143話「おかえりとただいま! ライトミア王国へ!」
水のブルークア王国へ来て四日目。
家の前で、オレたちはシレヌ爺さんとアメヤと向かい合っていた。
「またいつでも遊びに来てね!」
「うむ」
アメヤは笑い、シレヌ爺さんは感慨深そうに頷いてくる。
「ああ。休み取ったら、また遊びに来るぞー」
オレはバイバーイと手を振る。
そして晴々とした気持ちでヤマミ、ウイル、クックさんと一緒に帰るべき道へ歩んでいった。
アメヤは手を振りながら「またねー!」と別れを惜しむ。
ナッセたち家族を見送りながら、アメヤはご満悦。
「今度は私の父さんと母さんとも一緒にやりたいわね……」
シレヌ爺さんはそんなアメヤを見てホッコリしていた。
ふと思ったのか「アメヤや」と呼ぶ。振り返ってくる彼女は素っ頓狂。
「……対戦の時に“アレ”を使わなくても良かったのかい?」
「『刻印創』の『拡陣』ね」
「うむ」
アメヤは媒介となる剣を抜き、手の甲に『刻印』が灯る。
「ナッセもできるらしいからね。『太陽の剣 S・S』ってヤツ。また三大奥義で『拡陣』する『銀河の剣』もあるから、どの道……ね」
「そうかい」
「私もこのままではいれられないわね!」
負けてられない、とアメヤの闘争心に火が付いたようだ。
オレたちは名残惜しむように水のブルークア王国の町風景を眺めながら、駅へ向かう。
今度は魔導列車に乗り込んで『アリアマ港町』へ出発する事にしたのだ。
前は馬車で来てたけど、今回の魔導列車は速い速い。二時間くれぇで着いたぞ。
来る時は五~六時間だったのにな。
アリアマ港町の空港から飛行船で再び『緑のフォレスト王国』の空港へたどり着き、そこで再び寝台魔導列車に乗り込んで『光のライトミア王国』へ向かって揺られる。
来た時とは逆で、知っている景色が後ろへ流れていくのは名残惜しさを感じさせた。
「もう旅行は終わりなんだなぁ……」
「最後ってワケじゃないわ。時間を作ったら、また行きましょ」
「だなぞ」
ヤマミは微笑んでくれる。
夕日になっていって橙に染まり、紅紫へ沈んで真っ暗闇に……。
疲れたウイルとクックさんは寝台部屋でぐーすか就寝。オレはヤマミと一緒に窓から夜空を眺めていた。星々が煌めいていて、天の川が横切っているのが見える。
「星獣か……」
「大丈夫よ。クックさんと一緒に秘術『タイムマジック・インテグレーション』すればいいじゃない」
未来へ飛ぶ事で、それまでの過去分だけ倍加。もしくは未来を前借りして倍加。
例え十二日分であっても、オレたちの力なら三〇〇〇万以上の威力値を発揮できるぞ。
「また『大祓祭』になっても、魔境なんて今の私達なら……」
「ああ。威力値一〇〇万ぐらいのボスなら、オレ一人だけでも対処できらぁ」
「もし無理だとしても秘術一日分で倍だから、大丈夫ね!」
こっちには、あのマリシャスをすら沈めた秘術がある!
「それは無理だよ……」
気づけばエムネが向かい側の席に座していた!?
サラカートまで「そうそう、初回特典ってヤツだねー」とエムネの側に現れていた!?
いつの間に!?
しかも、周囲が陽炎のように歪んで止まっている!?
「……どういう事?」
ヤマミは怪訝に目を細める。
「んふーふっ! あなたたちみたいな若手の中に同じような秘術を思いつくのいるからねー!」
相変わらずサラカートは生意気そうな態度。
小馬鹿にしたような感じは昔から変わっていない。
「そう……、長い歴史の間に秘術が使われた事が何回かあったよ……」
「でもね、考えなしに使って後悔するの多いから、最初使う秘術だけは許される概念になってるのー!」
思わず「えぇ……」と驚くしかない。
あの秘術はその危険性から一発こっきりの概念になってるみてーだ。
「つまり、マリシャスの時点で……?」
「うん! 最初で最後だからねー! んふーふっ!」
両足をブラブラさせて、あっけらかんに笑うサラカート。
エムネは不服といった様子でこちらをじっと見る。
「……私たちを置いて逝っちゃダメだからね。ナッセ」
「エム姉さん……?」
サラカートも真剣な顔に切り替わり、席を立ってオレの両肩を掴んで顔を近づけてくる。思わず息を飲む。
「逝っちゃダメー! ナッちゃんまでいなくなったら耐えられないからー!」
「そういう事だよ……」
パヤッチとマロハーが別れ、どこへとも知れぬ所へ行ってしまった。
そしてその息子であるオレまで失うと我慢ならないようだ。
二人は念を押すように見据えてきている。もう塔の魔女って認識ではない。オレたちは元々家族……。お姉さんズとも言える存在。
「そうだな。せっかく帰ってきたもんな」
「そーそー!」
「うふっ」
エムネも席を立ち、サラカートと一緒に「せーの!」と意気込む。そして泣き叫ぶかのように、オレの胸へ飛び込んで抱きついてきたぞ!
「ナッちゃん!! おかえりなさあぁぁーいっ!!!」
オレもそんな二人の背中に腕を回す。
「……ただいま。サラ姉さん。エム姉さん」
「「うわあああああああああああああああああん!!!」」
これまでの孤独を埋めるかのように、オレの胸元で泣き叫び続けた……。
一度死んだ身。もう二度と会えないと諦めざるを得なかった可愛い弟。それが今、帰ってきたのだ。
オレも手紙を読む事で思い出せた。
こうして再び繋がった家族の絆……。奇跡としかいいようがない。
「はぁ~~! ナッちゃんも大きくなったねぇ~!」
「そうだね……。男の広い胸元……いいね……」
「んふーふっ!」
しばしして泣き病んだ二人は懐かしむようにオレの温もりを堪能している。
ずっと姉さんズを抱いているからか、ヤマミはムッとしているものの、何も言わず見守ってくれていた。
さすがにずっとそうしていたら「離れてよ!」と不満爆発したぞ。
姉さん二人とヤマミの睨み合いが嫁姑関係に思えてきて、苦笑い。
血は繋がってないけど、姉さんたちとは幼い頃からずっと家族でいた仲である。
「ナッちゃんとは深い深ぁーい絆で結ばれてるからねー!」
胸を張って得意げなサラカート。
「最初会った時はボコボコにしてくれたけどな……」
「あーあー! それはもう忘れてよー!」
サラ姉さんは赤面して腕をブンブン振り上げて黒歴史をかき消そうとした。
オレもエム姉さんもクスクスと笑う。
ふてくされるサラ姉さん。相変わらずだなぁって思う。昔からこうだし。
「疎外感するんだけど……」
「あ、いや……。でもオレたち夫婦だし」
「そうね」
珍しく甘えるようにオレの腕に絡んで、顔を肩にゴロンと乗せてきた。
今度はヤマミのターンである。
「あーっ! ずっるーい!!」
「むぅ……」
そんなこんなで和気藹々していたぞ。
「また来るからねー」
ニッコリと手を振る姉さんたちは闇に溶け消えるように姿を消し、静寂な車内に戻っていた。
向こう側の席は無人……。
まるで夢でも見てたかのようだった。ヤマミと顔を見合わせる。
「……それはそうと、あの秘術使えなくなっちまったな」
「そうね」
「たはは……」
肩を落とすしかない。
前からそういう決まりだったようで、最初以外は使えないように概念ルールを敷かれている。
とは言え、クックさんの悲しそうな顔は忘れられない。
できる事なら使いたくなかったと思ってたから、これはこれでいいのかもしれない……。
流れていく景色で山脈の向こうから朝日が顔を出して、暖かい閃光が溢れてくる。
ヤマミと身を寄り添いながら余韻に浸っていた。
…………五日は寝台列車で過ごし、その最終日で流れてゆく自然の緑と雲海、そして壮大な山脈を窓からノンビリ眺めていた。
オレ、ヤマミ、クックさん、ウイル、そして帰ってきたヒカリ。
山脈が開けて、ついに『光のライトミア王国』の都市が見えてきて感無量が胸にいっぱい満たす。
ようやく着いた駅から出ると、凝った肩を解すように背伸び。
見慣れた道を通って、我が家へと足が向かっていく。
ライトミアのとある地区で、静寂を保っている一軒の家……。
二階建てで中世ヨーロッパ風の家。白い壁に木の柱が拵えていて、周囲の住宅とほぼ変わらない。
それこそが五年慣れ親しんだ我がマイホーム!
「五年前リエーラ婆さんからもらったっけな」
「ええ……」
「あったしも一緒っだー!」
クックさんとのクエストでゲットした事が昨日の事のように思い出せる。
そこからオレたちは異世界での生活が始まったのだ。
そしてこれからも…………!
「ただいま!!」
白い雲がたゆたう青空の下、オレたちは我が家へ帰ったのだった。
あとがき雑談w
サラカート「ひっさしぶりに姉さん言われたー!」
エムネ「うふっ、確かにね……」
サラカート「三人いなくなって、悲しくない日なんてなかったんだからー!」
エムネ「でもまさか、386年後にナッセが帰ってくるなんて思わなかったよね……」
サラカート「そーそー、他人の空似だと思ってたよー!」
エムネ「まさか徹底的にボコるとは思わなかったけどね……。止めたのに……」
サラカート「あ──あ──、そーゆー話やめやめ──!」
エムネ「まぁ『鍵祈手』とか『妖精王』とかオプション引っさげて復活するとは思わないよね……」
サラカート「うん! ホントだよー!」
次話『次は新章開幕! まさかの勇者セロス闇堕ち!?』




