140話「朽ち果てぬ呪われし家!」
窓から朝日が差し込んでくる。
その眩しさにオレは身を起こす。横になっているヤマミは「ん……」と目を覚ます。
「ああ。そっか……」
昨日、この水のブルークア王国へ来てたんだっけな。
そんで初めてなのに、馴染みがあるような感覚に誘われてこの家に来た。そして叔母にあたるチヨさんの子孫であるシレヌ爺さんから写真と手紙を見せられて記憶が蘇った。
今の今まで思い出さなかったのが不思議なくらい、全く覚えていなかったのにな。
そんで、ここで泊まったんだっけな……。
パジャマから衣服に着替えて下の階へ降りると、シレヌ爺さんが朝飯を用意して待っていた。
すでにウイルとクックさんはテーブルについていた。
オレたちも席に着くと、ヒカリも現れて大所帯で朝飯を頂いた。
その後、シレヌ爺さんは得意の手品でウイルとクックさんを驚かせて楽しませていた。
「ああ……、そういやチヨ叔母さんも手品上手かったっけな」
「そうなの?」
「気まぐれか、オレに手品を披露してた事があったよ。コインを消したり、完封したコップにモノを入れてたり、袖の中から鳥を出したり、カードの柄を変えてたり、面白かった……」
「そう」
「うん。その時は本当に楽しそうな顔をしていた。普段もあれくらいだったらいいのにな」
「そうね」
当時あった事が鮮明に浮かんできた。
しかし、この国は何百年も経っていてオレが知っている町風景とはだいぶ変わってしまってる。
なのに違和感がする。
「もう三〇〇年もこの家を守ってきたって言うけど、どうも不自然なんだ」
「気づいた?」
ヤマミへ頷く。
「傲慢な王様がいる時だって、この家はちゃんと守られていた。管理人がシレヌ爺さんとはいえ……」
そう、取り壊されて別のに建てられる可能性もあった。
今の水の国はもう変わってしまってる。だが、かなり古い建物はこの家だけだ。
かなり年代物の建造物。なのに朽ち果てず壊れず、そのまま。
「まるで、この家だけ昔のまま取り残されたかのように……」
「まだ数年しか経ってない感じだわ」
「オレがここへ戻ってきた時の為に、ずっとずーっとそのままにしていたとは言え、一体誰が……?」
するとシレヌ爺さんが「おや気づいたかね?」と微笑む。
「呪いみたいなもんかな。この家だけは当時と変わらないように保存が利いた。いや……、変えられないように呪縛されているが正しいかの?」
「呪縛……?」
爺さんは頷く。
確かにそうとしか思えねぇ……。この家の内部もガッシリしている。老朽化などしてねぇように見える。
「誰か別の管理人がいる……?」
「うむ」
ヤマミの問いにシレヌ爺さんは頷く。
「それは一体誰なんだ?」
「声だけしか知らないよ。戒めとして子孫に守らせるように、定期的に声だけでお告げをよこしてくれる。だから私も誰も姿を見た事がない」
「声だけ…………?」
なんか、神様のお告げのように声だけで子孫に使命を守らせていたようだ。それも数百年続けていたらしい。
キョロキョロ見渡すも、誰かいる気配はない。
不気味だな、と思いつつジュースを飲む。
塔の魔女が先に浮かんできたが、たぶん違うかな?
「それと、マロハーさんとパヤッチさんを蘇らすつもりなら、これを持っていくといい」
例の箱を渡してくる。
中には写真と手紙が三つ。オレはその内一つを見ている。
「この手紙二つは……?」
「うむ」
そう、オレの両親宛ての手紙。
折っている手紙のフチにマロハーとパヤッチの文字が書かれている。
これはチヨ叔母さんが書き残した二人への手紙。今は見ない。本人に見せるつもり。
「ありがとうだぞ。大事に預かっとく」
「そうしてやってくれ……」
シレヌ爺さんは丁重にお辞儀してくる。
しばらくしたらガチャリとドアが開かれた。青い髪の青年……。
「おじいさん! ただいま」
オレは思わず立ち上がり「父さん!?」と声を張り上げた。
しかし、よく見れば青い髪でポニーテールの女騎士。
白銀の鎧を纏い、下に青い衣服。父さんに似て引き締まった顔。
「……あなた誰?」
「ああ、アメヤ。例の“妖精の白騎士”ナッセさんだよ」
不審そうにこちらを見ていたが、爺さんの言葉で「ああ! 英雄さまね!」と納得してくれた。
ペコリと丁重にお辞儀してくる。
オレも「わりぃ、父さんに似てたから……」と頭を下げた。
彼女は「気にしないで」と笑う。
みんなでテーブルを囲むようにアメヤも一緒に席に着く。
「へぇ、あなたがそうなのね。お告げの通りだわ」
歳はオレより若い。地球で言いや大学生くれーか。しかし本当に父さんに似すぎ。まるで女体化するとこうなるのかってくらい……。
凛とした性格もそっくりだ。
「アメヤさん。もし差し支えがなければ、両親の事を聞いてもいいか?」
「お父さんは現役の冒険者。お母さんは城で宮廷魔道士よ。私も城で『蒼の六柱騎士』を勤めているわ」
なんと王城の直属騎士として勤めていた!? 驚き!
「お父さんはフラリと冒険に行ってるの。騎士試験に何度も落ちたからって、放浪して何をしてんだか……」
アメヤは呆れるようにため息。
放浪する冒険者の父はフユミ・ミナーナ。厳格な魔道士の母はタナッチ・ミナーナ。
「……家系を考えるなら、オレはアメヤさんの叔父かなぁ……?」
「普通に同年代でいいじゃないの? ナッセ?」
ちょっと軽い父さんと話してるような感覚。
「あ、私の事はアメヤでいいから。さんは要らない」
「……あ、ああ」
こっちがタイムスリップしたようなもんだしなぁ。
「でね、直属騎士に就任したのは二年前かしらね。腐敗政権を排除し、いろいろ改革を行ってたようだから」
「もう変わってんだなー」
「ええ。五年前は大変だったもの。今なら父も試験受かりそうなのにね」
つい苦笑い。
なんか五年前は理不尽な試験で、王様にとって都合の良い人材を集める為に不正が横行してたらしい。
ほとんど身内の人間を引き入れて権力を悪用してたみたい。
でも、王様自身が我が身可愛さにライトミア王国へ逃亡しようとしている事がバレて、内輪揉めして自ら瓦解した。今は現女王により裁かれて監獄送り。罪状が軽いものは国外追放。
そのように悪い膿は出し切って、今の王政権は真っ当になっている。
「あなたが帰ってきたなら、この家は……」
「いやいいよ。マイホームとっくにあるしな」
「そう」
本当はオレが帰ってきたら家を返して、爺さんと一緒にどこか別で暮らそうと決めてたらしい。
でも、もうライトミア王国でマイホーム持ってしまっている。
今はアメヤたちのマイホームとして暮らしてくれればいいかな、と。
「オレたち親戚なんだし」
「そうね。じゃあ、これからもよろしくお願いするわ」
「ああ。時々遊びに来るよ」
和やかにアメヤと握手する。
シレヌ爺さんもニッコリ。
ブルークア王城にて、特訓場としての仮想対戦システムがある所。
多くの兵士や騎士たちに見守られながら、オレとアメヤは仮想戦場で向き合っていた。
仮想戦場は巨大な橋の上! この国の橋と酷似している!
「えーっと、なんでこうなったぞ?」
「悪いわね。ちょっと腕試ししてみたかったから」
途方に暮れるオレに、アメヤは軽々と剣をクルクル回し微笑む。
あとがき雑談w
ナッセ「なぁ、ヒカリとヤミザキさんって386年前の人間だろ?」
ヒカリ「うん」
ヤマミ「それって、江戸時代真っ只中じゃない?」
ヒカリ「あ、うん! 1630年(徳川家光の時代)に異世界転移してたねー」
ナッセ「どう見ても江戸時代の人間には見えない……」
ヤマミ「現代っ子にしか見えないわ」
ヒカリ「異世界で馴染んでいったからねー。あそこって現代っぽいのに時代変化が少ないんだもの」
だからヒカリは着物ではなく、オフショルダーのワンピース着てたのだ!
って事は、当時ヤミザキもヒカリも着物着てて刀差してたのか!?
次話『アメヤの実力!! 血縁だけあって、やはり似たタイプ!?』




