124話「観光巡り! 豪華な宝石王国!」
戦闘空間の荒野で、巨大なワームが三匹蠢いていた。
『ブラウンワーム』(水族)
威力値:22500
巨大なミミズ。茶色で長い身、先端には円状の口に牙がビッシリ生えている。普段は地中を潜って暮らしている。地上に出て、面白半分に人間を追い回して食う事もある。上級下位種。
「ワイルド・ギガントプレスッ!!!」
馬車に乗ったままスゴエヴォラがハンマーを振り下ろし、それを巨大にした残像を降らしてワームを叩き潰し、地響きと共に赤土の飛沫を噴き上げていく!
オレたちは火の国の馬車で、カアビ港町とは逆方向に位置する『リナリア港町』へ向かっていた。
妙な事に盗賊団と出くわさない。気配すらない。
行く時は結構な頻度だったけど、一回も現れないのは不思議だ。
「出てきたのは『獄界オンライン』のモンスターだけだしなぁ……」
スゴエは馬を操縦しながら振り返る。
「全員ログインしたんじゃナイ?」
「少しずつなら分かるけど、一気にログインは見た事ないわ」
ヤマミの言う通り、悪人なら少しずつカルマホーンが伸びていって、完全にモンスター化して『獄界オンライン』へ強制ログインするまで時間に猶予がある。
従って心に悪を染めたら即ログインってのはない。
だから、それが理由で一斉蒸発は有り得ないようだ……。
「前の襲撃でパーって逃げたんじゃないー?」
「ゼルゲチィス王国襲撃の事か? 逆方向なのに?」
「うーむむ!?」
クックさんは可愛らしく大仰に首を傾げる。ぐりーん。
その答えは大陸の縁の『リナリア港町』へ着いて、判明したぞ。
白い家にカラフルな屋根。一見、普通の町っぽいが、この赤土の大陸では異色な町。
魔法に長けた店が多く、魔道士タイプの人々が行き交いしている。
縁側の空港には多くの飛行船がイヤでも目に入った。しかも戦艦っぽいのもある。
「あれは軍用の飛行船なんだケド」
「……結構、兵士多いなと思ったが」
スゴエに案内役してもらってたが、あちこちで監視するかのように茶色の鎧を着た兵士が歩き回っている。
「土のダイガ王国の兵士か?」
「あの紋章はむしろ中層地殻の『大地のタイガーラン帝国』なんだケド」
国の兵士には、必ず鎧に国の紋章が刻まれている。
敵味方の区別、正規兵士の証、……そして領地の主張。そういう意味だ。
「こんにちは。兵士さん」
「む……! 何用か?」
「この辺りの地域で盗賊団が見かけなくなりましたね」
通りすがりの兵士に聞いてみたぞ。
「ん、ああ。確かに危険な盗賊団が跋扈していたが、我々で掃討作戦を行ったから大丈夫だ」
「そうですか。ありがとうございます」
「いやいや」
ふう、そういうワケか……。
とりあえずスゴエはホテルまで案内すると、馬車で火の国へ帰っていったぞ。
オレたちは手を振って見送った。バイバーイ!
その頃はもう夕方。町を散策して食堂で味を堪能して、ぐっすり就寝。
翌朝、『リナリア空港』で飛行船へ乗り込んだぞ。
「向かうは『土のダイガ王国』だぞ──!!」
「土のダイガ王国だっぞ────!!」
雲海が見渡せる甲板の上で、クックさんと一緒に青空へ向かって叫んだぞ。
「まず経由となる『宝石王国ララピュレ』と『塔の都市バルガリン』を通ってからよ」
呆れたヤマミが説明。
飛行船が立ち寄る二つの国。本当はダイレクトで行ける便がないワケではないが、彼女がなぜか観光を勧めてきたのだ。
三時間くらいすると、目当ての『宝石王国ララピュレ』が視界に入ったぞ。
色鮮やかな宝石が散りばめられた王国。
立派な建物が芸術のように魅せてくる。遠くからでも色々な彫刻が目立つ。
「行きましょ! さぁ! 早く!!」
妙にヤマミが張り切っているので、オレとウイルは苦笑い。
……本当は行きたかったんだなぁ。
本当は一時間くらい待てば飛び立つのだが、今は降りて観光目的で宝石王国を楽しむ事にした。
どの建物も古くから建てられたらしく、壮大な彫刻による装飾が目立ち、散りばめられた宝石が輝いている。
「うわぉ……。こりゃあ世界遺産になるんじゃないか!」
「一万年以上も前から現存しているからね。定期的な修復もあって、経年劣化を感じさせないの」
中央広場にある丸い池の大きな噴水塔はガラスのように透明で、五層に分かれて水が順々に流れている。
向こうでは凱旋門と似た建造物も見える。
ヤマミはあちこちを魔導カメラで激写しまくっているぞ。
特にオレが気になったのは、水ある所に金魚っぽい美しい魚がたくさん泳いでいる事か。
丸い池と噴水塔はもちろん、水路や他の水槽など至る所で遊泳している。
アートアクアリウムというヤツで、まるで動く宝石のようにも魅せられた。どれも綺麗な魚が多くて舌を巻くほど。
金魚と思えるものや熱帯魚としか思えないのも混合している。
「……まさか異世界でもアートアクアリウムを見れるとは思わなかったぞ」
「そうなのか?」
「地球でも、品種改良などで多彩な金魚が作り出されてて、こんな風に飾る展とかがあった。ここでは常時展示してるみたいだがな」
「へー」
ウイルと一緒にまじまじと眺めていた。
水槽の中を泳ぐ数多の金魚。宝石や彫刻、壁画も合わさって更に芸術度が上がっている。
ここほどアートアクアリウムを活かせる場所はないだろう……。
「今度はこっち!」
アクセサリーを売っているショップが多く、ヤマミはあれよこれよと足を運んでいく。
大半は高額なのだが、手頃の価格で効力がいいアクセサリーを買って、ヤマミがるんるんと嬉しそうにダンスまでする始末。
苦笑いしていたが、ふと険しい顔で見やる。
「ここでも帝国の兵士さんがあちこちいるな」
「ここも帝国の領地かよ? 土のダイガ王国が近いのに?」
「……ああ。オレもそれが引っかかっていた」
「次、あの建物を見に行きましょー!」
ヤマミが手を振って呼んでいるので、慌てて向かっていった。
いずれも国宝級の建物が多く、内部も壁画や彫刻などで荘厳とした雰囲気を感じさせた。
精霊や神々を象った像も神々しく聳えている。
実際に存在する上位生命体をそのまま像に製作したのかもしれない。つい合掌して祈ってしまう。
「あそこにクッキーさまも、塔の魔女もいるっぞー!」
クックさんの声で行ってみると、なんと見知った師匠や二人の魔女の像が飾られていた。
こうして眺めていると仏像みたいに神々しく見えてくる。
実際は師匠なんて庶民的な性格だし、二人の魔女に至っては生意気なメスガキっぽいしなぁ。
「ははは……」
「アリエルさんはないなー!!」
「あ、ホントだ!」
漆黒の魔女アリエルだけはどこにもないな。
奥の方で飾られている『武勇の女神アサペンドラ』ってのは、勇者たちの神様なのかな?
幻獣界のマシュさまの像を見て、つい笑ってしまった。
だって、綺麗な女性として擬人化されていたぞ。実際はでっかい犬なんだけどな。
「きゃはははは! 天使みたーいー!」
「マシュさま、すまねぇ……」
合掌して祈ってから立ち去った。……後に像の目がキラーン。
そしてその夜は『エスメラルダ・ホテル』と言う、エメラルドを散りばめられた美しい宿屋に泊まった。
明かりのクリスタルがあちこちあって、電灯みたいな感じだ。
外の街灯も同じクリスタル。
そんな神秘的な風景にヤマミもうっとり惚けるほど。
しかも部屋の壁には窓のようにアクアリウムがあり、眺めてても飽きない。
クックさんは相変わらずベッドをトランポリン代わりに跳ねているぞ。
大浴場は宝石が散りばめられた壮大な風呂場。
ウイルと一緒にゆったり浸かって、湯上りに果樹のジュースをゴクゴク。
一家でぐっすり一晩を寝て過ごし、その翌朝────!
「今日もここで観光を続けましょ! また回りたいのがあるから!」
妙にヤマミがタダをこねてきて、オレたちは「えー……」と肩を落とした。
第一、昨日の内に全部回ってたしなぁ。
気に入った所を何度も行ったり来たりして、逆に引いてたぐらいだ。
仕方ないので引っ張って飛行船へ乗り込んだぞ。
「ああ────!! 私の宝石王国が────!」
次の降着地は『塔の都市バルガリン』……。
世界一高い塔とも言われている。
天を衝くかのように、大きく太く聳える白い塔が目白押し。そのふもとは大地に穴が空いている感じで、地下まで吹き抜けになっていて、階層で並んでいるのが見えた。
周囲を小さな塔が囲んでいる感じ。
「はぁ……、ここは『星塔』に対抗意識を燃やして作ったと言われているわ」
落ち込み気味なヤマミが説明してくれた。
よほど宝石王国が気に入ってたんだな。ため息何度もしてるし。
そしてチラッと向こうで霞んで見える『星塔』を見やる。
「前から思ってたけど、あの『星塔』はどこに行っても変わんねぇな」
「それはそう。虹と同じように近づこうと思っても近づけない。本来は災厄を吸収して浄化するシステム。誰も寄り付かないような事象にしてるの」
「虹と同じかぁ……」
確かに小さい頃不思議に思ったものだ。
虹は近づけども近づけども、全く距離が縮まらない。どうやったら触れるのか考えてたくらいだ。
飛行船の中で待っていると、ゆっくり離陸し始める。
大きな塔が徐々に遠のいていくのを、窓から眺めながら、ふと何階あるんだろうなと想像してしまう。
「観光はしなくていいのかぞ?」
「宝石王国が目当てだったからね……」
ヤマミはジト目でつーん、としている。
「機嫌直してくれよ~!」
その後、六時間くらいの空旅を経て、オレたちは『土のダイガ王国』へ着いた。
あとがき雑談w
宝石王国には多くの上位生命体の像が祀られている。
実際のマシュさまは巨大な犬なのに、像は荘厳とした女神になっていた。
マシュ「解せません……!」
アリエル「像として出てるだけでもマシよぉ……」
次話『険悪な関係!? 帝国と王国の軋轢!』




