139話「驚愕の事実! もう異世界転生してた!?」
落ち着いてからオレは再び思い出してきた記憶を語り始めた。
母さんが『星塔』を遺していなくなった後、この二年間でサラ姉さんとエム姉さんはパヤッチと口論する事が増えてきた。
「あんたのせいじゃないのー!」
「……うん。理解しかねるよ」
「何が分かる! マロハーはこの子を守りたかったんだ!」
しかしサラ姉さんはオレをガバッと抱き寄せる。
「ナッちゃんのせいにしないでよ!!」
「蜂の巣をつつく真似をするから……、水の王国にも、どの国にも、もう居場所がないんだよ……。ナッちゃんも、こんな辛そうで……」
「くっ!」
……なんかバラバラになりそうで怖かった。
その時、爆ぜた閃光で周りが真っ白になった!
ドゴオオオォォォンッ!!
轟音を立てて、大地を大きく揺るがし、明々と巨大な爆発球が向こうの大地を穿ち、キノコ雲が立ち上っていく。
そして遅れて烈風が吹き荒れて、木々や岩などが流されていった。
大陸が欠けるほどの破壊力だ。
「グオオオオオオオオオオ!!」
なんと山のように巨大な化け物が両目をギラギラしながら吠えていた。
腕を振るうだけで嵐が巻き起こり、踏み鳴らせば噴火が昇り、口からの光線で大陸を消し飛ばす!
当時のオレは物凄く恐ろしい化け物としか見えなかった。
どこかの国か、大勢の兵が飛びかかっているのが見えた。
総攻撃が繰り出されて爆発の連鎖が巻き起こるが、効いていない。逆に暴れ回って大勢の命を散らしていく。
山脈が吹き飛び、大地が割れ、湖が爆ぜる。
星を守る為の免疫システム『星獣』……。
概念であるマリシャスはこの異世界に直接手が出せなくなったからと、星獣を起こしてムチャクチャにしてやろうと考えたようだ。
この時、父さんが何を考えているのか分からなかったが、その背中は寂しく見えた。
もはや四面楚歌。それでも母から託されたオレを守る為に……。
ドズオオオオオッ!!
再びの爆発球が明々と山脈を吹き飛ばし、凄まじい衝撃波が木々や岩盤を吹き飛ばしていく。大勢の悲鳴が劈く。
吹き荒れてくる烈風と破片。そしてばらまかれた光弾の嵐。パヤッチはオレたちを庇って弾き続けていた。
「くっ……!」
父さんは傷だらけになりながら、必死に極太光線の軌道を逸らしたり、光弾を弾いたり、必死にオレたちを守ってくれていた。
血塗れで息切れ。疲労困憊。フラッとよろめく。
ただの流れ弾だっていうのに、それだけで一国の総攻撃以上だ。
「グオオオオオオオオ!!」
凄まじい咆哮で烈風が吹き荒れ、大地を揺るがす。
口から光球を生み出し、それが数多の光線へ分裂して屈折しながら広範囲を無差別破壊しまくっていく。
雲を焼き、大地を穿り返し、山脈を粉々に、木々を引き裂き、大勢の兵を消し飛ばし、幾千もの爆発球が轟く。もはや天変地異レベルだ。
当然父さんにも数百もの光線が殺到。
「させないッ!!」
気力を振り絞り、満身創痍をおして聖剣の槍を振るってことごとく弾いて、周囲で爆発の嵐が巻き起こる。しかしいくつか光線が掠り、血飛沫が舞う。
その時、父さんは左目に血が流れて視覚を奪われた。
死角から一筋の光線が飛んでくるのが見え、それが父さんへ!
脳裏に母がよぎって、思わず飛び出す!
ドッ!
父さんを押しのけ、代わりにオレを貫通! 吹き出る鮮血!
「ナッセェェェ──ッ!!」
父さんが叫び、オレを抱きかかえる。サラ姉さんとエム姉さんが「ナッちゃ──ん!!」と駆け寄ってくる。
回復魔法の光がオレの胸に宛てがわれる。しかし喉から血がこみ上げて咳き込む。
「と……う……さ…………」
震える手を父さんに向けると、ガシッと握ってくれる。
いつも厳しい父さんの顔は泣きそうな顔になっていて、涙が溢れていた。
「死ぬなッ! 死なないでくれ────ッ!!」
「ナッちゃん眠らないでー!! いやっ! いやあーっ!!」
「うう……! ダメ……逝かないで……っ!!」
少しずつ意識が遠のいていく。力が抜けていく。サラ姉さんとエム姉さんの叫び声が聞こえづらくなっていく。
悲しむ父さんたちに囲まれて、オレは静かに闇へ沈んだ……。
「……覚えてんのはここまでだ。オレはそこで死んだみてぇだ」
窓の外は真っ暗。
シレヌ爺さんを含め、ヤマミ、クックさん、ヒカリ、ウイルは静かにオレの話を聞いていた。
もう晩飯は済ませて、空っぽの皿がテーブルに並んでいる。
「その時だろうな、オレが異世界転生して地球へ生まれ変わったのは……」
「じゃ、なんで三〇〇年以上も未来に生まれたのー?」
浮いているヒカリを見て、首を振る。
「気づいたら何もかも忘れてて、地獄のような閉鎖的な並行世界で夢もない暮らしをしていた。まぁトラックにひかれ死んで、運命の鍵であるヒカリと出会った。後は分かってんだろ」
「そうだね……」
ウイルは青ざめて震えながら「俺の……せいだ……」と罪悪に苛まされている。
「マリシャスは嫌がらせで時代をズラして魔法もスキルもない夢のないネガ濃度の高い並行世界へ異世界転生するようにしてたんだ。二度と会えないように……。あの当時はマロハーにしてやられたから、こんなタチの悪い事をっ!」
「ウイル……」
「俺のせいなんだよ! こんな悲劇!! 恨まれたって構わねぇ!」
シレヌ爺さんは「この子は一体……?」と驚いているが、ヤマミが「マリシャスの生まれ変わり。今は家族」と簡潔に説明した。
「ウイル。気にすんな」
「俺は気にするよ! トーチャンが優しすぎるのを知ってる! だからこそ余計心が痛むんだよっ!」
涙を零しながら食ってかかる。罪悪で痛くてたまらないんだろうな。
「そのおかげでヒカリやヤマミに出会えたんだ。悪い事ばかりじゃねぇ」
「でもッ……!!」
ギュッとウイルを抱きしめる。バタバタ暴れるが次第に大人しくなる。そしてむせび泣き始めた。
シレヌ爺さんは「何があったのか分かりかねますが、いい家族ですな」としみじみ。
脳裏に焼き付いた記憶……。
両親であるマロハーとパヤッチ。サラ姉さんとエム姉さん。十二歳まで一緒に家族同然と生きてきた。引き裂かれたのはすげぇ辛いけど、おかげで今がある。
「……父さんは分からないけど、母さんが死んでねぇのが救いだ」
そしてなんとなく、父さんも生きているような気がする。
星獣とその後どうなったか知らねぇし、もう三〇〇年以上も経っている。とっくに死んでておかしくねぇ……。
でも魔境クリア後に現れた父さんは死んでいるようには思えなかった。
「ナッセさん、家族と一緒に今日はここでゆっくり休んでいきなさい」
「いいのか?」
シレヌ爺さんは首を振る。
「なに、ここは元々あなた方の家。私たちは昔から代々管理してきただけです。それに血の繋がりを感じるように思えます」
「すまねぇ」
「いやいや……」
シレヌ爺さんはホッとしたような顔をしている。もう役目を終えたからだろうか?
「ウイル、寝るか?」
「……うん」
泣きはらして赤くなっているウイルを連れて、二階の階段を登っていった。
そして寝室へ連れ込むと淡い明かりを点けて、ウイルをベッドに寝かし、ふとんを胴体にかぶせる。その上からウイルの体を撫でる。
「ごめん……」
「いいって。もう仕返しは充分した。五年前にな」
「……うん」
涙が流れた跡の頬を優しく拭いて、しばしウイルの側にいた。
「オレは父さんと母さんを必ず復活させる。お前にとってはお祖父さんお祖母さんにあたる」
「こんな俺を家族でいいのか……」
「ああ」
「……ごめん」
「いいって」
ウイルは眠たそうに瞬く。
宥めるように優しく撫で続けていると、寝落ちていった……。
「おやすみ」
音を立てないように立ち上がると、明りを消してドアを閉める。バタン!
一階へ降りると「寝たよ」とヤマミに一言。「そう」と頷いてくる。
クックさんはヤマミに寄りかかって眠たそうだ。
「ナッセも大変だったね……」
「ああ。本当にな」
今はもう鮮明に浮かぶし、こんな悲しくて辛い気持ちだって湧いてくる。
なぜ今の今まで思い出せなかったのかが不思議なくれぇだ……。
「手紙には『強い記憶の魔法』が込められていたわ。途方もなく巨大な魔力で……」
「……それだけチヨさんも後悔してたんだろうな」
バラバラに引き裂かれてしまった家族。
それを後から知って、強い悔恨に苦しんだと思う。オレが死んだのをサラ姉さんとエム姉さんから罵倒された時に知ったと思うけど、異世界転生していると信じて祈り続けていたのだろうか?
その魔力で手紙に蓄積させていったんかな?
テーブルの手紙を手に取る。
あの時は母さんに意地悪ばっかする嫌な叔母さんって思っていた。
けど、失って初めて強い罪悪と後悔に苦しんだのがわかる。文面からそう感じ取れる。泣きながら書いてたのかもしれねぇ。
「ナッセ……」
「うん、大丈夫だよ。ヤマミ」
心配させまいと、笑いかけてみせる。シレヌ爺さんは「いい妻ですな」と微笑む。
オレも「ああ。大事な妻だ」と自信満々と答える。
「遠い遠い親戚だろうが、なんだか孫が結婚したかのような錯覚してしまうわい」
ほっほっほ、と笑ってくる。
夜が更けると、シレヌ爺さんは一階の別の部屋へ行って静かになってしまう。
ヒカリはあくびをすると、オレの胸の花へギュンッと引っ込んでしまった。ニュッと上半身だけ出てきて「おやすみねー」と手を振ってくる。オレも「あ、ああ。おやすみ」と返すと、引っ込んでしまう。
中で寝れるんかよ、と苦笑い。
クックさんがソファーで横になって眠っている。ヤマミは収納本から取り出した毛布をかけた。
そしてオレと二人きり……。
「そっか。オレはとっくに地球へ異世界転生してたんだな……」
「ええ。驚いたわ」
「実は元々異世界人だったとか、今でも信じられねぇかな」
はは、と苦笑い。
ヤマミはオレの髪をサラッとかきあげる。
「……銀髪になっていたのって、妖精王の影響かと思ってたけど異世界人に戻っていたって事かもね」
「母さんと同じ銀髪だったからかー」
思えば黒髪だらけの並行世界って、普通銀髪はありえねぇもんな……。
だからそれに影響されて黒くなっていたのかもしれない。
並行世界を渡るたびに銀髪になっていたのって、銀髪があり得るような世界になっていたからか……?
「私も妖精王」
「ん……」
「でも私の黒髪は全然変化ない。身体の成長速度が遅延していくのは感じている。あなたは両方だったのよ」
「妖精王に馴染む肉体変化と、従来の異世界人として戻った、の二つか」
「うん」
ヤマミはオレの手に触れ、ギュッと包んでくる。
「不謹慎だけど、おかげであなたと出会えた……」
「ああ」
上半身寄り添い合って、手を重ね合って、しばし温もりに浸って微睡んでいく。
「……おやすみしようか」
「ん……」
寄り添ったまま手を繋いで、二階のへ向かう。
かつて父さんと母さんが使っていた寝室へ入り、ベッドライトを点けて、二つ並ぶベッドへ寝転がる。
しばし穏やかにしっとりと見つめ合う。
「おやすみ」「ええ、おやすみ」
ベッドライトを消し、瞼を閉じた……。
あとがき雑談w
塔の魔女ことサラカートとエムネは、なんで最初にそっくりなナッセと出会っても生意気にケンカ売ったりしてたのでしょーか?
サラカート「うっ!」
エムネ「……長い年月、ナッセに似た人なんて何人も出ていたよ……。それと同じだと……思ってたよ」
サラカート「それ! そうそうそれ!!」
エムネ「でも実は時代をズラされて異世界転生してたナッセを、サラが思いっきりボコボコに……」
サラカート「あーあー! そーゆー話やめてー!! 忘れてー!!」
エムネ「うふっw」
次話『ナッセの親戚が登場!? 新キャラ注目!』




