152話「魔絶と不死! 魔神の最凶最悪な能力!」
「ダメですけ!! あの黒い輪を出さ……」
ボゲーが叫ぶ瞬間、バレミアットの背中から漆黒の輪が不穏に浮かぶ!
その輪郭が紅の炎に包まれている!
バレミアットを中心に円が広がっていって一〇〇メートル範囲外で紅く輪郭が妖しく輝いた!?
「う!?」
「なん……だ……!?」
なんかズシリと体が重くなった気がした。
「これが魔神の『魔絶』だ! 範囲内にいる敵のレベルをゼロにする! その結果、魔法やスキルが消失してしまうのだ! エーテルどころかオーラも出せんぞッ! ふははははっ!!」
不気味に唸る黒い輪を背中に、バレミアットは砕かれた左腕を再生し勝ち誇る。
オレは咄嗟に範囲から出ようと駆け出すが、恐ろしく遅い。
普通の人が走ってるのと変わんねぇ! いつもなら一瞬で抜け出せるのに!
……この状態を狙われたら!
「これ、マジでヤベェぞッ!」
バレミアットは両手の剣を嵐のように振り回していく。扇風機のように速度が上がっていって振動音が響き渡ってくる。
まるで剣閃で連ねた檻みてぇだ!
「無限ノ剣閃ッ! 旋閃重柵!!」
なんと剣閃の嵐を纏ったままにじり寄ってくる!
咄嗟にアーフォスは腰の剣を引き抜いて防ぐが、破片を散らして砕かれる!
「やばいね」
苦い顔ですかさず後ろへ退く! が、初動が遅くて間に合わない!
「ウモオオオオオッ!」
なんと金属の盾が飛んでくるが、バレミアットは剣戟で破砕!
それでも剣戟の嵐が一瞬鈍った隙を突いて、ゴレアックが固めた拳で頭を殴った!
「チッ! ダメか……」
ゴレアックの殴った拳は血が滲んでいた。
オーラも何もない無防備状態で金属を殴れば、拳が痛むのは当たり前だ。しかもバレミアットは平然と首をコキコキ鳴らす。
普段通りに戦えば頭部を木っ端微塵にできていた。
それに先ほどのアーフォスの剣も、普段通りなら剣戟の嵐を捌けていた。
やはりオーラやエーテルが出せないのでは攻撃力はおろか守備力もガタ落ち。かなり弱体化されている。
「どうしたのかな? さっきまでの威勢はどこへ行った?」
そのまま瞬殺すればいいのに、余裕ぶっているぞ。
剣を素振りするだけで、その余波でアーフォスの肩当てが裂かれる。破片が地面にカランと転がる。
「まいったね。どうも」
アーフォスは汗をかき、ゴレアックも身構えたまま仕掛けれない。
このままでは何もできずに殺されるぞ……。
「理解したか? 魔神に逆らう事の愚かさを! 今更、許しを乞うても遅い! 死……」
すると、音速を超えた光線が割って入り、バレミアットの頭部を破裂させた!
思わず射撃の元へ振り向いた。
ここから五キロほども離れた高い位置に、誰か一人。
「あ、あの栗色の髪の女は!? スナイパー?」
「あの距離で見えるのか? ……同じ五輝騎士の一人だ」
ゴレアックがまた説明してくれる。
五輝騎士が一人“煌きの狙撃手”ミゥサーア。
橙色の軍服みたいなのを着ていて、栗色のショートヘア。年は二十代。
狙撃特化の王国騎士。その気になれば一〇キロからでも狙撃可能で、動かない的なら倍の距離でもいける。
どうやら『魔絶』の範囲外からなら、通常通りに戦えるようだぞ。
闘技場を見下ろせる建物の上でミゥサーアは刻印創で生成した大弓で構えていた。
光の矢を装填している。
「この『翔飛弓』で逃さないでありますよ!」
キラーンと目を輝かせた。ふふふふ!
「ひゅう~、ミゥサーア君、助かったよ」
「待て!」
頭部を失った胴体は立ったままだ。背中の黒い輪も消えていない。
すると塵が集まって頭部が元通り。コキコキと首を鳴らす。
「魔神となった人間は不死身だすけ! オラァ何度も倒したんですけ、一向に死なんです」
「そういう事だ。我らは永久不滅の魔神。全てを超越した存在なのだ……」
冷酷で無機質な金属の顔が一層恐ろしく見えた。
また二撃目の射線が割って入るが、首を傾くだけでやり過ごされてしまう。向こうで飛沫がドッと舞う。
「もう狙撃はマークした。二度は通じんよ」
こっちはオーラも出せず、魔法も使えず、ただの人間に成り下がって、アイツは通常通りに戦えて死なねぇ!
こんなヤツ、どうやって倒せばいいんだ!?
「さぁここから一方的な殺戮だ! 後悔しながら死ね!!」
再び光線が飛んできて、バレミアットは軽く避けたが二撃目で腰を砕かれ、更に三撃目で頭を吹き飛ばされる!
ミゥサーアは「甘いでありますよ!」と得意げだ。フフン!
連射できて正確に狙いすませんのかよ、流石にオレもできねぇ!
やっぱ五輝騎士ヤベェ!
悪魔の教皇戦で全滅したのがウソに見える! いや力の差分かってんだけど、なんか信じられねぇ!
バラバラに散乱していたのが、超速再生して何事もなかったかのように起き上がって、射撃の元を見据えた。キッ!
「ウザいな!」
ミゥサーアは「ひぇえ、であります!」とコソコソ退避。
ともあれ、狙撃効いたって不死性をどうにかしないと、どうしようもないな。
「ナッセ君、なんかいい方法ない? 割とヤバいんだけど?」
「うーむ……」
するとクックさんがボウッとフォースを噴き上げて、足元に花畑を広げて、背中に六つの羽を浮かせ、妖精王化した!?
思わず「ええっ?」と漏らしたぞ! アーフォスもビックリ!
「うにあーっ!!」
そして瞬時にバレミアットへウニメイスを振り下ろす!
グシャア、と全身潰して粉々に!
「え……? 妖精王なれんのか!?」
「うん」
オレも「はあっ!」と足元からポコポコと花畑を広げ、銀髪がロングに伸びて六つの羽を浮かして、フォースを噴き上げた!
人族は無力化されるけど、妖精王ならオッケーか!
「よし!」
アーフォスは白目で引いてた……。
「やっぱ規格外だねぇ……。こいつら恐ろしいわ」
「わ、わりぃ……」
「でも今は頼もしいよ。しかし」
アーフォスは冷静に、散乱している破片へ視線を移す。オレも移す。
木っ端微塵になった破片が集合していって管で繋いでいってメキョメキョと元通りに復元されてしまったぞ。
まるで壊される前と変わんねぇ新品同然だ。
「うにりゃ────っ!!」
クックさんはウニメイスをメチャクチャに叩き続けて、微細なまでに粉々にしてしまう。
やはり瞬時に戻って「なにかしたかね?」と不敵に笑われる。
「むむー!」
「これはどうだッ!? スターライト・キャノンッ!!!」
光の剣を振るって放った光線がバレミアットを跡形もなく吹き飛ばす!
しかし塵が集まって瞬時に元通り。
「どのようにしたって、無駄さ……」
「オイオイ、そんなのアリかい。反則でしょ」
アーフォスも驚きを隠せない。ゴレアックも「むう……」と唸る。
地面を走る黒い筋が二つバレミアットの足元に触れると、黒炎が燃え盛って獰猛に喰らい尽くすように轟々呑み込む。ゴゴゴ!
振り返れば観戦席にいるヤマミの周囲で黒い小人が踊っているのが見えた。
燃やし尽くすまで消えぬ闇属性の炎なら……?
「無駄無駄ァ……」
灰になってさえも瞬時に人型へ戻って余裕綽々に笑んでくる。
「魔神は永久不滅って聞いてたけど、手下でさえコレかぞ!?」
「ええー! どうやって倒すんっだー!?」
「うーん、まいったねぇ……」
バレミアットは「はははは」と万能感に浸って大笑いだ。
オレはハッと思いつき、手を天に向かってかざし、花吹雪が収束していって鈴を創造していく。
スイカの大きさほどの純白に燦々輝く鈴────!
物理攻撃で倒すのがムリなら、精神攻撃だッ!
「トゥインクルサニ──ッ! 快晴の鈴ッッ!!」
オレはバレミアットへ振り回す! キィンと直撃!
「ぐうおッ!?」
鳴り響いた音色と共に、暖かい光の波紋が広げていった!
キラキラ光飛礫を撒き散らし、純白の蝶々の群れがブワッと舞い、たちまち明るい世界に!
この場にいた人間は呆気に取られる!
どんな悪意に満ちた人間でさえ、これを喰らえば強制的に浄化される!
いかに不死身の魔神といえども────……!
「フッ! 我ら魔神に“心”など存在せぬ! そんな精神攻撃など効か──」
平然とバレミアットが剣を振り下ろそうとしてきてビックリ!
マジで効かねぇのかッ!?
しかし、バレミアットの額に大剣の切っ先がコツンと。
降ってきた重力の滝がバレミアットをクレーターに沈めた。ズン!
振り向けばアーフォスが片目ウィンクしてくる。
「いや効いてるよ。魔絶、例の黒い輪が消えた。この通りスキルが使える」
拡陣を展開しての超重力で沈めてくれたようだ。
そこをゴレアックが懐剣を振り下ろして地面ごと上半身を打ち砕く。爆ぜて破片が飛び散る。残った下半身だけが痙攣する。
「不死性も消えるようだね」
「あ……、本当だ」
さっきまで何度も瞬時に再生してたのに、今は全然だ。
アーフォスは手際よく高位の僧侶を三人呼び込んで、バレミアットの破片をツボへ厳重に封印してしまう。
「時間が経てばまた再生しちゃうかもだからねぇ。やはり、今回の件もナッセ君が魔神攻略の鍵となるね。その時は頼むよ」
「……ああ」
息を飲んで、オレは気を引き締めていく。
あとがき雑談w
バレミアット「くそー! 尖兵ってそんな役割だから嫌なんだ!」
さて、今回の『魔絶』とは!?
魔神デウス「範囲内にいる生物のレベルを強制的にゼロへ変えてしまう。つまり可能性を閉ざしてタダの無力な人間同然に! この時の人間など銃弾で容易く死んでしまう! 鈍い! 脆い! 弱い!
そして信念、努力、経験など無意味ッ! ふははははッ!」
アーフォス「最低最悪な貶めだねぇ……」
ゴレアック「尊厳も何もあったもんじゃないな」
次話『魔神の尖兵が世界各地に……!? ついに侵攻開始か!?』




