149話「盛り上がる天覧武術大会!!」
不穏に虚無の闇が世界を食い尽くそうとしている……。
そうと知らず光のライトミア王国はイベントで活気が沸いていた。
王国の西側で仮想対戦コロシアムという巨大なドーム場で賑わってて大音響が轟いている。
「「「どわああああああああああああああっ!!!」」」
円を描く建造物で、等間隔の柱が並ぶ外壁。レンガ建築。
内は、階段状の観戦席に囲まれた広大なグランドの中心に闘技場台がある。その台のタイルの上で魔法陣が二つ。
そしてその上で複数のモニターが浮かんでいて、仮想戦場の様子を映し出していた。
対戦してるのは十二光騎士で三番目に強い“氷牙のファスタ”と五輝騎士の“雷鼓天の主”シュルアだぞ。
槍士のファスタは青髪ツンツン頭の優男イケメンで、遊撃士のシュルアも緑のロングで耳が左右に尖っているエルフのイケオジ。
縦横無尽に振るわれる槍と、それを捌く剣が火花を散らし、周囲に余波で荒れ狂っている。
ファスタは任務に忠実で冷徹。刻印創で作り出す『氷牙槍』は氷の槍で、刀身が変形したり増えたりして自在な斬撃と刺突を可能にしている。
大剣や斧のように刀身を大きくしたり、刃を生やしてギリ回避したヤツを斬り裂いたり、複数の刀身で敵の得物を折ったり串刺しにしたり、刀身の一部を飛ばしたり、変幻自在だぞ。
「ティオス先輩が一番になる前は二番目の強さだったな。今は三番目」
「そうなのね」
オレはヤマミとクックさん、ウイルと一緒に観戦席で眺めているぞ。
「これが天覧武術大会なのか!?」
「ああ。一年に一度行われる王国開催の武術大会。ウイルは初めてだったな」
「……邪険でヒネてたからな」
世界旅行前のウイルはヒネくれてて邪険な性格だったから、誘っても拒絶しまくってたな。今は不思議なくらい素直になってるけど。
ちなみに歓声が響く最中、ヤマミが作り出した音響制御空間で話し合っている。
「トーチャン優勝したんだっけ?」
「ああ。結婚してから一年目と二年目を連覇してたな。今は出場禁止されてっから、こうして一緒に観てるけどなー」
「なんで禁止されてんだよ?」
「しょうがねぇだろ。王国規定だし」
一年目の武術大会で初優勝し、二年目はハンデを課されてさえ優勝一直線。三年目以降から出場禁止に。
「三年目の大会に初出場して優勝したのに禁止されたー!」
クックさんは不満げに両拳を振り上げる。
「ナッセと違って遊ばないし、狂戦士レベルに容赦しないからでしょ?」
「むー!」
「いや、遊んだってワケじゃ……」
「アメヤで同じ事やってたでしょ! 相手に思う存分戦わせる戦い方!」
「うっ、そう言われると……」
ジト目でクックさんやオレに突っ込むヤマミ。彼女は一度も出場しなかったけど一応禁止。
勇者たちは元から出場禁止。
出てるのは腕に覚えがある冒険者や兵士と騎士。
「「「うおおおおおおおおおおおお!!!」」」
シュルアの振るう刻印創は『雷來剣』で、一見普通の黄金の剣にしか見えないが、電撃を帯びている。
斬れば感電させれるし、放電で遠距離攻撃も可能だし、割と強い。
それに対抗して戦えているファスタも相当なもの。
さっきまでガンガン斬り合っていたが、互い離れて様子見……。
「よかろう! ならば、私は本気を見せてしんぜよう!」
「むっ!」
ファスタを手強いと思ったのか、シュルアは黄金の剣を天にかざす。
「刻印創・拡陣ッ!!」
黄金の剣から迸る雷が上昇していくと、魔法陣が展開されて六つの黄金の太鼓で囲むように具現化させた。
さっきまでとは違い、荒れ狂う電撃が凄まじい威圧を伴っている。
「『六鼓輪雷來剣』!!」
「これ……が…………!?」
──そう、言うなれば『太陽の剣』を進化させた『太陽の剣 S・S』みてーなもんだ。
これから「拡陣!!」って叫ぼうかな?
「受けよ! 我が秘剣を!」
シュルアは六つある太鼓によって自在にあらゆる性質の電撃を操り、縦横無尽に走らせている!
大地を穿ち、木々を薙ぎ散らし、ファスタを執拗に追い詰めて感電させ、電撃を纏ったシュルア自身が超高速移動による一閃を放つ!!
「がっ……!」
上下に斬り裂かれたファスタはあえなく棺桶化。勝敗は決した。
素人なら一瞬何が起きたか分からないほどの瞬殺だぞ。
「やっぱ五輝騎士だけあって強すぎるなぞ」
「それを素手で倒したあなたはどうなのよ」
ジト目のヤマミに苦笑いするしかない。
「そんなに弱いのか?」
「いや、シュルアさんの威力値は一〇万八〇〇〇。ファスタの威力値は七万七六〇〇な」
「俺からしたら天上の世界レベルじゃねーか! よく勝てたな!?」
「今のナッセは三〇万ね。変身したら九〇万」
「インフレしすぎだろ!」
そういうウイルだってブーメラン刺さってるぞ。
マリシャス時代は六六兆六〇〇〇億で、宇宙全体を次元レベルで破壊してたしな。もう過去の話だから突っ込まないでおくけど。
闘技台にシュルアとファリアが魔法陣から出て互いに礼して去っていく。
そして呼び出しの放送と共に次の対戦者が歩いてくる。
なんとどう見てもネコとしか思えない三毛猫一匹と、犬耳と尻尾の御獣族が対峙するように近づいていく。
「驚いたんだが、二人とも十二光騎士なんだよな」
「ええっ!? 犬さんはともかく、あれ猫だろっ!」
ウイルが驚くのも無理もない。
「見ろ」
なんと四本足でテクテク歩いていた三毛猫が二足直立したのだ。
「た、立った!?」
「ああ、人間同然と動く動物型の御獣族だな。十二光騎士が一人“火烈獣”ミアちゃん。そして対戦相手は同じ十二光騎士の“水連”フフモウだぞ」
「王国騎士だったのか……?」
「オレも最初は驚いた。なんせ普通の猫を装ってパトロールしてたくらいだからな。同僚である“光鱗”ヘリュアレのペットとしても装っている」
ウイルはネコを指差して「戦えるのか?」と戸惑ったまま振り向いてくる。
試合開始、と放送がなされてモニターで映し出される。
仮想戦場でミアちゃんは大地を爆発させるほど駆け出して間合いを詰める。フフモウは「刻印創『穿波爪』!!」と両手から水圧の爪を生やす。
ミアちゃんは飛びかかる時に一瞬爪の軌跡が発生して、それをフフモウは水の爪で防ぐ。
ガッガガガッギギギッガガギギギギッガガギギ!!
手、肘、足など部位から爪を出して、軽やかな格闘戦で激しく火花を散らしていた。
ミアちゃんは四本足で駆けているので、瞬間移動のように周囲を動き回ってかく乱しつつ連続で斬り付けている。それでもフフモウは体躯と柔軟な動きで四方八方からの攻撃にも対処できていた。
体術オンリーの騎士で、かたやスピードタイプ、かたやパワータイプと攻防の応酬を繰り返す。
「人間の動きじゃねぇ!」
「普通じゃ追いきれねぇからな。ミアちゃんはスピードでかく乱して、パワータイプに渾身の一撃を出させないように戦っている」
互いの爪が交錯し合い続け、幾重と軌跡が踊る踊る踊る踊る!
オレは思った。
クエストん時は普通の猫のように捕まってくれたけど、いざ戦うとなったら苦戦は免れないだろうな。封印状態で威力値二万じゃ負けるかもしんねぇ。
もしかしたらワザとクエストとして出して、捕まえてくる冒険者を見極めているのかもしれない。
「ワヴォオオン!!」
フフモウが渾身の振り下ろしで地面に大きな亀裂を走らせ、岩盤がめくれ上がる!
その巻き上がる岩を足場にミアちゃんはジグザグ飛び移って、フフモウへ格闘戦を繰り広げていく!
「三毛猫ミアちゃんの威力値は三万七二〇〇。犬の御獣族フフモウは五万二〇〇〇」
「つ、つえーな!」
「フフモウは十二光騎士で四番目に強い。以前のティオス先輩とほぼ互角だ」
フフモウは『骸狼』と叫び、全身に白い刻印がズズズッと広がって骨格かと思わせる紋様になり、威圧を倍増させてきたぞ!
あれも『刻印』によるバフで、身体強化の効力がある。
っても複数発動するのって大変なんだよな。消耗激しいらしいから。
それに対抗してミアちゃんも「刻印創・拡陣」を発動してきて、真上で魔法陣を展開して巨大な爪を自身の周囲に具現化させて『猛襲火烈爪』と告げてきたぞ。
実は十二光騎士の中で拡陣できるのは猫を入れて三騎しかいないんだ。
「連刃・黒骸流翔!!!」
「火矛虎!!!」
フフモウが地面を滑る漆黒の爪の斬撃の束を飛ばし、ミアちゃんは巨大な灼熱の虎を顕現化して灼熱の巨大爪を振り下ろす!
双方の最大最強の技が激突! 凄まじい衝撃波の噴火で爆ぜた! ドン!
勝ったのはフフモウみてーだな。紙一重だったけど……。
次の対戦で出てきた選手に、オレはハッとした!
「トーチャン?」
白髪交じりのオジさんって感じの重厚な騎士。橙のマントがなびく。
漲る威圧は洗練されていて、空気が凍てつきそうだ。
コオオオオオオオ……!
「……五輝騎士最強にして総隊長! “轟沈の聖騎士”アーフォス!」
「なんか強そうだな」
オレは以前彼と交えた試合を思い返す。
結婚してから一年目の大会で苦戦させられた。勝ったものの二度と戦いたくねぇって思ったほどだぞ。
剣技はさほどではないが、怖いのは彼の能力にある。
「老いたとはいえ王国騎士で最強格! マジでつえーぞ!」
頬を汗が伝う。
それに対する対戦相手も同じ五輝騎士である“不動の重鎮騎士”ゴレアック。
体格は大きく筋肉隆々。牛のツノと尻尾が生えていて手足が毛むくじゃらの御獣族。重そうな鎧を纏って平然と歩く豪傑。一瞬ミノタウロスかと思うほどだ。
幾多の戦いを経験した歴戦が、牛のような強面に現れている。
「ウモオオッ!!」
破裂するように筋肉がボンと膨れ上がって巨人のように聳える。
オレの目には、異世界版のフクダリウスにも見えた。地球のアイツは人族の中でも最強クラスだった。それと同じくしてゴレアックも同じ雰囲気を感じさせる。
「アイツの方がすげー強そうだ!」
「パワーだけなら王国一だぞ。それでなお怪力任せじゃないのが最強たる所以だ。オレも実際苦戦した」
ウイルは唾を飲み込む。
次の総隊長は彼だともっぱらの噂。
一年目、二年目の大会では三大奥義を繰り出せねば勝てそうになかったぞ。見た目通りの脳筋だったなら楽に戦えたんだがなぁ。
あとがき雑談w
『拡陣』
これは『刻印創』に限らず、魔法陣を展開する時に拡大強化させる技術。
予め強化バージョンを組み込んで、時と場合に応じて自在に展開できるような仕様だ。
しかし拡陣すれば消耗は激しくなる。
主に切り札として控えるのがベストなのだ。
ヤマミ「でも拡陣できれば超強力だからね」
ナッセ「今んとこ『五輝騎士』全員は拡陣できるぞ」
キラリスト「ちなみに我が悪魔の教皇だった頃、ヤツら全員展開してきたぞ」
作者「余談だが『骸狼』はアクトが考案したパワーアップで、白い仮面をかぶる設定。もろオサレ漫画のアレなんで恥ずかしくなってボツにしたらしいのだ。それを変えて別キャラに推移させたw」
アクト「暴露止めろおおお!! 黒歴史ァァァァ!!」
作者「更に『仙獣モード』とかもあってだな……w」
アクト「ぎ……ぎはァ!!(吐血)」
念の為言うけどアクトは『骸狼』『仙獣モード』は使いませんw
次話『五輝騎士最強格同士の戦い! 白熱すっぞ!』




