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150話「最強格の王国騎士が激突!」

 大音響の歓声が響き渡る最中で、闘技場台の魔法陣へと歩む騎士が二人。

 彼らは五輝騎士(シャイン・ファイブ)であり、オレも苦戦を強いられた実力者だぞ。


「騎士オジさんズの激突だーっ!!」


 クックさんは興奮してはしゃいでいるぞ。うにーん!


 白髪交じりのオジさんって感じの重厚な騎士で橙のマントが特徴。

 彼は王国騎士最強格であり、総隊長でもある“轟沈(ごうちん)(せい)騎士(きし)”アーフォス。


 それに対するは、頑強な鎧を纏う牛のツノと尻尾が生えていて手足が毛むくじゃらの御獣(ミケモ)族の騎士。

 パワーだけなら王国一で、総隊長候補になっている“不動(ふどう)重鎮騎士(じゅうちんきし)”ゴレアック。


「またゴレちゃんかい。他もちっと頑張って欲しいね」


 穏やかそうに笑うアーフォス。それに対する強面のゴレアックはフッと笑う。


「確かに勝ち抜いている多くが王国騎士だからな。日々修練を重ねているか否かで差が出るのはしょうがない」

「ん、まぁ。どこぞの元から強いクセに、更なる修行を重ねてヤバい強さになってる二連覇英雄サンもいるがね」

「根本からして種族が違う。国として頼もしい限りだがな」

「俺からしてみれば怖いよ」


 怖い、と言っている割に穏やかに笑うアーフォス。

 二人とも魔法陣に足を踏み入れると、カッと鋭い眼光を見せ合った!


「おしッ! ()るかッ!!」

「承知ッ!!」


 仮想戦場で二人は好戦的に笑みながら大地を蹴って爆発!

 アーフォスの西洋剣と、ゴレアックの両手で持つ握り懐剣が激突!!

 大地が爆ぜて破片が四散!


「ウモォオオオオオオッ!!」


 ゴレアックは憤怒と両手の懐剣による乱打を繰り出す!

 それに対してアーフォスは西洋剣一本で捌ききっていく!


 キィン、ギン、キキン、ギィン、ギンッ、キギン、キィン、ガキィィンッ!!


 激しく鋭く軌跡が乱雑に踊り、離れている周囲にも余波が及び断続的に爆ぜていく!

 嵐のような剣戟に観戦客も興奮して歓声が湧き上がる!



「アーフォスさんの『刻印創(エンチャントメイク)』は『地裂剣(ブレイクソード)』。ゴレアックさんの『刻印創(エンチャントメイク)』は『粉砕の拳斧(クラッシュナックラー)』」

「ってかハナッからガチバトルかよ!」


 ウイルが驚いたのもムリもない。

 消費を抑える為に通常の武器を使っていくとか、相手の能力を見極める為の様子見とか、そうするのが定石なんだが……。


「あの二人は何度も試合(しあ)ってるからなぁ。嫌というほどお互いのクセを知っているから、様子見など要らない」

「とんでもねぇ奴らだな……」

「だな」



 いつの間にかアーフォスは両手に西洋剣で二刀流!

 ゴレアックと同様に二刀流の手数で激しい応戦を披露! 軽やかな捌きで重量級の懐剣による乱打を凌ぎきっている!


 ギキィン!!


 アーフォスは双剣を交差させて懐剣を押さえ込む!

 すかさず左の懐剣が飛んでくるのを見て、剣の柄尻で突き上げて弾く! 武器になるのは刀身だけではない! 武器のあらゆるものを余す事なく使い、攻防一体に利用している!


破轟(ブロアー)ッ!!」


 ゴレアックは渾身込めた突きを繰り出し、エーテルの塊を飛ばす!

 それは地面から飛沫を吹き上げるほどの速度と威力だ!


「はあッ!!」


 アーフォスは飛び上がると、一気に空高く舞っていく! 驚くほどの跳躍力(ジャンプ)だ!

 今度は一気に急降下して両手で握る一刀の剣で振り下ろす! それを見上げたゴレアックは握り懐剣を交差して防ぐ!

 ズン、と足元が陥没して土砂を巻き上げる!


「ナッセの真似事か?」

「うん。慣れない事はするもんじゃないね。手が痺れる」


 両者、間合いを離れて睨み合い。



 それを見て驚いたウイル。


「おい! アイツ、トーチャンの技を真似したぞ?」

「んん……。前と違うな。やはり戦い方を増やしたか」


 以前は敵を詰めてきた技巧派だったんだが、今度は蝶々のように舞う動きも見せてるみてーだ。

 挙動で、脚力による跳躍力じゃない事が見て取れる。


「重力を操る王国騎士ね」

「ああ」


 ヤマミの言った通り、アーフォスは地属性の王国騎士。

 戦士系のクラスの為か派手に大規模な大地操作をする事はできないし、効力範囲も数メートルしかないが、重力を自在に操る剣術を確立させている。

 まさしく接近戦に持ってこいのスキルとも言える。



 ゴレアックはフッと笑う。


「どうした? 私に『重枷(ウェート)』を付加して詰めるのではなかったか?」

「ん? 既に見切られている技なんて仕掛けないよ」


 アーフォスは片目を瞑って飄々(ひょうひょう)と振舞う。


「正攻法過ぎて面白くないな」

「この怪力バカ。逆手に取って攻撃力上げてくるからヤだよ。前に何発か付加させて動き止めようとしたら、逆にピンチに陥ったからねぇ。ヤバかったわ」

「では軽くして攻撃力を下げれるヤツは試さないのか?」

「ありゃ、まだ『浮枷(フロート)』見せてねぇってのにヤだね。どうせ解除する(すべ)持ってんでしょ。ますます乗れないねぇ」

「フッ、食えぬな……」


 再び両者は目にも留まらぬ剣戟の嵐を巻き起こしていく。


 ガギィン、ギギン、ギィンギッ、キンキン、ギッ、ガギギッ、ギギィン!!




「アーフォスさんは切りつけた部位に重力の塊を付加させる『重枷(ウェート)』の地魔法(ガイア系)スキルを持つ。刀身で触れている時間が長いほど重くなっていく。何発も同じ所に入れても増す。それで敵は徐々に動きが取れなくなって沈む」

「よく勝てたな?」

「オレも正直まいったぞ。強引に魔法力で注ぎ込み『重枷(ウェート)』を破裂させる事で解除しまくってた」


 ヤマミは「力技ね。ナッセでなきゃできないわ」と呆れる。


光魔法(レヴ系)の補助系『解呪(キアセ)』『聖解呪(セントキアセ)』でも解除できるから、コスパを考えるとこれか」

「覚えてたのにね……」

「追い詰められてて焦ってたからなぁ」


 光魔法(レヴ系)には敵にかけられた不利になるような呪いや魔法などを解除する補助魔法が豊富だ。

 ちなみに初歩なのが『解呪(キアセ)』で、『聖解呪(セントキアセ)』は上位解呪魔法な。特に上位は高レベルの僧侶(プリースト)でないと使い手いないってザラだ。

 厄介な呪いの武具を外せるのもこれ。


「話を戻すけど、今のアーフォスさんは自身の重さを自在変えて戦う戦法を取るようだ。軽くなってかわし、重くして攻撃する、って感じな」



 ガギィィィン!!


 アーフォスの一太刀で、怪力無双で巨躯のゴレアックが押されている。足元が陥没。

 まるで巨人と戦っているかの様な錯覚さえする。

 一撃一撃振るうたびに重々しく衝撃音が響く。


「……その消耗で最後まで押しきれるか試すか?」

「この野郎。初見で俺のスキルを見抜かないでくれよ」


 アーフォスは皮肉るように笑む。



「ただ重さを変えるだけじゃないかもな。重力の向きも変えてるくさい」

「それ合ってるかもね」


 オレの推測をヤマミが同調する。

 でなきゃ、重くなって自分で剣持ち上げられねーからな。下方向のみだったら、オレのフォールみたいな事をするぐらいしか使い道ねーし。


「ティオス先輩出てたなら、どっちが強いか見れたのにな」

「ん? 大会に出てない?」


 ウイルの言葉にオレは首を振る。


「なーんか『洞窟(ダンジョン)』潜ってて、変なのもらって数日寝込んでいるみてーだ。って事で絶賛後悔中だそうだぞ」

「バカかよ!」

「たはは……」


 クックさんが試合観戦に夢中で「やったれー!!」と拳を振るっている。


 もしティオス先輩も参加してたら、色々大波乱起きそうなんだがなー。

 何を思ったのか、近くの『洞窟(ダンジョン)』へ潜ってたらしいな。なんかあって倒れた後、同僚仲間に運ばれて自宅で寝込んでいる。


「あなた治さなかったの?」

「いや、根性で治すって言って聞かなかったぞ」

「何考えてんの……」


 ヤマミもジト目で呆れる。


 まぁ今に始まった事じゃないしな。

 ティオス先輩って、こう決めたら頑固で曲げないから……。



 アーフォスが(ツバ)に魔法陣を重ねた大剣に変化させて振り下ろす!


拡陣(マギオーバー)ッ!! 『万重地裂剣ギガディ・ブレイクソード』ッ!!!」


 重力の柱でズン、とゴレアックを巻き込んで広範囲に大地が窪んでいく!

 想像以上の威力で、さしものゴレアックもミシメシ体が軋み、鼻血を噴き、白目で「ぐがあああ!!」と苦悶!


拡陣(マギオーバー)ッ!! 『完全粉砕の拳斧スプリンクラーナックラー』ッ!!」


 重力の柱が破裂し、周囲が爆ぜてメチャクチャに粉々になった破片が飛び交う!

 その飛んでくる破片を受けて呻くアーフォスへ、同じく(ツバ)に魔法陣を纏うドリルのような形状の懐剣を手に憤怒のゴレアックが巨躯で迫る!


「ウモオオオオオッ!!」

「来るかッ!!」


 ズッドオオオオォォォオンッ!!


 二つの巨大な力場が衝突し、広範囲に衝撃波の波紋が荒れ狂って天変地異が如しの様相を見せた!

 ウイルは青ざめて「ホント、よく勝てたな?」とオレへ振り向く。

 苦笑いするしかない。



 試合が終わってアーフォスとゴレアックがグラウンドの闘技場台の魔法陣に還ってくる。


「あー、ヤだわ。年は取りたくないもんだね」

「まぁそう言うな。今回はたまたま私が勝っただけだ」

「ん、優勝したら(おご)ってくれんかね」

「考えておこう」


 歓声が轟く最中、長い付き合いの二人はゆっくりと退場していく。

 すると一筋の光が広大なグラウンドへ飛び込んできて、二人は驚いて着地点へ振り向いた。

 煙幕の中から現れたのは一人の勇者!


 ギザギザ短い黒髪の肌黒くて毛深い小太りオッサン。卑しそうなタレ目。盗賊のような衣服で勇者には見えない。破けた茶色の臭うマント。


「ロゼアット帝国の“砂漠の蛮勇者”ボゲーじゃないか!?」


 しかし血塗れでへたりこんだまま息を切らしている。瀕死っぽい。


「おやまぁ。帝国の勇者さんかい。これは……」

「む、追っ手だ。来るぞ」


 またなにか塊のようなのが追いかけてきて、グラウンドへ降り立った!

 全身銀色に反射光で煌く人間!?

 背が高いオジサマって感じで、鎧を纏ってマントを(なび)かせる。硬い表情が無機質っぽい。ギロッと勇者ボゲーを見下ろす。

 背中から二つの片手剣がひとりでに飛び出して両手に収まる。


「我が帝国に従わぬなら始末する! 覚悟!」

「くうッ……!」


 それを見てゴレアックは目を細める。


「確かロゼアット帝国の六帝騎士が一人、“千閃騎士”バレミアットか?」

「硬い人と聞いたけど、全身金属は聞いてないねぇ……」


 アーフォスはダルそうに首を傾げた。



 違和感を禁じえない金属人間に、オレもなんか猛烈にヤバい予感がしたぞ。

あとがき雑談w


 ロゼアット帝国の“砂漠の蛮勇者”ボゲーは見た目が盗賊すぎて、悪人の印象が拭えない感……。


ボゲー「失敬な! こんなんでも武勇の女神(アサペンドラ)さまに認められた勇者(ブレイバー)ですけ!」


 本来ボゲーたちは五人パーティ構成だったが、今回は一人?


爆拳格闘王バ「キャラ多過ぎると困るから省かれたか! ハハッ」

堅牢戦士ゲニゲ「オッサンだらけのパーティだからなのか!?」

流動僧ララニ「ワシャ、デブおっさんよ(泣)」

荷物運搬士ローワ「俺もオッサンでただの運び屋だもんなぁ……(諦念)」



 次話『金属人間は魔神(マシン)の刺客!? その恐るべき力とは……?』

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