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148話「灯台下暗し!? 星塔のカラクリ!?」

 星塔(スタワー)のとある居間。

 サラカートとエムネは強張(こわば)って、目の前のトビーに緊迫感を抱いていた。

 逆にトビーは嬉しそうにニヤついた笑みをこぼしている。


「こんな時に……なんの用なの?」

「そうよー! これから御獣(ミケモ)界へ訪問するんだからー!」


 塔の魔女である二人は“白面の疫病神”トビーに対して、あまり信用していない。

 フラリとあちこち寄って厄介事を撒き散らしていく迷惑な存在。

 そして嫌われるほどに快感を覚える道化師だからだ。


「おやおやおや~~? せっかくイイ事を見つけたんですが~?」

「そんな事は後に──」

「マロハーちゃんに会いたくないんですかぁ~??」


 塔の魔女は(すく)んで言葉を失う。

 トビーは彼女らの気にしている事柄で、どうしても耳を傾けざるを得ないようにできてご満悦だ。

 彼女らがマロ姉さんに会いたいと一日千秋の想いを抱き続けているのを知っている。

 会えるものなら(わら)にも(すが)るほどに飛びつきたいほどに……。


「嘘だったら……覚悟する事だよ……!」

「そうそう! 勘弁ならないんだからねー!」


 サラカートは両手でぶら下げ気味の扇を振り、ブオッと旋風を巻き起こす。


「え~! なになに? せっかく寝る間も惜しんであちこち世界を調べまくってたのに酷いですよぉ~~?」


 しくしく嘘泣きする仕草(しぐさ)でおどけてみせる。

 サラカートは凄まじい威圧を膨らまして星塔(スタワー)が震撼していく。突っ立っているだけなのに烈風が解き放たれて塔内部を突き抜けていく。

 それでさえトビーは「まぁまぁ」と両手を上下させて(なだ)める仕草をしている。


「嘘だったら八つ裂きでもなんでもしてくださいよ~! あ、煮ても焼いても食えぬかもしれませんがね~~?」

「根拠あるの……?」

「もちろんですよぉ~~? ボクだって、あなた方が愛しのマロハーちゃんと涙の再会を心の底から願ってるんですからね~~! 本気の本気でさぁ~!」


 厳しい視線のエムネ。

 トビーという男は、ハッタリだけでからかいはしない。のらりくらりフザけた事をやっているものの、核心を突いた言動をしてくる。

 重大な秘密を掴んだからこそ、わざわざ戻ってきた。


「灯台下暗しっていうかね~? 概念の存在は、目に見えないものとは限りませんからね~」

「じゃあさっさと証明してよー!」

「今すぐできるかい?」


 トビーはクルリと背中を見せて「もっちろん~!」と歩き出していく。

 サラカートとエムネは目配せし、頷く。


 塔の内部はとても広大で最上部から最下層まで吹き抜けになっている空間が存在する。壁に沿って螺旋階段があるが意味はない。サラカート、エムネ、トビーは浮遊して最下層にまで下っていく。

 不安を催すかのように、徐々に薄暗くなっていった。

 最下層は星の中枢にまで及び、どういう仕組みか橙に滲んだレンガ床がパラパラとひとりでにバラけて内部まで続く通路が見えてきた。


 すると奥の空間でドクンドクンと心臓のように赤い巨大な宝珠が胎動していた。

 あちこちから管が四方に伸びている。


「これが『星塔(スタワー)』の心臓なんですよね~!」

「そこにマロ姉さんがいるっていうの!?」


 睨むサラカート。疑心に駆られているエムネは眉を潜めたまま。

 トビーは意に介さず、手をかざすと宝珠の表面に光のラインが羅列する魔法文字や線を浮かび上がっていく。

 それは管を通り、囲んでいる円球の壁にも走っていった。

 十つの輝く円で囲む壮大な魔法陣……。


 サラカートとエムネは口を開けて驚きに満ちていく。


 なんと宝珠の表面にマロハーを思わせる輪郭で描かれていたぞ。

 横向きになっている顔、長い髪を描く無数の線、ドレスを思わせる迷路状のライン、それだけでマロハーの容姿が脳裏に再生される。


「……ここへ来た事はあるけど驚いたね」

「そんなんなかったわよー!? なんかしたのー!?」


 トビーは首を振る。


「言ったでしょ? 灯台下暗しってね~?」

「でも……こんな魔法陣は……ありえない!」

「なんか細工したのっ??」

「……あなた方の認識は間違ってないですからね。普通なら見れません」


 トビーはヤレヤレと首を振る。

 スッと落ち着いた目線を見せてきた。


「血縁者が近づけねば、潜在的な魔法陣は浮かび上がりませんからね。ホラ」


 なんと血が入っている試験管をかざしてきた!?


「ボク、ナッセ君と接触していてね~? 彼ってマロハーと血が繋がってるでしょう?」


 サラカートとエムネはハッと察した。

 自分たちは養子として家族に入っただけで、血の繋がりはない。

 夫であるパヤッチは星獣を鎮める為に自ら犠牲にしていなくなっている。息子であるナッセは死んで異世界転生していた。従って、どうしようとも見られるはずがない魔法陣なのだ。


「ナッちゃんが……!?」

「その血はナッちゃんのっ!!?」

「そうですよ~~! ひぇっひぇっひぇっ!」


 なんて事だ、と愕然してしまう。

 しかしエムネはキッと睨み据えて「会わせるってこの事?」とトビーをやや脅しを含む言い方をする。


「ノンノン! 本題はこれからサ」


 立てた人差し指を左右に揺らしてトビーは“この先のネタ”を示唆(しさ)する。

 思わず塔の魔女二人は食い入ってしまう。


()()()()()()()()()()()という事で、ちょっとくら仕掛けますね~」


 サラカートとエムネは息を呑む。

 トビーは懐から取り出した“妙な歯車”を宝珠に押し込み、ズブズブと沈んで歯車を象る魔法陣として組み込まれていく。

 すると、押し出されるようにマロハー型魔法陣の上部から小さな小人が抜け出てくる。


 デフォルメされているものの、銀髪のロングヘアー。穏やかな柔らかい顔。水色の縁ラインの白いポンチョっぽいが後ろが長くてマントになっている。体のラインに沿ったミニスカの半袖純白ローブ。露出している腕と足は美肌。水色の手袋と長靴。

 そして背中からは薄透明のリボンが二対の翼のようにたゆたう。


「「マロ姉さんっ!!?」」

《……え? あ、あなたたちっ!?》


 塔の魔女であるサラカートとエムネを目にして、マロハーは驚きに見開いていく。


「実はね『星塔(スタワー)』はマロハーちゃんを核に原動力として機能しているんですよね~! 定員は一名ですので、完全に入っていると死んだかのように思考も何もできない状態で、外部と疎通(そつう)する事は叶いません。ですが、他の概念的存在を部分的に入れれば~」

「その分だけ……はみ出した……!?」


 エムネの震える声に、トビーは「ご名答~~」とニッコリする。


「じゃあ、()()は一体ッ!??」


 歯車を象る魔法陣。ズズズ……邪悪な威圧が溢れる。

 塔の魔女はガクッと力を失い、床に膝をついてしまう。力が入らない。危機感が募る。


《ふはははははっ!! ついに手に入れたぞ!! 厄介な『星塔(スタワー)』システムを────!》


 なんとトビーの背後に、土偶(どぐう)のような概念的存在が姿を現し、巨大な威圧を溢れさせてきた。

 サラカートとエムネは絶句するしかない。

 トビーは「すみませんねぇ~!」と上半身を傾けて手を振りながら笑う。


「と、トビーッ!!」

「どういう事か……説明……してくれるッ!」


 ガクガク震えたまま立てぬ二人。


「圧倒的な力を誇る魔人や魔女になる為には代償がいるんですよね~。サラちゃんとエムちゃんは『星塔(スタワー)』の管理を誓約として魔女になってるワケですからね~、一部を邪悪な存在に乗っ取られると力を一時的に失ってしまうワケです~」

「そんな事聞いていないからーッ!」

「聞きたいのは……そんなんじゃないよ……! ()()()はッ!?」


虚無の魔神エンプフィネス・マシンデウスの一部を組み込んだって事です。そのおかげで一部だけマロハーちゃん出てきちゃって念願の再会~~~~ん!」


 騙された、とサラカートとエムネは悔しい顔で歯軋りし、トビーを睨みつける。

 憎々しくて堪らず、そして何もできない事に憤りを募らす。


《素晴らしい! 素晴らしいぞ!! そして我が念願の地獄への造り変えが可能となる!!》


 トビーの背後の巨大な虚像で浮かぶ魔神(マシン)デウスは両腕を振り上げていく。

 不穏を募らす軋み音が響いてくる。

 ズズン、と『星塔(スタワー)』が起動されていく。


「これまで災厄を吸い込む『星塔(スタワー)』は、たった今から()に希望と可能性を吸い寄せる事になりま~す!」

「「な、なんですってッ!!?」」

《そんな事したら……ッ!!》


 マロハーは焦りつつも、両手を魔法陣に向ける。


「そう、当たり前のよ~に存在している魔法、スキル、クラスという可能性を『星塔(スタワー)』が消していくんですよね~! そして~上位生命体であるナッセ君も消えちゃいます~! あら? ひょっとしてヤバい?」


 塔の魔女二人は途方もない絶望にズシリと胸を押し潰されていく。


 これまで災厄を吸収して浄化してきたのと同じように、希望と可能性を吸収して消失させていくのだ。そして残るのは人族と通常の動物のみの虚無な世界……。


「「マロ姉さんッ!!」」

《くぅ……! 心配しないでッ! 私が、必ず止めるッ!》


 必死に力を注ぐマロハー。

 相変わらず直向きな姿勢が懐かしく思うと同時に、嫌な予感がよぎる。


《はみ出す事で解放されたマロハーが自発的に、消失を食い止める為に莫大な魔法力を注いでいるが、所詮は命の導火線でしかない》

「なん……ですって……!?」

「それじゃ……!」

《いずれ力尽きれば、そのマロハーは部分的ではあるが完全消失する。その時こそ、希望の終わりだ!》


 せっかく再会できたというのに、今度は完全消失という絶望の道へ……。

 進行を食い止めざるを得ない以上、マロハーは自ら消える為にエネルギーを全て使い尽くしていくしかない。

 サラカートは「マロ姉さあああああああん!!!」と泣き叫んでいく。

 エムネも涙をこぼし、トビーをキッと睨む!


「許さない!! 許さ……ないッ!!」

「いいですねぇ~~! ああ~憎まれるってスパイス快感んん~~!」


 突き刺さるような憎悪にトビーは身を震わせながら愉悦に笑う。


《トビーよ! よくやった!! これで世界は我が手に入ったッ!! ふはははははははッ!!》


 トビーは細目で振り向き、“してやったり”の顔でほくそ笑む。

あとがき雑談w


トビー「ひぇっひぇっひぇ! さてさておさらいしましょうかね~~」


星塔(スタワー)

 このシステムはいかなる方法によって破壊できず、除外されない。

 このシステムは定員一名を概念化して組み込む限り永遠に機能する。ただし完全に組み込まれている者は何もできない状態になる。もちろんだが自力で脱出は不可能。

 そして、組み込まれている者の魔法陣を浮かび上がらせるには血縁関係者が近づかなければならない。

 いかなる場合においても組み込まれている者と別の生命体を入れ替える事はできない。(同じ概念的存在はその限りではない)


 ①マロハーが最初願った通りに『吸収した大災厄を時間をかけて浄化していく』という機能を持つ。

 ②『塔の魔女』が存在する場合に以下の機能を発動できる。●吸収した大災厄を魔境化させて、それを攻略する事で速攻浄化する。攻略した者に秘宝を授ける。全ての魔境を攻略した場合、『お願い玉でなんでも願いを叶える』機能を追加する。



トビー「親切なボクは同じ概念的存在魔神(マシン)デウスの一部を組み込む事で、一部だけマロハーちゃんを押し出せたワケですね~! あったまいい~~!」

デウス《ワシの一部さえ組み込んでいれば思い通りに操れるのだ。クククッ》



 次話『早くも大ピンチ! そうと知らぬナッセになんとか伝えねばッ!!』

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