130話「氷のアイスバーレ王国! 勇者の後継者!?」
オレたちは『氷のアイスバーレ王国』付近の『ミノウ港町』へ着いた。
事前に知らせてあった為、港町は帝国の飛行船にも寛容に受け入れてくれたみたい。
飛行船から降りると、ビュワッと冷えた風が歓迎。
「ひゃあ! 冷えるなー!」
「寒っ!!」
「地球で言えばかなり北側だからね。赤道付近から一気に移動したら寒くて当然よ」
そういうヤマミは既に露出度を減らした衣服だ。
ワンピースの上に短めのポンチョのような外衣を重ねている。全体的に紫と黒の色調。
クックさんはオレ同様パーカーっぽいの着ているが黄色だ。
「ナッセさま。私はこれで失礼しますが、帰りは本当に必要ないので?」
「サンキュー! また別の国へ行くからいいぞー」
「……名残惜しいですが、どうかお気をつけて」
使者キビットは丁重に頭を下げる。
帝国飛行船が離陸して飛び去っていくのを、オレたちは手を振って見送った。
「今度はどんな地方かな?」
「白いの多い大陸だっぞー!」
空港から出れば、確かに山脈は白く覆われているのが見えたぞ。
今は夏季なので緑の草原が広がっている。山に沿って生えている木々は尖ったような感じで針葉樹っていう。
町を散策していると、誰かが立ちはだかっている。
「待っていたぞ」
なんと初老で水色のツーブロック髪に鼻ヒゲ、冷静そうな目。暖かい毛皮を身に包み、ふっくらとした毛布のような薄茶のマントを羽織った男がいた。
仲間である中年の僧侶、槍士、魔道士が一緒だ。
「確か、あん時の!」
「いかにも、ワシは“氷河の国勇士”ラルゴだ」
仲間は“烈火の熱々僧”ラティオ、“針地獄の護兵”エルグランド、“氷雪の女豹”セレナと紹介された。
なかなか年季が入っていて、これまで会った勇者とは雰囲気が違う。
仲間も同様に歴戦の風格が窺える。
「なんでオレたちを??」
「我々の国にも帝国からの報告は来ていた。皇帝を省みさせ戦争を止めたとな。そしてワシの方もお主に用事がある」
「用事……?」
「まずは王国まで行こうか」
ラルゴはフッと笑ってくる。
広大に広がる草原に一本と獣道が遠くまで続き、オレたちは勇者一行と一緒に馬車に乗って王国へ向かう。
馬の代わりに白い豹が力強く馬車を引っ張って走っている。
セレナが創り出した氷魔法によるゴーレムの一種。その卓越した才能と技術により、本物以上にしなやかで力強いゴーレムを錬成できるに至る。
「すっげぇなー! 速いぞー!」
「ふふふ」
そう嬉しそうなセレナ。
サバサバした感じの中年の女魔法使い。肌の手入れが良い為か、ラルゴたちの中でも年下に見える。
体格が太めの大女。フチがフカフカの毛皮の黒いコート。小さなツリ目。赤い唇。紫髪のショートボブ。
度々起こるエンカウント現象。獄界オンラインより現れしモンスター。
凶悪な顔の白熊、銀狼十二匹、マンドラゴラを模した小人数十匹。
『スノーベア』(獣族)
威力値:13500
五メートルにも及ぶ白毛のクマ。凄まじい膂力に加え、吹雪も吐く。かなり素早いので馬車では逃げ切れない。できれば出会いたくないモンスター。中級下位種。
『シルバーウルフ』(獣族)
威力値:8100
銀に輝くオオカミ。集団で襲いかかる。陽動もするので危険。おまけに回復魔法も使うので厄介。下級上位種。
『コロコン』(植物族)
威力値:2500
ダイコンに顔が付いたようなモンスター。よくマンドラゴラと勘違いされやすい。普段は地中に埋まって養分を吸っている。水魔法や回復魔法を使う。下級中位種。
突然、地中から無数の岩の刺が生え出してモンスターどもを串刺し。
「寝てていいぞ。まだ時間はあるからな」
“針地獄の護兵”エルグランド。
長身の男。逆だった短めの黒髪には白髪が混じっている。気難しい顔。背中には手製の槍。軽装の鎧に上着のコートを被せた衣装。
火、氷、地、風など各種属性魔法のトゲを生み出せる槍兵。
中・近距離が得意なアタッカーだ。
生き残ってた銀狼が馬車の中へ不意に飛び込んできた!?
思わず「うわあっ!」と驚く。
しかし素早くゴツイ拳が銀狼を打ち砕き、更に爆ぜた火炎が跡形もなく消し飛ばす。
「銀狼は陽動してくる。そして知能も高い。これでやられる冒険者は少なくない」
“烈火の熱々僧”ラティオ。
中年の僧侶。厳格そうな顔つきでベリショの赤髪。モミアゲから伸びて鼻と顎を包むヒゲが特徴的。厚手のコートには僧侶の紋章が入っている。
ご覧の通り、クックさん同様に接近戦を得意とする。
火属性の魔法が得意で、それを混ぜた格闘が得意らしいな。
「さすがね……。エルグランドさんは中距離を、ラティオさんは近距離を担当として振り分けている。その気ならどっちかだけでもカバーできるのだけれども」
「お嬢ちゃん流石だな。そこまで分かるとは」
「慌ててる様子全然なかったからね」
驚いた。二人は信頼し合っているからこそ、言葉も交わさず通じ合ってるのか。
「最初こそ、何してんだーとケンカもあったがな」
「フッ! まぁ人間欠点もやむを得ない。大事なのは認め合って補い合う事だな」
「そう悟るまで随分時間がかかったがな」
二人は大らかに笑う。さすが歴戦のパーティーだ。
またエンカウントして白いスライムが三十匹。多いけど弱そう。
『スノースライム』(スライム族)
威力値:2200
表面に雪を付着してて雪の塊にしか見えない。本来は透明度の高い粘着性の体。氷魔法と睡眠魔法を使う。よく群れで現れる。下級中位種。
これまたあっさり全滅させた。
「ワシもカッとなってパーティー解散までなった事もあったがな」
「とてもそう思えねーけどな……」
「はっはっは、そう見えるのなら光栄だわい」
するとセレナが「ラルゴね、全然頭が堅くて譲らないの! そんで馬鹿なの!」と幼馴染ならではの感情をあらわにしてきた。
さすがのラルゴも引きつる。初めて見た。
「……頑固で馬鹿なのは否定せんが、セレナ言いすぎだぞ」
「ホントの事言っただけです! ふーんだ!」
ラルゴがそう言い出してビックリさせられる。
一時は色々確執があって、解散危機まで陥った事もあったそう。
オレからすれば完璧な勇者パーティーにしか見えないのに、過去にそんな事があったとは!
「当然、お主らも夫婦として完璧に見えるが、それまで乗り越えてきた賜物だろう?」
「ああ。あった」
「うん……」
ああ、そっか。ラルゴから見たら、オレたちは完璧な夫婦に見えてるのか。
初対面だと最初っからそうだったと錯覚しがちだもんな。
和む話をしていると、あっという間に『氷のアイスバーレ王国』へ着いた。
帝国のように堅強で立派な建物が並ぶ都市。白壁に青い屋根が特徴的。これでも城下町だ。
「旅行してて思うけど、国ごとに違うなぞ……」
「そうね」
あちこち水路が引かれてあり、ラルゴの説明だと雪を落とす為だそうだ。
夏だからこれだけど、冬になれば積雪は高くなるらしい。
そのせいか、どの建物も二階にもう一つの出入り口がある。
「やけに酒場が目立つなぞ」
「うむ。寒くなるとたまらんから、温める意味でも習慣的に飲む事が多い」
「飲みすぎてもいかんからな」
「おう。ラティオが言うと説得力あるな。確かにその通りだ」
「む……!」
どうやらラティオは無類の酒好きで、そのくせ酒癖が悪い。
飲み過ぎると凶暴になり手に負えなくなる。そのせいで酒場をブッ壊す事もあったらしいな。その為、どこでも出禁っぽい。
「だから『察知』してまで見張ってんのー」
セレナがジロリと見やり、エルグランドもウンウン頷く。ラティオは気まずそうに目を逸らす。
真面目で厳格そうなのに意外だ……。
「コイツ暴れだしたら妖精王で思いっきりブチのめしていいからね!」
「セレナぁ……!」
オレにそんな事言うセレナに、ラティオもうろたえる。
思わず苦笑い。
なんか親近感わくなぁ……。アクトやリョーコを思い出す。
そういや、どこにいんのかな?
なぜか仮想対戦センターに連れてかれた。
宮殿みたいな大きなセンターで、大勢の冒険者が賑わっていた。
オレたちは人外認定されているから参加できない。なんのつもりだろ?
「旅行しているところ悪いが、会ってもらいたい人がいる」
歩きながらラルゴにそう言われ、誰か気になった。
「おう待たせたな。シオン」
少し手を挙げラルゴが声をかけた先を見ると、銀髪の強気そうな青年がいた。
背中に剣を背負い腕を組んで待っていた。
「彼は“氷河の勇者”シオン。一年前に認定された新しい勇者だ」
「新しい勇者……?」
「うむ。神殿にて、武勇の女神アサペンドラさまが『勇者の加護』を授けた青年。二十代ながらも威力値が一〇万を超える逸材。ワシの跡継ぎになる」
「跡継ぎって……?」
ラルゴは神妙に頷く。
あとがき雑談w
アサペンドラ「やっほーい! 武勇の女神さんでーす! 新しい勇者を輩出しましたー!」
ベィエール「この方、相変わらず軽いです……」
人界の人間に『勇者の加護』を与える事で『勇者』を生み出せる。
実を言うと、その気になれば人類全員を勇者にする事もできる。
しかし、それをしないのにはワケがあるのだ。
アサペンドラ「あんまり数が多いと、私自身が増幅装置として力を行使するの大変だからねー」
そう『勇者の魂波動』を発動できるのは、彼女のおかげだったのだ!
だからこそ、魔王やドラゴンとも引けを取らない力を発揮できるぞ!
ベィエール「初代勇者だった頃は、先代の武勇の女神様から加護を受けてました」
アサペンドラ「そーそー。ちなみに先代さまは今創世界で隠居してるよー」
次話『新キャラ登場!? また何かイベントが!?』




