと!?」
「何を余裕ぶってんだ!?」
おかしい。塔の魔女は一体どうしているんだ?
星塔は機能してねぇんか? さっさと吸い込んで魔境化すればいいのに!
音沙汰ないせいか、焦りが募る……。
《一ヶ月の間に、ロゼアット帝国へ入国せんとする人を歓迎しよう。その者に不老不死の魔神の力を与える》
「なんだと……!?」
《いいぞ? 魔神は! 痛みも痒くもなく、それでいて永久不滅! 何度壊されようとも無限に再生できる! そして永遠に生きながらえるのだ! それに魔神文明は娯楽に満ちていて苦痛とは無縁の世界! 一つの居住にいるだけでも安全な生活は約束され、映像で世界の全てを知る事が出来る!
さぁ、ワシと共に未来の道を歩もうではないか!》
空の虚像は右手を優しく差し伸べてみせる。しかしその掌がグッと拳に変わる。
《だが! 一ヶ月後!》
恐ろしげな響音がウゴゴゴと大きくなっていくと共に、虚像は下から赤く照らされたように映えていく。
恐怖で竦んでしまうような恐ろしげな雰囲気。
《ワシの軍門に下らぬ愚か者は────》
《はいは~い!! 一ヶ月後に『終幕の決戦場』という大会を開催しま~す!!》
なんとトビーが飛び出して、宣戦布告をしてきた!?
オレは思わず「トビー!?」と口走った。敵かと思ったら味方してくれたり、よく分からない人だぞ。
《みなさ~ん、ボクの事を知らない人も知ってる人もよろしくね~! “白面の厄介者”トビーで~す! 以後よろしくねぇ~! あ、二度言っちゃいましたか~~!?》
《トビー……!》
ウゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…………ッ!!
唸るデウスへトビーは「まぁまぁ」と両手で下げ下げして宥める。
《どうせワンサイドゲーム。始めっから詰んでいるじゃないですか~? ならば彼らにせめて花を持たせようと決戦場を用意してたのです~》
《トビー!! 貴様は何がやりたい?》
《貴方は永遠不滅の魔神でしょう? ずっと永遠に生きられるじゃないですか~? イジめるのだって他の異世界でもできるじゃないですかぁ~? ボクは魔人とは言え限りある命。せっかくなんだし、最期くらいゲームさせてくださいよぉ~?》
次第にデウスは落ち着いていく。
《よかろう。ワシを復活させたり、星塔の権能を奪わせたりと、貴様には恩がある。今回限り望むようにしてやろう》
《へいへ~い! それは身に余る光栄です~~!》
ゴマをすってニコニコするトビー。
しかし星塔の権能が? まさか姉さんズにも何かあったのか!?
「トビーッ!! 姉さんに何をしたッ!!」
モニターに叫んだところで届かないと分かってても、抑えられなかった!
しかし聞こえていたかのように、トビーは視線を合わせてニッと笑ってくる。
《塔の魔女さんはこの通り~~~~ん!》
トビーが指を鳴らすと、その側でモニターが浮かぶ。
星塔の上部の壁で二人並んで磔にされている。グッタリしていて動かない。
「サラ姉さん! エム姉さんッ!!」
《ご心配なく~~! 気を失っているだけなので悪しからず~~!》
モニターをプツンッと閉じられて、思わず「あっ!」と漏らす。
動揺が駆け巡り体が震える。
今すぐにでも飛び出して救出したくなる衝動に駆られる、がヤマミが手を優しく掴んできた。
「落ち着きなさい。大丈夫。トビーは他に狙いがあるわ……」
「あ、ああ……」
深呼吸して落ち着かせる。
トビーは前にオレたちを助けてくれた。敵か味方か分からないが、意味のない事はしない。
それに会った時は少なくとも悪意は感じ取れなかった。
《さてさ~て! 『終幕の決戦場』の大会についてですが~~》
今度は戦場となる仮想舞台が映像となって浮かび上がる。ヴン!
説明によると、半径三〇キロぐらいの円形闘技場。中心には『星塔』を据えた簡易的ロゼアット帝国。外側は草原、荒野、山岳、湖など地形がある。
そして円形の外周ではオレたちがスタートする拠点地がある。城壁で境を作っていて、内部には町になっている。
《あなたがたロープスレイ世界代表選手として、何人でも参戦は可能で~す! ですが注意なさいませ、一旦参戦したら勝敗がつくまで脱出不可能~~~~!》
「何ッ!」
「そんな事ッ!」
アーフォスさんは汗をかいて「つまり、参加したら退場不可のデスマッチかい」と自嘲。
生半可の覚悟では最終決戦に臨めない、という所か……。
《勝敗はカンタン~~! あなた方の全滅か、魔神デウスの消滅で決着ぅぅ~~!》
ザワッと各国の人たちは動揺していく。
「こんなムリじゃないか!!」
「どうやって不死身の魔神デウスを倒せるんだよ!?」
「ふざけてる!!」
「一方的過ぎる! あっちに有利すぎて話にならねぇ!」
「こんなの受けられるかッ!」
やはり罵詈雑言飛んでくるぞ。ブーブー!
オレは切羽詰った顔で汗を垂らす。
ヤマミと顔を合わせて頷く。そう、これは……。
《やっぱりねぇ~~! でもねでもねぇ~、『星塔』改め『魔神塔』はね~、災厄を吸収すると同様に、逆に魔法やスキルなどを吸収して消滅させる事もできるんですよ~~?》
ピタッと罵詈雑言が止まる!
《言いたい事分かるでしょうお~~?? このまま放っておけば、永久に世界は『魔絶』状態になって非力な人間として魔神世界に蹂躙されますからねぇ~~?
あ、妖精王も竜王も存在しなくなりますしね~! 完全消滅ってヤツ?》
まさに絶望とも言える宣言に、誰もが言葉を失って絶句する。
オレだって絶句する。
先ほど、尖兵の魔神と戦って分かる『魔絶』の恐ろしさ。
《否応なく大会に参加して勝たなければ、魔神の完全支配から逃れる方法はないのですよ~?》
もちろん妖精王であるオレたちは大会に参加しなければならない。
尖兵の『魔絶』と違って、魔神塔による魔法の概念の消失はオレたちの存在を脅かすものになる。これを許せば永遠にオレたちは消滅するぞ。
人族はレベルゼロの非力になり、これまでのような生活ができなくなる。
そして普段通り力を振るえる魔神から一方的になぶられるしかない。
ギュッと汗に滲んだ手で拳に握る。
もはや『星塔』が利かぬ今、他に魔神デウスを倒す方法はない。
どうしようもないほどの絶望ではあるが、それでも戦わなきゃならねぇ。勝ち目が見えない戦いであろうと、妖精王であるオレたちに逃げ場はないんだ。
それに姉さんズが囚われたまま、逃げるなんてできるワケがない……。
「やるしかねぇ……!」
「ええ!」
顔面真っ青で震えるしかないが、最後まで戦っていくしかねぇ!
《もがき苦しむよう、せいぜい悩むがいい! ふはははははははっ!!》
トビーともども魔神デウスはスゥ────……と消えゆく。
王様含め、王国騎士たちは立ち尽くすしかない。
底知れぬ絶望で気を落としかなく、オレは息苦しく顔を曇らす……。
あとがき雑談w
魔神デウス「勝手に大会開催とか、余計な事を……!」
トビー「だって作業ゲーで世界が終わるなんて面白くないですからね~!」
魔神デウス「まぁ、良い。ワシは如何なる方法でも絶対に滅びぬ。舐めプしてても俄然余裕だ」
匿名希望者「俺も同じ事思ってたらトーチャンたちに惨敗したんだよなぁ……」
次話『ロゼアット帝国は楽園!? 入国希望者の行方』




